つきのもの。3



意識が覚醒した時は、見覚えのある天井だった。お腹の当たりをさすってみれば、さっきよりはだいぶ楽になった感じがする。薬が効いているのか、それとも肩までしっかりとかけられた布団にお腹に貼られたカイロのおかげか、多分どちらもだろう。

むくりと起き上がれば、カーテンから漏れる外からの明るさ的に日が沈んできていることを悟る。
ベットスペースとリビングの敷居を越えてみれば、リビングスペースにあるソファーに座ってテレビを見ている燐の姿。あたしが起きてきたことに気づいたようで、燐はテレビから視線を外すして、あたしを見ると立ち上がって寄ってきてくれた。


「調子は…?」
「だいぶ楽になった、ありがと…」


お腹を優しくさすってくれて、それがまた心地よく燐の胸におでこをコツンとくっつける。感謝を述べれば燐は「ん、」と軽く反応しながら、さすっていた手は頬に移動してきて、そのまま横髪を指に絡めてかき上げる。完全にされるがままで、顔を少し上げれば、おでこにチュッと軽く口付けられた。


「あったまるもの、ココア飲むかァ、?」
「…のむ」




ソファーに座っていれば、燐はすぐに温かいココアとブランケットを持ってきてくれた。しかも一緒にブランケットを持ってきてくれる、ありがたすぎる。


「ツラいかァ…?」


チビチビとココアを飲んでは、身に染みる温かさを堪能していれば燐の少し心配そうな声が耳をくすぐる。意識が飛ぶ前よりも、はっきりとした意思で「大丈夫」って返せば、燐の生返事が返ってきた。あたしが横から、すりすりと擦り寄れば、燐は器用にあたしを抱き上げて自分の足と足の間のスペースに入れてくれる。密着した背中とお腹にまわされた手がまた安心感を与えてくれた。



「今、一彩に買い物行かせてっから、」
「えっ、なにを、…?」


ひーくんが買い物に行ってることにも驚いたし、燐はひーくんに何を買い物にいかせたのかもわからず、パチパチと瞬きの回数が自然と増える。


「食材。どーせ、今良くなったように感じても、貧血と初日でしんどいだろ…。夕飯、作ってやっから」
 

だから、そのためのおつかいに行かせた。なんて答える燐。ココアを飲んでお腹のあたりはじんわりとあたたかく感じるし、顔は見えないけれど、燐の優しさにも胸のあたりがポカポカしてくるのも感じた。


「燐のごはん…!」
「言っておくけど、大したものは作れねェからな」
「ううん、燐が作ってくれるのが嬉しい」
「不味かったら、一彩に食わせるかァ」
「燐の料理って、そんな、変なもの作らないの知ってるから大丈夫だよ〜でも、ひーくんはどんなのでも喜んで食べそう」



ひーくんの場合、兄さんが作ってくれたものだからね!って言ってペロってしちゃいそう。そんなことを思いつつ、持っていたココアをまた少し口に含んだ。





あれから、ひーくんは買い物袋を持って帰宅するなり、起きていたあたしの姿を見て駆け寄ってきてくれた。すごく心配してくれたことが伝わってきたし、ひーくんの優しさにもまた改めて感謝した。理由を聞かれたけれど、適当にはぐらかして、燐が話題を切り替えてくれたりもして。あたしの調子もだいぶ楽になったこともあり、燐と一緒にご飯の支度をして、3人で一緒に夕飯を過ごした。
久々の3人でのご飯は懐かしさもあり、大人になってしまった燐と大きくなったひーくんの姿に新鮮味もあったりで。

そういえば、ひーくんに軽々と抱き抱えられてて、本当に大きくなったなあと後々実感するのであった。

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