コンビニ店員Aの証言2



今日もいつものようにシフトでバイトに出ている俺。今日も無事にシフトを終えるまで程よく仕事をこなしていこう。


つい先日、水城優希が男と買い物に来ているのを見てしまった俺。オフの彼女の姿なわけで、アイドルだって私生活があるのは当たり前。そう思い、俺は密かに彼女の恋路までも見守ることを決めたのだ。





(…そう、決意したはずなのだが)




棚卸しをしている最中に水城優希がまたバイト先にやってきた。それは予想できることだった。しかし今、現在進行形で実は予想外のことが起きている。


「ビール取って」
「いつもの…?」
「ン、そうそう」


今回も男と一緒に来ているワケだが、今回の男は前回の男と明らかに違う奴だった。黒マスクをしている男は前回よりも身長は高く、前回の奴よりも割と口調は素っ気なく、淡々とした言葉を口にしているような印象である。

これだけで何故、俺がこんなにも驚いているのか、それは水城優希がその男にぴったりとくっついているからだ。男の腕に自分の腕を絡めて、男が持っている買い物かごに言われた商品を入れていく。



別れたのか?まさか浮気?いや、彼女に限ってそれはないと思いたい。

どっちにしても、別れたのであれば次を見つけるのが早いし、浮気なら尚更やばくないか?

なんなら、この男、前回の奴に何処となく似てる気がするのも気のせいではないだろうか?あぁ、前回の奴の印象が曖昧だが、髪の色や目の色が似ていた気がする。




「チキンかポテト食いてェな」
「あたしはパフェが良いな」
「ン、どれ食いてェの?」


気づけばまたレジ前のメニューにまでやってきており、男の方は前屈みになりながらホットショーケースを覗き込む。水城優希がレジ上に掲げられている大きなポスターを見ながらパフェが食べたいと言えば、男もつられて視線を上に移動させた。その行動もまた必要以上に身を寄せており、正直レジ前でイチャつかないで欲しい。これは完全に妬みだが、妬みたくもなる。


「桃のパフェがいいな」
「美味そうだなァ」
「“りん”も買う?」
「ン〜優希の一口ちょーだい」


今、ちょうど期間限定のパフェのポスターが大々的に出ているため、それが目についたようだ。男の事を“りん”と呼び、男の方が身長が明らかに高いため、水城優希に甘えるような声で擦り寄っていた。俺はどことなくこの男を知ってる気がするが、思い出せない。


結局あのあと、二人の会話の通りにパフェとポテト、チキンのオーダーが入ったため、いつものように作ってお持ち帰りように袋詰めをする。商品を彼女に手渡せば、いつものように「ありがとうございます」と小さく挨拶してくれた。そしてまた男の腕に自分の腕を絡めて店を後にする。

自動ドアの前で、扉が開くのを待つために一旦立ち止まった瞬間、男の方と不意に目があった。男の方がさりげなく振り向いていたのだ。

目を細めて、見てくるその視線は決して生暖かいものではない。背筋がゾクッとなり、まるで猛獣に睨まれた小動物の気分、身の危険を何故か印象付けるものだった。

気づけば自動ドアは開いていて、店外への出て行く二人。マスク越しだというのに、俺の表情を読み取ったのか、心を読み取ったのか定かではないが、男の方は隣で話す水城優希の頭を抱き寄せると、そのままおでこに一つキスを落として満足そうに笑みを浮かべていた。



正直今日のことは驚きと恐怖を感じたので、これもまた俺の中に留めておこうと決めたのは言うまでもない。

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