側近から見た日常
私は水城優希ちゃんの専属メイクアップアーティスト。元々、モデルさんを受け持つことが多かったんだけど、あのKnightsの鳴上嵐ちゃんと瀬名泉くんからの紹介で優希と出会い、気づけば専属としてメイクを担当させてもらっている。
優希ちゃんは、ニューディ所属して割と色んな仕事をこなしている。アイドルとして歌はもちろんライブもするし、バラエティーやモデルの仕事、舞台出演も最近は増えてきたかな。
今日はそんな優希ちゃんとのお話し。
「優希ちゃん、それってクレビ?」
「そう、クレビのMV」
いつものように、撮影のために優希ちゃんのメイクをしていれば、優希はほぼルーティーンのように見ている何かしらの動画。それはだいたい、身内である同じニューディのKnightsだったり、(多分勧められてだろうけど)Tricksterだったり。今日はどうやらコズプロ所属のCrazy:Bだった。
(最近そういえば多いな)
元々、優希ちゃん自身、J-POPからポップロックなどのジャンルをやってるので、まあ確かにクレビは近いものがあるなと思うけど。優希ちゃんと言えば、鼻歌を歌いながら、とても楽しそうにスマホの映像に釘付けだ。
「クレビ、色々騒がれてたりもしたけど、こうやって活動見てると、さすがアイドル。かっこいいわよね」
「かっこいい…!」
私がかっこいいと言えば、キラキラした目で見上げてくる優希ちゃん。心なしか嬉しそうだ。もしかして、クレビが今のブームなのかな?
画面の中では、息がピッタリとあったダンスを披露している彼ら。さすがコズプロって思ってしまう、ダンスを専門ではないあたしでさえ思う、動きがいい。これはKnightsとはまた別の良さがあるなと思う。
「そういえば、クレビの桜河こはくくんって司くんの親族なんだって」
「そうなの?そういえば、何処となく似てるかも」
わざわざ画面を一時停止して優希ちゃんはメイクをしているあたしに画面を見やすいようにしてくれた。ピンク髪の桜河こはくくん、どこか既視感があると思えば司くんだったか〜と納得する。2人とも、桜が名字に入ってるしオシャレだな。
「ニキくんはね、昔同じバイト先だったの」
「えっ、同じバイトしてたの?!?!」
「そ〜っ。ほんと昔だよ〜?こっち出てきて間もない頃に。だからお互いアイドルやっててびっくり!」
優希ちゃんは呑気に世間は狭いね、なんて笑ってる。ほんと世間が狭いわ…。ってことは、司くんの身内と昔のバイト仲間がいるから、気になって見てる感じかな。
そしてまたある日のこと、
今日もまた優希ちゃんのお仕事で楽屋で準備中。優希ちゃんはメイク前に何やら雑誌をペラペラとめくっている。雑誌はよくある芸能誌で、最近話題のアイドル特集!というページを開いていた。
覗いて見てみれば、最近よく見ているCrazy:Bと最近よく話題になっているALKALOIDだった。
「最近、この2ユニット引っ張りだこね」
「今注目のユニットだからね」
ページにはそれぞれユニットメンバーの集合したものと、めくれば1ページごとに1人ずつ配置されインタビュー付きの内容となっている。ALKALOIDとCrazy:B、どちらもユニットの個性が出ている立ち姿なのだが、その中でとある2人があたしは気になった。
「そういえば、この2つのユニットのリーダーって同じ名字よね」
「うん、兄弟なんだよ」
「あっ、だから似てるのか、なるほどね」
「2人ともかっこいいよね」
先程までペラペラと巡っていた優希ちゃんの手は、私が話しかけたこともあってか右にALKALOID、左はCrazy:Bがそれぞれ集合しているページで止まっている。そういえば、優希ちゃんがこうやって誰かをかっこいいというのも珍しいなと思ったけど、周りにいるのがKnightsの面々なので、いちいち騒いだりすることもないか、と思ってしまう。
しかも彼らは見た目と中身がかなりギャップがあるからな…。
一概にかっこいいとも言い切れない。と感じてしまうのは完全に彼らと仕事とはいえ、気を許してもらえるぐらいの距離感だからだろう。
「んーと、ALKALOIDの方が弟?」
「一彩くんね。Crazy:Bの燐音の方がお兄ちゃん」
「だいぶ、雰囲気違うわね。朔間みたい」
「ふふっ、確かに。でも、割と似てるとも思うけどな」
ぺらりとめくれば、右に弟の一彩、左に兄の燐音がそれぞれピンで載ってるページになった。なるほど、右がALKALID特集で左がCrazy:B特集でそれぞれの違いを見せる仕組みになってるのか。
目を細めてそのページをまじまじと眺める優希ちゃんの目は、嬉しそうな何か思いを含んだ優しい目をしていた。
確かにこうやって見てみれば、似てるかも、と納得してしまう。
(とりあえず見た目の印象的には弟くんも兄の方も色んな意味で我が強そう)
弟の方は、周り振りまわしそうな少年漫画の主人公にいそうに見えるし。
兄の方は、少し前まであった騒ぎからすると、かなり手に負えなさそうな性格っぽいから、極力関わりがないように静かにして優希ちゃんを守ろう、と心に誓った。
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