VD2021前編



先日、司くんとこはくんの協力もあって、一通りの準備できた。

キッチンに広げるのは、レモンに牛乳、たまご、オリーブオイル、はちみつ、ブランデーにチョコレート、生クリーム…。


さてと、何から作ろうかな〜と一通り周りを見渡して、とりあえずお湯を沸かすことから始めた。









ひとつ目、生クリームに水飴を入れて、チョコを溶かして、ウイスキーを入れてできたものを、型に流してそのまま冷蔵庫にいれる。

次に手に取ったのはレモン。レモンは国内産って決めており、皮をすりおろして、別にしておく。たまごを割ってオリーブオイルなどと一緒に入れてかき混ぜる。皮をすり下ろして剥げてしまったレモンから汁をさらに絞り出して、かき混ぜていけばモコモコになった。

このモコモコになる過程が割と好きで、かき混ぜていて楽しいなと思う瞬間である。


それから順番に材料を入れて、マフィン用の型をテーブルいっぱいに並べてお玉で一つ一つ生地を流し込む。膨らむことも考えて、型に対していっぱいにならないように調整しながら。生地の入ったマフィンの型をオーブントレーに並べて、オーブンの中へ入れてボタンを回し、スタートを押した。

これはこのまましばらく時間を置くために、一度スマホを手に取った。スマホに来ているメッセージを眺めながら、急ぎの内容がないことを確認して、あたしは順番にメッセージを送る。


(Knightsのみんなは事務所で良いとして、Switchとママさんもあんずちゃんも会えるだろうし…、あとはひーくんたちかな)


カレンダーを確認し、スケジュールを見て、とりあえずコンタクトを取ってみなければどうしようもないと思い、ひーくんの画面を出して発信ボタンを押した。


「出るかなぁ…」


画面は呼び出しを知らせる画面のまま、微かにスピーカーから聞こえる呼び出し音。まあ、出なければ出ないでメッセージを送れば良いのだが、と思い更けていれば、画面が通話中に切り替わるのを見て、すぐさま耳元に当てた。


「あ、ひーくん…?実はね、」












世間が休日の朝。仕事の兼ね合いもあって、朝早く星奏館の前にやってきた。

大きな紙袋をぶら下げて、あたしは中には入れないから、門のところで立ってるだけ。この時期の朝はまだ冷えるため、巻いていたマフラーに顔を埋めて、なんとか寒さを耐え凌ぐ。


「姉さんお待たせ!」


気づけば、横にはひーくんがひょっこりと現れて、こんな寒い朝だというのに上にコートを一枚羽織ってるだけだった。


「おはよ、朝早くにごめんね」
「良いんだ、姉さんのためなら喜んでだよ!」


時間を問わずあたしに向けてきてくれる眩しいぐらいの笑顔も、嬉しそうな声のトーンも少し赤くなった鼻もまた可愛らしくて、あたしは自然と笑みが溢れる。ひーくんは、お決まりのハグをしてきたから、手に持っていた紙袋がガサッと音を立てた。


「おやっ、ごめん、姉さん」
「うん、大丈夫。ちょっと当たっただけだから」

紙袋の中身を確認しても、何も問題ないことは確認できた。あたしが覗いてみていれば、つられて一緒に覗き込むひーくん。一緒に覗く形になるので、コツンと頭が触れ合って、まるで昔を思い出させてくれた。


「これ、全部姉さんが…?」
「そうだよ、割とよく作ったことあるものだから、大丈夫なはずなんだけど」


紙袋をひーくんに持たせて、持ち手を広げさせる。そのまま、あたしは中身の解説をし始めれば、ひーくんは素直にうんうんと言いながら耳を傾けてくれた。


「ひーくんとニキくんとひなたくんが同じ部屋って聞いたから、2人の分もあるよ。あと、これはニキくんにお願いしたくて、こはくんとHiMERUくんにも渡してくれるかなあ。でもニキくんだと食べちゃうかも」


小分けにラッピングされたそれらには、念のため名前のタグをつけてある。わかるようにしてあるけれど、どっちかっていうと問題は誰に頼むかの方が重要な気がした。



「椎名さんの分もあるんだから、大丈夫だよ。それでこっちは?」
「あ、こっちはみんなで食べて良いからね。一応、誰がいるかわかんないから、余分に作ってあるけど、食べる時にいる人たちで分けちゃって良いからね」
「うむ!ありがとう姉さん!」



本当に聞き分けが良くて素直で可愛いからこそ、つい昔の癖で頭を撫でてあげれば、ひーくんは嬉しそうな表情を浮かべる。しかし、途中で何かに気づいたのか、ハッとした表情を浮かべて、姉さんと口を開く。


「この中に兄さんの分がないみたいだけど」
「燐のは別にしてあるの。だから、燐にひーくんの分あげなくて良いからね。こっちの共有の方はあげても良いけど」
「うむ、わかったよ!」
「ありがとう、気に入ったらまたいつでも作るからね」


時間を確認して、そろそろ行かなければ。まだ名残惜しいけれど、ひーくんを一度ギュッとする。ひーくんから頬をスリスリされて、そのままあたしは頭をよしよししてあげる。正直いつまでこうしてあげられるかな、とか、いつまでこうしてくれるかな、と思う部分もあるが、逆を言えば今はまだやってくれるからこそ、精一杯可愛がってあげようってなってしまうのは、一種のブラコンなのかもしれない。


「姉さん、お仕事がんばってね」
「うん、ありがとう」


最後にひーくんの手を握って、行ってくるねと呟いてその場を後にした。今日はひーくんもチャージできたし、いつも以上に仕事は頑張れそうだ。

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