カフェシナモン・mini2



※漣視点

コズプロの事務所に立ち寄った日のこと。


「じゅんくん!!!」
「おわっ!蓮ちゃんじゃないっすか〜、こんちゃ〜っす」
「じゅんくん!蓮とにいごっこしよっ!」


突然ひょっこりと顔を出してくれたのは、蓮ちゃんだ。天城先輩のところの愛娘でめちゃくちゃ可愛いんすよね。人見知りって知らないんすかね?オレとは面識あるけど、割と最初から嫌がらずにいてくれるし、他の人たちとも仲良くしてるの見かけるから、そのうち攫われねぇか不安になっちまうほどだ。


「にいごっこ?」
「そーよ!蓮はにいね!いらっしゃいませ!」
「あぁ、椎名先輩のことっすかね、つまりカフェシナモンってことっすか」


そういえば、少し前にナギ先輩が言ってたっけ。蓮ちゃんと一緒に茨にカフェごっこしてコーヒー淹れたって。なるほど、蓮ちゃんにとっては椎名先輩の真似っこする遊びってことか。
子供ってなんでこんな面白い発想するんすかね。おままごととかじゃないんすか?でも蓮ちゃんは椎名先輩大好きだし、これはこれで正解か?


「蓮ちゃんのお店は何があるんすかね〜?」
「んーとね、んぅ〜けーき!」
「じゃあ、そのケーキひとつもらえますか?」
「はーい!」


蓮ちゃんにとりあえず話を合わせる。本来ならメニューを見て注文だけれど、そのメニューもなければ蓮ちゃんの中でどんなメニューがあるかもわかんねぇから、だったら蓮ちゃんに合わせちゃった方が確実だし。蓮ちゃんは大きく返事をひとつ。そしてパタパタとどっかに行ってしまった。本当にケーキが出てくるとは思っていないけれど、オレは事務所の応接用ソファーにとりあえず腰掛けて、スマホを取り出しホールハンズをチェックする。今後のスケジュールとか新着のメッセージとか。オレらはEdenとしての活動とEveとしての活動があるから、きちんとチェックしなければ後々大変だ。しかもおひいさんの面倒も見なきゃいけねぇし…。


「はーい!ジュンくん!けーきよ!」
「ははっ、ありがとうございます〜ってこれキッシュっすね?」


そうだった、オレは蓮ちゃんとも遊んでたんすよね。蓮ちゃんのお遊びって可愛いもんだから、そんな支障ねぇし、むしろ一人で割と遊んでるのでは?って思ってしまうほど。蓮ちゃんはケーキに見立てた何が出てきたのかと思えば、持ってきたのがキッシュでオレはケーキが出てきたと本来喜ぶべきなんでしょうけど、つい本音がポロリと出てしまった。


「んぅ?けーき…」
「あ、よく見ればケーキっすね!蓮ちゃんありがとうございます…!」


蓮ちゃんは言葉を真に受けて、しゅんってしちまったからオレは慌てて訂正。美味しそうだな〜!とキッシュの乗った皿を眺めて喜んだフリをしていれば、蓮ちゃんはすんなり信じてくれたようですぐに笑顔。


「おいしーよっ!ひよりちゃんのだからね!」
「えっ、これおひいさんのっすか…?!」
「ねー!ひよりちゃん!」
「そうだね!ぼくだからね!」
「おひいさんいつのまに…!」



オレの後ろにいつのまに。おひいさんがドヤ顔で立ってて、まさか真後ろにいるとも思わなかったから驚いたけれど、一目見てしまえば、おひいさんだしな…と妙な納得をしてしまうのは慣れだろう。



「ぼくのキッシュだけど、蓮ちゃんが言ってたね!ジュンくんがケーキをご所望と聞いて、今準備してるからぼくのキッシュを持って行かせたね!」
「ねっ!」


おひいさんの言葉は相変わらずごちゃごちゃしているし、おひいさんが来ると蓮ちゃんも一緒に便乗するから、ちょっとだけ元気度が増す気がする。今もえっへん!っておひいさんみたいっすよ〜、蓮ちゃん。
えっと、おひいさんはなんて言いましたっけ?まずおひいさんのキッシュ。そして蓮ちゃんがケーキを持っていかなければならないことを知っていたようで。準備、


「準備ってどういうことっすか?」
「その言葉の通りだね、ケーキの準備をしてるんだよね」
「準備って、」
「ケーキこうてきたわぁ」
「サクラくんまで?!」
「こはくちゃーん!」
「待たせたなぁ、」


おひいさんで終わりだと思ってたから、サクラくんの登場にはさすがに驚きましたよ…。ケーキの箱を持ってるサクラくん、蓮ちゃんはサクラくんが来るなり、ぴょんぴょんと飛び跳ねてこれもまた嬉しそう。天城先輩と一緒にいるだけあって顔合わせる機会も多いだろうから、尚更っすかね。


「けーき!たべる!」



あれから、サクラくんがお皿とフォークを準備してくれて、みんなで一緒にケーキタイム。みんなおそろい、いちごの乗ったショートケーキ。真っ赤なイチゴが色鮮やかでとても艶やか。サクラくんが用意してくれたなら間違いないっすよね。


「じゅんくん」
「なんですか?蓮ちゃん」
「蓮ね、いちごたべたいなぁ」


オレと向かい合うように座っている蓮ちゃんにもいちごはあったはず。でも蓮ちゃんは真っ先にいちごを食べたみたいで、ショートケーキの上の真っ赤ないちごはなくなっていた。つまり、目の前にあるオレのいちごを狙ってるってわけっすね。



「じゅんくーん」
「こら、蓮ちゃん。ジュンはんもいちご好きやから、わしのいちごあげるわ」
「いちごっ!」



ははっ、サクラくん。さすがっすね。蓮ちゃんの扱いが上手いし、なんなら年の離れた兄妹みたい。微笑ましい光景に、つい表情が緩んでしまう。



「けど、なんでケーキ買ってきてくれたんですかね?」


蓮ちゃんのお遊び一つでこんなにわざわざするのだろうか?手が混みすぎだし、オレが蓮ちゃんにケーキを頼んでから持ってくるまでの時間も早すぎる気がする。


「ジュンくんの誕生日だからね、蓮ちゃんと一緒にお祝いしようと思ったんだよね」
「んぅ!いちごおいち!」
「蓮ちゃん、座ってなぁ」


おひいさんの言葉はきっとオレだけしか聞こえてない。蓮ちゃんはサクラくんからもらったいちごに夢中で、ソファーの上に立ち上がるし、それをまたサクラくんが宥めるから。蓮ちゃん、お祝いってわかってるんすかね、って思ったけど、蓮ちゃんが準備しようとしてくれた気持ちは素直に嬉しいから受け取っておくことにしましょうかね。

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