FesとChurro



NEW DIMENSION主催の音楽フェス。Knights、Switch、Double Faceが登場する1日限りの音楽祭。野外ステージであり、パフォーマンスステージ以外にも屋台などがあり、まるで夏フェスのような催しである。

ちなみにあたしはと言うと、フェスのスタッフ用のキャップを被り、フェスオリジナルグッズであるTシャツに、ショーパン、サークルサングラスをかけて、完全にフェス仕様のスタイルだったりする。

何故そんな格好をしているのか?それはその音楽フェスにシークレットで登場する予定だからだ。まあ、ニューディ主催の時点で箱推しの察しのいいファンの人たちからは「いないわけがない」「何処かにいそう」などとSNSに書き込まれていたりするから、笑うしかない。


出番までしばらく時間もあるため、ちゃっかり屋台で食べ物を買ってしまったりして。今はちょうど関係者スペースに戻ってきたところだ。




先ほどまで、ニューディの若手アイドルたちがステージを盛り上げていて、楽しそうな声と音に自然と気持ちが高ぶってしまう。何処かで座って休もう、と思って辺りを見渡せば、よく見知った顔を見つけたので、自然と足を運んでいた。


「お疲れさま〜、隣良いかな?」
「優希はん、わしの横でええんやったら」
「ふふっ、こはくんの横だから是非お邪魔しちゃうね」


休憩スペースのパイプ椅子に座っていたのは、Double Faceとして参加していたこはくん。一仕事を終えた後なのか、フェスグッズであるマフラータオルを首から下げて汗を拭いながら、飲み物を飲んでいた。「ママさんは?」って聞いてみれば、どうやらあたしと入れ違いで屋台など見に行ってしまったらしい。お祭り大好きだから、それもそうかと納得してしまう。

買ってきたものをテーブルに並べていれば、量が量だけあって「ぎょうさん買おってきたんやな」と、こはくんはやや驚きの表情を浮かべていた。


「一緒に誰かと食べたいな、って思って」


まあ、確かに場の空気に当てられて買いすぎたかも、とは思うがまあ良いでしょう。こんな時だし、体も動かすし食べれる時にしっかり食べなければ、逆にこの催しを乗り切れない。食べすぎても良くないのだけれど。

はい、と買っておいた食べ物を差し出せば、こはくんはしげしげとそれを受け取りながら見つめる。


「なんや、こないけったいなもんは」
「それはチュロスってお菓子に入るのかな、デザートだよ〜揚げパンとかドーナツの種類が近いかも?お砂糖がまぶしてあって、サクサクしてて美味しいよ」


縦にそびえ立つそれを不思議そうな表情で見つめていた。どうやらチュロスは初めてだったらしい。手渡せば、揚げたてってこともあり、温かさがあったことにも驚いていた。いまいち、イメージがつかないようで、半信半疑な表情のままチュロスにパクリと噛み付けば、サクッと揚げたてのいい音が聞こえてくる。ポロポロと溢れて口の端に砂糖がつくも、気にせず咀嚼をし続けている様子を見ていれば味の感想は一目瞭然だった。


「サクサクしよってん、これは美味いなぁ!」
「ふふっ、気に入ってもらえたみたいで良かった」


キラキラとした目でチュロスを食べるその姿は、年相応な表情で普段からよく見る気の張った雰囲気もないことに安心する。今回は所属とはいえ、普段から活動しているユニットではない活動でニューディの大型イベント。勝手の違いもあるだろうから、内心気になっていたのだが、大丈夫そうだ。
口元についた砂糖に太陽の光が当たって、キラキラ光る。頬張るこはくんの姿があまりにも可愛いくて、つい笑みが溢れる。


「口元、ついてるよ」
「んっ、おおきにっ」


指でそっと触れれば、ポロッと取れた。こういうところは、ひーくんみたいで可愛いなって思うが、口にするのはやめておこう。

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