リズリン



※5周年衣装ネタ続き

Knightsのみんなが前を歩き、その後ろを司くんにエスコートされながらホテルの廊下を歩く。向かうのはホテル内のパーティー会場。大きな扉は自由に出入りできるように開いており、入る前から中にはたくさんの人の姿が見えていて、ガヤガヤと話し声も外まで漏れている。


パーティー会場に入る直前、前を歩いていたみんなが一旦足を止めて、あたしたちに視線を送った。司くんは足を止めることなく、彼らを抜かして、一緒にパーティー会場に足を踏み込んだ。




大きな会場は華やかに飾られたお花やたくさんの料理が並べられ、みんな立食スタイルでドリンクや食べ物を食べながら話していた。今回のパーティーは所属事務所ごとに決められたカラーのスーツを着ているため、一目でどこの所属かがわかるようになっている。と、言っても、だいたい何処に所属したのか知ってる顔ぶればかりなのだが。




中に入って、耳に届くのは遠巻きに囁かれる「Knightsだ」「水城優希もいる」などという声。まあ、気にするほどでもないのだけれど。適当なスペースに立ち止まって、司くんたちは料理を取ってくると言って、一旦それぞれこの場を離れた。

あたしはといえば、適当に近くを通ったウェイターさんからノンアルのカクテルを一つもらってグラスに口をつける。みんなが戻ってくるのを待っていれば、ふと後ろから「優希ちゃん」と名前を呼ばれる。


「やっほ〜優希ちゃん、久しぶり」
「ん、薫くん…!久しぶりだね」


そこにいたのはレンガ色のスーツを纏った薫くんがヒラヒラと手を振って立っていた。薫くんと言えば、みんなが夢ノ咲に在学中の時に泉くんや凛月くん経由で何度か顔を合わせた記憶がある。


「優希ちゃん、すごい綺麗になっててびっくりしたよ〜!優希ちゃんの騎士たちはお姫様置いてどこ行ったの?」
「みんなは、料理取ってくるって言ってたよ。一旦自由行動って感じかな」
「へえ〜、こんな綺麗な格好した優希ちゃん一人に残して?悪い虫がついちゃうよ」
「ふふっ、薫くんみたいな…?」
「俺はそういうのじゃないって」


たくさん喋ったことがあるわけではないけれど、薫くんの持ち前のキャラクターのおかげか、とても話しやすい。薫くんは「はい、これ美味しいから食べてみてよ」と言いつつ持っていた料理の乗った皿を一つ、あたしに手渡してくれた。その皿には、小さく一口サイズにまとめられた色とりどりのオードブルが並んでいる。


「ありがとう…!すごくオシャレで美味しそう」
「優希ちゃんに合うの選んできたからね」
「そう言って、薫くんはナンパかのう」
「うん、勝手なこと言わないでほしいなあ、零くん」


気づけば薫くんの横に、もう一人同じUNDEADの零くんがいた。零くんったら、相変わらず掴み所のない口調だし、薫くんはそんな零くんをジト目で見つめるから、二人の仲の良さが伝わってくる。


「零くん、こんにちは」
「ご無沙汰じゃのう、優希よ」
「いつも、凛月くんがいるとお話しできないからね」


薫くんより零くんとの方が、話す回数は多いというのに、いつも凛月くんがゆっくり話すことを許してくれないため、正直今回は珍しいとも言える機会だ。


「お兄ちゃんは悲しいぞ…凛月とも優希ともゆっくりお話ししたいんじゃがのう」
「ははっ、まあ凛月くんのあれは照れ隠しってことで」
「それ、本人が聞いたら多分零くんがまた怒られるよ」


クスクス笑いながら、こうやって話を聞いてるとやっぱり兄弟っていいなって思う。燐とひーくんやひなたくんとゆうたくんだったり、それぞれ兄弟でいろいろあるようだけれど、それでもなんだかんだで仲が良くて羨ましいなって感じる。

ぼんやりと考え事をしていたら、ふと顎に手を添えて目線を上げさせられる。やったのは零くんで、あたしよりも全然上にある綺麗な赤い目と視線が交差する。


「しかし、本当に綺麗になったな」


凛月くんと同じ目の色なのに、細く切れ長い零くんの目。含みを持たせたような言葉に、あたしは一瞬どう反応すべきか、言葉に詰まる。そんなあたしを見てなのか、零くんは「くくくっ」と笑い出す。


「これ以上、ちょっかいを出そうものなら、毒針に刺されそうじゃのう」
「え〜騎士たちに怒られるんじゃなくて?」
「違うぞい、薫くん。毒針じゃ」


薫くんは零くんの言葉の意味がイマイチ理解できずに、不思議そうな表情を浮かべている。けど、零くんはこれ以上深くはその事について何も言葉にせず、そろそろ騎士たちも戻って来るだろうし、お邪魔したのう。と言って、薫くんたちとその場を離れた。


あたしは二人に手を振って、薫くんからもらった料理を口にした。


毒針って…、まさかね。

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