側近から見た日常3



「姉さん!!!」


優希ちゃんと現場入りした時だった。何処からともなく、場に似つかない言葉が耳に入る。あまり耳馴染みのない声だったので、気にも止めていなかったら、突然横にいた優希ちゃんの体が視界の端でグラっとなったのがわかる。何事かと思って慌てて横を見てみれば、優希ちゃんが、誰か男の人に抱きつかれていた。


「姉さんっ、会えて嬉しいよっ!」


よく見れば、その人はALKALOIDの天城一彩。優希ちゃんに笑顔で抱きついている上に、あろうことか頬っぺたを擦り付けているその光景は異様なものだった。


「えっ…、姉さん…?」


私の聞き間違いではないだろうか?天城一彩が優希ちゃんを姉さんと呼んだように聞こえた。訳がわからないことだらけすぎて困惑していれば、優希ちゃんが困惑している私に気づき、説明してくれる。


「あ、そっか。言ってなかったね。実は、ひーくん…一彩くんとは同郷で一緒に育ってきたの。ひーくんが生まれた時から知ってるから、本当のお姉ちゃんみたいに接してくれてるんだ、けど…」
「多分、本当の姉弟でも、そこまではしないと思うわよ…」
「…やっぱり…?」


優希ちゃんは、ちゃんと自覚あったようで、どうやら天城一彩の感覚が少々特殊のようだと理解する。優希ちゃんと言えば出会った時から、Knightsのみんなと一緒にいたから初耳のことで、けどALKALOIDもデビューして間もないから、それはそれで当たり前なのかと納得。


「けど、やっぱこの業界だし、公にしてないから、ね。ひーくん、お外ではダメだよ」
「ごめんよ、姉さん…。つい、嬉しくて」
「あと、姉さんって呼ぶのもやめた方がいいかな…」
「姉さんは姉さんなのに…」


優希ちゃんは、こういう場所での天城一彩の行動を指しているのだろう。優希ちゃんに言われて、完全にシュンとしてしまってる天城一彩のその姿は、もはや弟というより、大型犬に見える…。


「まあまあ、司くんも優希ちゃんのことお姉様呼びしてるし、それぐらいはいいんじゃない…?」
「うーん、そうかなあ」
「ただ、さっきのスキンシップは控えてくださいね、一彩くん」
「うむ!」


それで、さっきのとは…?と加えて言われて、あっ、この子は天然なんだな、と気付かされる。




そっか、同郷ってことは幼馴染って感じなのかな。優希ちゃんが天城一彩とも幼馴染と言うことは、天城燐音とも幼馴染であるということ。だから、優希ちゃんは天城燐音を燐と呼んだり、いつも2人のユニットを気にして見てたのかと納得した。

それと同時に私の中で一つの疑問が浮かび上がる。

つまり、だいぶ前から天城燐音のことが好きなのではないか…?

[ ]









×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -