心の痛みと君の叫び
※救ったのは君の言葉の続き
「女性アイドル食いモノにしてるっつーウワサはマジだったんだなァ…。ハッ、だから腐ってやがるンだよ、この業界はよォ…」
何故ここに燐がいるのか、燐に見られた、燐が怒っている、燐が…、いろんなことが頭の中で考えが混乱する。だけど、今はそんなことより…っ、
気づけば、さっきまで目の前にいたプロデューサーの姿が視界から消えていて、燐の後ろ姿の向こう側に立っている。
「なんなんだ、お前は…。関係ないだろ」
「ハッ、どうだっていいだろォ、クソ野郎」
「ふんっ、お前もアレか、この女と寝たのか?」
あたしは一瞬何を言われたのか理解できなかった。このプロデューサーは、何と述べた…?咀嚼できずにいるあたしに対して、プロデューサーは、鼻で笑いながら言葉を続ける。
「おかしいだろう。今時、ソロでアイドル活動をしてるにも関わらず、活動の場を上手く広げてるなんてな。Knightsの連中とも仲が良いようだが、アイツらとも寝たんだろう?それで次は他の事務所の男か」
「ちっ、ちがっ…!」
プロデューサーの放つ言葉が信じられず、否定をしようとも上手く言葉が紡げない。燐にも同じ言葉が入ると考えたら、また震え出す体。ちがうちがう、ちがうのに、思ってる言葉がこんなにもあるのに、喉から、声から、口から出なくて、グシャグシャになる頭の中で混乱をしていたら、突然響く大きな衝撃音にあたしは息が止まる。
「もっぺん言ってみろ…」
レッスン室に響く燐の声。その声を聞いて音が壁を素手で殴った音だと気づき、あたしからもやっと燐の表情が見える。普段からは見ることのない、あたしは初めて見る冷たい表情を浮かべていた。
「テメェ…もっさん、言ってみろや…オイ」
「ちょっ、燐音くん…!」
「離せ、ニキッ!コイツ殴らねェと気が済まねェッ!!!!」
気づけばニキくんまで現れて、今にも飛びかかりそうな燐を必死で止めていた。例のプロデューサーは燐の勢いに怖気づきながらも、口は止めない。
「泣けばこんな風に助けてもらえると思ってるのかッ、水城!お前被害者ぶるなよッ、」
「テッメェまじぶっ殺すッッッ!!!!」
「燐音くんっ!!!!ダメっす!!!!ダメっすからっ!!!」
なんでこうなってしまったんだろう、どうしてこんなことになって…。あたしが何をしたのだろうか。ポロポロと瞳から何かが溢れるけれど、あたしはそれを止める術を知らない。
我を忘れたように暴れる燐の姿が、見ていて胸が痛くて苦しくなる。
ダメだよ、ねえ…。
「…ッり、ん…だめ…」
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