つきのもの。



完全に油断したと思った。今朝から、月一でやってくるアレになってしまった。重い時と軽い時があって、今朝の時点では全然気にしないぐらいだったから、大丈夫だろうなんて思って仕事に来てしまったのだけれど。


(お腹痛すぎてむり…)


正直ここにあんずちゃんとかナルちゃんがいたら、どんなに良かったかなって思えたし思わずにはいられなかった。


今月は重い月だったようで、なんとも言えない鈍痛がお腹を刺激する。加えて、貧血もなのか、頭がクラクラしてる気がする。気丈を演じて仕事で会う人たちに笑って、なんとか業務をこなしていく。一人になるたびに、緊張の糸が緩んで自覚する鈍痛は、蹲ったまま動きたくなくなるレベルのそれで。

痛みを感じてから飲んだ薬は効き目が悪い。閾値が下がってるからだろうか。蹲ってるだけでも楽になってるのでは、と思い込みたくて思い込む他なく、しかしこんなところで蹲るわけにもいかないので、壁にもたれながらしゃがんでいたら、パタパタと足音が聞こえてきた。目を閉じていたため誰が近づいてきたかも分からなかったが、「姉さん…?」と呼ぶ声がして誰なのかを察した。


「…ひーくん…?」


かろうじて、開いた目は片方だけで、開いた方の目で声の主を確認して見れば、予想通りひーくんが眉間に皺を寄せて、明らかに心配そうな表情を浮かべてあたしの顔を覗き込んでいた。あたしよりもすっかり大きくなった体を同じように縮こめてしゃがんでいる姿は、昔のひーくんを思い出す。


「姉さん、具合悪いのかい…?」
「ん〜ちょっとね…」


でも、だいじょーぶだよ…なんて手をヒラヒラさせながら口にするが、正直見た目が全然大丈夫じゃないよな、と我ながら思ってしまう。案の定、ひーくんも説得力のないこの発言を聞いて、更に眉間の皺は深くなる。目を開けているのもツラくて、自然と閉じる目蓋。


「姉さん、動ける…?」

「…姉さん…?」

「ねえさん…ねえさんっ」



何度もあたしを呼ぶ声がする、心配そうなひーくんの声が耳に入ってくる。これが昔だったらきっと泣きそうな顔をしてるんだろうなって思うような、か細い声。頬に何かが触れる感触があって、多分ひーくんの手かなあと意識がぼんやりする中で、そんなことを思う。


「どうしよ…すごく顔色が悪い、ねえさん、」


あたしは大丈夫だから、って言ってあげたいのに、お腹に響く鈍痛がそれを許さない。意識が朦朧とする中で、体がふわりと上がった気がしたけれど、それさえ気にする余裕があたしにはなかった。




そういえば、まだ里にいた頃もこんな風に痛みが出た時、稽古もいろいろお休みして寝込んでいたら、ひーくんが心配そうに寝てるところにやってきたな…。

目が覚めた時、お腹の当たりにぶっ潰して寝ちゃっていたひーくんが懐かしい、と意識が遠のく中で思ったことだった。

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