娘と二人の魔法使い



※2023年バレンタインネタ
※夏目視点

これはとある日の話ダ。

ボクは渉にいさんとESビル内でたまたま出会い立ち話をしていた時、渉にいさんが突然言葉を紡いで一点を見つめル。あからさまニ、そして唐突に動きを止めるのはとても珍しイ。渉にいさんの視線の先を追って見てみれバ、小さな女の子が一人。両手でかわいい女の子のお人形を大事そうに抱えて「おさんぽよ〜」って言いながら歩くヒメちゃんダ。確かあのお人形は宗にいさんがあげたもノ、って言ってたかナ。ヒメちゃんは今日もすくすくと素直に過ごしてて微笑ましいヨ。


「これはこれは珍しい」
「渉にいさんは事務所も違うしなかなか会う機会もないでショ」
「ふふふ」
「渉にいさん…?」


ヒメちゃんは今一人遊びを楽しんでいル。可愛らしく癒される光景を渉にいさんは含み笑いを浮かべていテ、にいさんが何かを考えているのは明確だっタ。



「蓮ちゃん」
「ん!にい!」


ヒメちゃんはキョロキョロと辺りを見渡ス。だけどヒメちゃんの探している人はどんなに頑張っても視界には入らなイ。


「にい!蓮ちゃんよ!」


それもそのはズ、ヒメちゃんが探しているのは椎名センパイ。だけど、この場には椎名センパイはいないからネ。


「蓮ちゃん」
「んぅ?に、」


ヒメちゃんの背後に立ってニコニコしてる渉にいさん。ヒメちゃんハ、椎名センパイを探すことに夢中すぎてボクたちのこともあまり気に留めていなかった様子。だから背後から椎名センパイの声がして振り返ったのニ、渉にいさんが立っててキョトン顔だヨ。



「蓮ちゃん、僕っすよ」
「に、」
「僕は私であり日々樹渉です!」


渉にいさんの口から椎名センパイの声がしテ、思わず言いかけた言葉。だったけド、ヒメちゃんは違和感を覚えてフリーズ。だけどそんなことお構いなしの渉にいさんは楽しそうに次の行動に出タ。



「っやぁああ!」
「おやっ」
「あァ、それはだめだヨ」


ヒメちゃんの口から出たのは拒絶。そそくさボクの方に駆け寄ってきて足にしがみついてきたよネ。渉にいさんは豆鉄砲を食らった顔をしているシ、ヒメちゃんは頑なに離れる様子もないかラ、ボクは背中をヨシヨシと宥めてあげル。


「ヒメちゃん、苦手なんだよネ」


渉にいさんがしたのは驚きで喜ばせようとした行動ダ。別に悪気があったわけじゃないシ、知らないのだから仕方なイ。だけどこのままじゃ何も変わらないかラ、ボクは渉にいさんに隠すよう頼むのダ。


「ハト」
「これは失敬。怖がらせてしまったのは不本意です」
「ほラ、ヒメちゃんもう大丈夫だヨ」
「んぅ…」


そう、ヒメちゃんの苦手なものはハト。どうやラ、ハトに群がられたことがあるみたいデ、それ以降苦手なんだっテ。渉にいさんのハトは悪さなんてもちろんしないけれド、ヒメちゃんはそんなのわからないからネ。渉にいさんはちょっとだけ申し訳なさそうにしまってくれタ。普段、ニコニコ顔のヒメちゃんしかみないだろうかラ、渉にいさんにとっては不本意だろうネ。




後日、ボクは事務所で再びヒメちゃんと会うことになル。


「なっくん!」
「やァ、ヒメちゃん」


ヒメちゃんは今日も元気。ボクを見るなリ、大きな声で名前を呼んだくれる。かわいいお姫さまだネ。


「なっくん、これ蓮がえらんだの!」
「これをボクにくれるのかナ?」
「うん!なっくんにあげる!」


ヒメちゃんがくれたのは赤い袋に入った何カ。ヒメちゃんはニコニコと嬉しそうに手渡してくれル。


「なっくんはあかとみどりなの!」
「これは何かナ?」
「ちょこ!ままがすきなひとにあげるんだよってゆってた!」
「ありがとウ、すっごく嬉しいヨ」


ギュッと笑顔で抱きついてくるヒメちゃん。ご満悦な笑顔で本当に可愛らしいネ。ボクもその気持ちに応えるようニ、ぎゅって抱きしめ返してあげたら満足したらしいヒメちゃんが離れてボクを見つめル。


「なっくん、蓮ね、いきたいところがあるの」


行きたいとこロ?ボクは全く心当たりはないけれド、かわいいヒメちゃんのお願いなら快く聞いてあげよウ。




「おやおや、夏目くん。珍しいですね」
「ちょっト、用があってネ」


ボクがやってきたのはスタプロの事務所。滅多に来ることはない場所だったかラ、正直気乗りはしなかったけド、どうやら今日のボクは運が良いらしイ。渉にいさんと早い段階で鉢合わセ。。


「渉にいさんに」
「おや?」
「わあっ!」


渉にいさんはボクがここまで来ていたことにあからさまに不思議そうな表情。だけどそれはすぐに崩れて驚きに切り替わル。渉にいさんの足元で突然大きな声が上がったからダ。渉にいさんの足にしがみついてニコニコしているヒメちゃん。それもそうだろウ、渉にいさんの驚いた顔を見て喜んでるんだかラ。


「わたちゃんおどろいた?」
「びっくりしましたよ、どうしたんですか小さな姫君」
「わたちゃんのまね!」


キャッキャと喜ぶヒメちゃん的には大成功らしくご満悦。先日のヒメちゃんはハトに驚いていたけド、実際のヒメちゃんは渉にいさんとも仲良シ。現にここへ来たいと言っていたのもヒメちゃんの希望であっテ、ボクではなイ。



「わたちゃんにもあげる!」
「いいのですか?」
「うん、わたちゃんおともだちだもんね!すきなひとにあげるんだよっ」
「これは嬉しいですね〜、私も大好きですよ」
「わあ!」



ヒメちゃんが手渡したのはボクにくれたのと色違いのチョコが入った袋。渉にいさんはそれを受け取ると嬉しそうに微笑んでお返しに、とかわいい花を差し出せばヒメちゃんはキラキラと目を輝かして嬉しそうに声を上げル。


「わたちゃんまほーつかいだもんね!」
「ふっふっ、そうです魔法使いですからね!なんでも出せますよ」
「わたちゃん、にいだして!」
「それはちょっと大きなお願いですね〜」



楽しそうな二人を見テ、ボクもホッとさせられル。そういえバ、二人は仲良しなのにハトが苦手なこと知らなかったのも意外だったナ。普段、何して仲良くしてるんだうネ?

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