側近から見た日常2



今日は、とある音楽番組の収録日。優希ちゃんは最近、新曲をリリースしたばかりなのでメディア出演が特に多くなっている。今日の収録日は、他のアーティストとの共演があるわけなのだが。


「優希ちゃん、可愛い〜!」
「えへへ、ありがと〜っ」


上はシンプルなシャツに赤黒チェックのプリーツラップスカショーパン、黒のショートブーツ。今回アップテンポな曲もあり、割と動きやすさ重視のパンクっぽさを取り入れた衣装のため、ハイポニーテールがよく似合う。衣装に合わせて、入れた赤いインナーカラーが際立っていた。


撮影までの間、メイクを終えた優希ちゃんのリラックスタイムとでも言えようか、私たち優希ちゃんのサポートチームのお決まりである撮影会を開始した。

収録までの間、楽屋や廊下のスペースを使って、優希ちゃんのSNS用にいろんな姿を写真に納める撮影会。今回は廊下の少し開けたスペースにて、壁を白ホリ背景代わりにして、指でハートを作りながらカメラに目線を合わせてくれる。


「かわい〜っ!私が嫁にもらいたい」
「ふふっ、それは嬉しいな」


優希ちゃんは、実際のキャラと歌のギャップがあるタイプなので、かっこいいと可愛いを兼ねたこういうのが似合う。中身は守ってあげたくなる、というか構いたくなるタイプなんだけどね。ほっとけない、っていうのかな?Knightsのみんなもそんな感じでいつも気にかけてるのは知ってるし。だからこそ、今日の収録は正直少しの不安があった。



「ちわ〜っす」


廊下に響く軽い挨拶。撮影で使ってたスマホから視線を外して見れば、廊下の奥の方からあのCrazy:B御一行様の姿が見える。落ち着きある涼しい顔をしているHiMERU、澄ました表情の桜河こはく、モグモグと何やらバーのようなものを食べてる椎名ニキ、そしてきゃはは☆と笑みを浮かべている渦中の話題人だった天城燐音だった。

正直、スタッフの中ではまだ彼らに対してまだ疑念や不安を拭いきれていない。それを知ってか知らずかわからないけれど、周りの視線にも我関せずの状態で歩いてくる。


(そうだ、今日は彼らと一緒なのよね…)


あぁ、今日の収録の不安は全て彼らにある。あれだけの騒ぎを引き起こしたわけなので、優希ちゃんとの共演で何もトラブルも起きずに、更に言うならば変に突っかからずに終わってほしいというのが本音である。


「りーんっ!」
「よぉ、おつかれちゃん」


徐々に近づいて来る彼らに対して、いつものようににっこり笑顔で交わしてまた優希ちゃんの撮影会再開ができれば良い。そんなことを思い願っていたのに、あたしの願いは一瞬で崩れた。一緒にいた優希ちゃんから、まさかの声をかけたのだ。


「お疲れ様です、優希さん」
「みんな、今日はよろしくね」
「こちらこそ、よろしゅうな」
「なっはは!優希ちゃんと一緒なのは楽しみっす!」


あぁ、そういえば、椎名ニキは同じところでバイトしてたと言っていたな。桜河こはくに関しては、司くんの親族なので顔見知りもまあアリかもしれない。HiMERUは以前ソロ活動してたわけだから、その時の面識があったとか…?と何かしら理由をこじつけてみたけれど、たった一つだけどう考えても引っかかることがあった。


「燐たちの衣装、かっこいいね」
「俺っちにすげェ似合うっしょ?」
「ふふっ、似合ってるっ。でも、色々つけてて、これついてダンスの時に当たらない…?」


優希ちゃんと天城燐音のやりとりだ。優希ちゃんは、天城燐音のことをまさかの「燐」と愛称で呼んでいる。しかも、優希ちゃんは天城燐音の身につけているアクセサリーに触れて、興味津々って様子でいるわけなのだが、それがまあびっくりするぐらい至近距離。Knightsの彼らとは付き合いの長さもあるから、距離感の近さに違和感も何もなかったけれど、もしかして優希ちゃんってそういう感覚が疎いのか…?と逆に心配になってしまうものたった。



「ン〜やっぱ、その色でそうやって結いてるとそそられるわ」
「やめなさい、天城」


天城燐音は、ポニーテールにした優希ちゃんの赤いインナーカラーのところを軽く触れたかと思えば、顔をグッと近づけて悪い笑みを浮かべている。それを制してくれたのはHiMERUであり、冗談冗談〜♪なんて言いつつ、顔を離して距離を作ったが、こっちからしてみればハラハラする他なんでもない。


「HiMERUくん、ありがとう。ねえ、みんなで写真って撮っても大丈夫…?」
「おっ、いいねェ〜。俺っちたちは問題ねェよ」


あれよあれよという間に、Crazy:Bとの写真を撮ることになり、私は撮影係を頼まれて、椎名ニキ、天城燐音、優希ちゃん、HiMERU、桜河こはくの順番で完全にサンドされる状態でスタンバイ。各々、指でポーズを決めて、何枚かシャッターを切る。撮影に使ったスマホを優希ちゃんに渡せば、写真をチェックし始める。3人はそんな様子を見ているだけだが、天城燐音だけは横から覗き込み見ている、しかも腰に手を回して…えっ。


「みんなも大丈夫かな?」


優希ちゃんは気にしてないのか、撮った写真を他の3人に見せて、3人も大丈夫、と笑顔で返す。うん、他のみんなも気にしてないのおかしい。優希ちゃんに関しては、凛月くんとかよく膝枕〜なんて言って寝てたりレオくんが抱きついたりするのが日常茶飯事だったから、感覚がズレてるかもしれない。それはそれで危ないのだけれど…!


「じゃあ、後で送るね」
「ン、りょーかい」


その一言で天城燐音は、するりと腰からまた手を離し、「んじゃァ、あとでな〜」と手を振りその場を後にした。小さく手を振って見送る優希ちゃんは心なしか顔が赤い気がする、


もしかして優希ちゃんは天城燐音が好きなのかもしれない。

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