幼少期の習慣



たまたま優希と一緒にいる時だった。ES内とは言え、一応外ということもあり、お互いそれなりの距離感を保っていたというのに、それを気にも止めずにやってくる人影。


「兄さん!姉さん!!」


遠くから、俺たちの姿を見つけて駆け寄ってくる一彩。故郷を出てアイドルとしているはずなのに、こいつはどこまでもほんっとに変わンんねェな…と思う。その証拠に、めっちゃくちゃ笑顔で一目散にやってきたと思ったら、そのままの勢いで横にいた優希に、抱きついた。勢いのあまり、抱きつかれた優希は数歩後ろに下がるが、きちんと一彩を抱きとめる。と、いうよりは完全に抱きしめられてされるがままの状態だ。


「ひーくん、今日も元気だね」
「うむ!姉さんにも兄さんにも会えたから嬉しいよ!」
「あたしも嬉しい〜っ」
「姉さん愛してるよっ」
「えへへ、あたしもひーくん大好き〜っ」


お互いのほっぺたをくっつけてウリウリとしている姿は、昔みたいで微笑ましくも思えるが年齢的なことも考えると正直複雑だ。お互いに何も気にしていないのはわかるが、あまりにも気にしなさすぎてはないかと思わずにはいられない。第一、優希もされるがまま過ぎじゃねェか…などと思っていたら、バチッと一彩と目が合う。ゾクリと背筋に何かが走る。やばいと思った時には既に遅し。優希に頬を擦り付けたまま、口が開く。


「兄さん!兄さんもあ」
「やめっ」


最近、会うたびに言ってくるやつだと気づくも、いつもこれを止められない俺は正直逃げたいのに優希を手前にして逃げられねェからどうするべきか、答えを見出せずにいたら、ピタッと一彩の動きが止まった。


「ひーくん」


抱きつかれたままの優希が一彩の口元に人差し指をピッと押し当てている。


「「しーだよっ」」


優希と一彩の言葉が重なった。


「うむ!姉さんとの約束覚えてるよっ!」
「えらいね〜っ」


今のはなんなんだ?気づけば、またウリウリとし始める二人。一彩のことをわしゃわしゃと頭を撫でる優希。二人は二人で話が通じているようで、更に俺だけがついていけてない。すると、優希が俺の視線に気づいたのか、ふふっと笑う。


「昔ね、燐がおしごとしてる時、うるさくしちゃダメだから、ひーくんにこうやって静かにしようね〜ってよくやってたの」
「姉さんとの約束だよ、兄さん!」


二人そろって満面の笑みを向けてくる。あぁ、くっそこればっかりは正直にかわいいと思う。思うだけで言葉にはできるわけがないので、はぁ…とため息をついた。


(今回ばっかりは、大目に見るかァ)

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