イメージチェンジ



買っていたレモンの缶チューハイを片手にテレビを観ていた。座っているのはソファー、に座る燐の足の間にすっぽりと収まるように抱き抱えられていて、もはや定位置となっているこの姿勢。お腹に手を回されて、肩に顎を乗せてるため、耳元に感じる燐の吐息。少しくすぐったさを感じながらも、慣れれば心地よさになるものだ。


下ろした髪に、スリスリと擦り寄る仕草は、ひーくんを思い出させて、やっぱり兄弟だなあ…と思う。言ったら、多分燐はなんとも言えない表情を浮かべそうだから、口にはしないけれど、自然と笑みが溢れてくる。お腹に回された手をそっと撫でていれば、もぞもぞと手が動き出して、逆にあたしの手を掴む。



「テレビ観てたンじゃねェの…?構ってちゃんなワケ?」
「テレビは観てるよ〜観てるけど、燐にも構われたいなーって」


むしろ、燐はテレビ観てなかったのかなって思ってしまった。耳元で囁く燐の声が、吐息とはまた別のくすぐったさがあって、身を捩りたくなる。気恥ずかしさもあるけれど、誤魔化すようにチラリと横にある燐に目線を向ければ、バチっと至近距離で燐の目と目が合った。


「はァ〜〜〜」


燐は、ぐぅと喉を鳴らして、肩口に顔を埋め出す。面食らったような少し顔が赤かったように見えたのは、多分気のせいではないだろう。燐は普段ひょうひょうとしてるのに、たまにここで?って思うタイミングで居た堪れなくなる反応を示すから、正直不思議で仕方ない。

こうなった燐はとりあえず好きにさせておくのが1番なので、あたしはまた缶チューハイに口をつけて一口ゴクリと喉を通す。新しく出たこのチューハイ、呑みやすくて良いなぁ、なんて思いながら、缶のラベルを眺めていたら、突然首筋が風通し良くなる。


「何これ」


何とは、と思いながら、チラリと向ける範囲で後ろを見れば、燐があたしの後ろの髪の毛をかき上げていた。燐が何を指して言ってるのか、最初はわからなかったのだが、後ろの首周りに向けられた目線を見て、そういえば…と思い出す。


「キレイでしょ〜?」
「切ったんだなァ、とは思ってたけど、何染めたワケ?」
「インナーカラー、流行ってるんだよ」



元々、結わける長さがあったわけだから、多少切っても気づかれないと思っていたけれど、燐は気づいていたみたいで。それにも驚いたが、燐が言ってるのは、切った髪の色の変化。今回は全体的に同じ色にしたわけではない、所謂インナーカラーを入れてみたのだ。


「ふーん、そんで赤色にしたんだ…?」
「今回の衣装とか赤と黒の組み合わせだからね」


髪の毛をかき上げたままの燐の反応が、あまりはっきりしたものではないから、自分の中で不安が過る。


「変…?」
「いや…、優希がこうやって赤色入れてンの、そそるなあって思ってよォ」


小さく息を吐いて、髪にそっと口付ける。燐は自分では気づいてないと思うけど、その姿が魅力的で色っぽくて、カアっと顔に熱が集中するのがわかった。


「ホントに衣装とかに合わせたワケ?」
「う…そじゃな…いけど、赤…好きだから…」
「なんでか、言ってみ…?」


燐はきっとわかってる、わかっていて聞いてきてる。じっと至近距離で見つめられて、気づけば頬に手も添えられていて、完全に目線を離せないようにされていた。


「燐…の色だか…、んっ」



視線を逸らすことができず、観念するしかないと腹を括って言葉を紡げば、言い切る前に燐によって口を塞がれた。舌を絡め取られ、なかなか離してもらえず、息継ぎができなくて苦しさに悶え、燐の肩に手をやって必死に押し返す。


「っかわい」


ちゅっと最後にリップ音を立てて、やっと離してもらえたと思ったら、僅かに頬を紅潮させて潤んだ瞳で見つめてくる。正直、この時の燐は色気があって、こんな表情をされてドキドキしない人はいないと思う。それ以前にこんな燐を誰にも見せたくないのだけれど。


「優希の新曲、早く見てェな」
「…もうちょっと楽しみにしててね」


そう言って、また触れるだけのキスをした。

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