2/5の続きを。



※桜河視点


何もない休日の朝、スマホのチェックをしよったら、坊からメッセージが来とったんやけど、そこに何故か時間と場所が書かれておった。


突拍子なさすぎて、どないしたん思ったんやけど、とりあえず向かってみる事にしたんや。せやけど、


「こはくん、お待ちしてましたっ」
「こんにちはー、こはくん」


坊がおるのは理解できんやけど、何故かその横にいるのは優希はん。2人揃ってニコニコと笑顔で立っておる。坊は何故か胸を張って意気込んどるみたいやし、優希はんも一緒におるところが全く意味がわからへん。きっと今のわしの顔は、すごい眉間に皺が寄っとると思うんや…。


「優希はん、こんにちは。坊、なんやねん、突然呼び出しよって」
「突然ですが、今日は優希お姉さまのお手伝いを一緒にしてもらいます」
「ごめんね、休みの日に」


坊はやっぱりお構いなしっちゅう感じやし、優希はんは逆に少し申し訳なさそうな表情を浮かべてて、ホンマなんや…としかならへんかった。









何故か連れてこられたのは、様々な食品が取り揃えられている大型スーパー。こういう場所に来ることは、わしも坊も機会があるわけとちゃうから、正直いろんなものが目新しかった。


「優希はん、何買うんや?」
「んーとね、レモンと」


スーパーの買い物カゴをカートに乗せながら、店内をゆっくり見渡す優希はん。わしは言われるがまま来ただけやから、目的も何もわからへんっちゅうこともあり、尋ねてみれば指折り数えながら買い出し予定のものを教えてくれた。


「今度、バレンタインでしょ?だからお菓子作ろうと思って、その買い出しに」
「優希お姉さまが行くと言っていましたので、是非この朱桜司お供させてくださいとお願いしたんです」
「せやかて、わしまで呼び出した理由がわからへん」
「荷物持ちは1人でも多い方が良いかと思ったんです」


カートを押しながら歩く優希はんの向こう側から、ひょっこり坊が顔を覗かせる。そうかぁ、わしは荷物持ちとして呼ばれたんやな…せっかくの休日に…なんて思っとったら、優希はんがまたまたゴメンね、と口にした。


優希はんは、レモンの他にもはちみつ、板チョコやブランデーなどをカゴに入れておった。どの物を見に行っても、たくさんの種類があって正直驚いたわぁ。あまりにも、種類がありすぎて逆に優希はんは何を基準に選んどるんや…?って思ったわ。大量になった買った物たちは買い物袋が何個にも分けて入れられとった。
それをわしらは、それぞれ分担してみんなで仲良く袋を手にぶら下げながら歩く。


「こはくん、お仕事大変?」
「大変やけど、いろいろ楽しいで」
「こはくんの活動、朱桜の当主となる人間としてきちんとcheckしてますよ」
「そんなこと言って、司くんだって1ファンとして楽しんでるじゃない」
「優希お姉さま…!」


なんや、坊はドヤ顔で言っとった発言も優希はんの一言でなし崩し、坊は図星を突っつかれたようで、心なしか恥ずかしそうに慌てた様子を浮かべとった。クスクスと笑う優希はんを見て、坊がお姉さまと呼びたくなる理由が少しわかった気ぃがする。









「ここ…は?」
「ここは、優希お姉さまの昔働いていたCafeです」

てっきり、買い出しした物は優希はんの家に持っていくんやと思い込んどったわ。せやかて、やって来たんは、小さなお店。そうや、ここはニキはんや優希はんが昔アルバイトしとったお店。正直言って、一度しか来たことあらへんかったし、あまり目立った感じもせぇへんから、忘れ取ったわ。なんなら奥まったところにあるっちゅうから、2人に続いて入った店内は全然お客がおらへんかった。

お店のマスターが「いらっしゃい」と笑顔で出迎えてくれよったわ。なかなか人の良さそうな表情やんなあ…と思っとったら、優希はんは当たり前のように空いたテーブルに買い物袋を置いて、カウンターの中へ入って行ってしもうた。


「司くんとこはくんも袋重かったでしょう、ありがとう。適当に置いちゃって良いよ」
「優希お姉さまのお役に立てたのなら光栄です。さあ、こはくんもこちらに」


坊に言われるがまま、荷物を置いてテーブル席に誘導されて座るわし。なんや、落ち着いた雰囲気で、これはこれで居心地がえぇなあと思う。

メニューを広げて、せっかくやし、と思って何か注文しよ思っとったら、突然店内の流れる音楽が変わった。何事やと思って、パッと顔を上げてみれば、いつのまにやら傍まで来よった優希はんとその手には大きく色鮮やかなイチゴの乗ったタルトのホールケーキ。
あまりにも唐突すぎて、言葉も出ずに驚いとったら、横から坊に「こはくん」と呼ばれた。


「先日はあなたの誕生日でしたからね。みんなにお祝いされてましたが、これは私からこはくんへの誕生日祝いのcakeですっ!」
「司くんが盛り付けしたんだよ、マスターに協力してもらってね」


どうやら、先日あったワシの誕生日とは別に、坊が自分で準備して一緒にお祝いしたいと、今回この準備をしてくれたらしい。
キラキラと輝くイチゴの艶やかな赤が眩しい。



「こはくん、貴方がidolになって正直最初は驚きました。けれど、こうやって一緒に過ごせるのはとても嬉しいのです。だから改めてお祝いさせてください」
「坊…」
「happy birthday!こはくん」
「おおきに」
「良かったね、司くん。こはくん、おめでとう」


これは、あたしから…ささやかなものだけど、と優希はんが取り出したのは小さな包み。包装紙を外して中を見れば、淡いピンクのお餅。


「さくら餅…」
「こはくん、和菓子が好きって聞いたから、作ってみたの。良かったら、お土産として寮で食べてね」
「うれしいわあ、おおきに。優希はん」


2人の笑顔に胸の中がポカポカするのが感じられた。家ん中におったとき、こんな風に思うことは、ありひんかったわ。最初はもちろん、いろいろ大変やったけど、今はこの場所が心地いいと感じられるんや。わしはこの居場所を与えてくれた人たちに感謝を、ほんま、おおきにな。


(2/5、こはくちゃんおめでとう!)

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