続・娘と謎のお友達



※白鳥視点


あれから数日のこと。俺はESビルにいた。



「んぅ…」



ふと目に止まった視線の先には蓮ちゃん。椅子の下や棚の隙間を覗いたり、まるで何かを探しているようなその行動は、先日聞いたばかりのこはくっちの話を思い出す。



「蓮ちゃん何やってるのかな」
「んぅ?」



蓮ちゃんに声をかけてみるけれど、あの日と違うのは蓮ちゃんが何かに夢中で俺をほとんど見てくれないと言うこと。タタタッと駆け出したかと思えば、手近にある棚を覗き込んだ。



「蓮ちゃん、何か探し物?」
「んぅ〜」
「あはは…すごい真剣」



声をかけても帰ってくるのは空返事。子供って夢中になったら、周りが見えなくなっちゃうもんね。前回が凄く嬉しかったからこそ、今回こんなにも変わってしまうとちょっと寂しくもなる。急ぎの用があるわけでもないから、とりあえず蓮ちゃんの行動をおれは眺めていることにした。蓮ちゃんを見つめていて、すぐのこと。「あ!!!」と言う声が響く。



「みっけた!!!」



突然大声を上げたかと思えば、一目散にとある机の元へと駆け寄った。見つけたと確かに言った蓮ちゃんは、何を探していて何を見つけたのだろうか。ここまで見てしまっては最後まで見届けたいと言う好奇心を持ってしまったから、驚いた。




「蓮ちゃんに見つかってもうたわ〜」
「っぇえええっ?!」



蓮ちゃんの探してたものは〜?って思って見てただけなんだけど?だってまさか机の下から、影片先輩が出てくると思わないじゃん?!?!思ったより大きく出てしまった自分の声に再度驚いて口を思いっきり両手で塞ぐ。視線の先には蓮ちゃんに腕を引っ張られながらも這いつくばって出てくる影片先輩。えっ、格式高いValkyrieの影片先輩が…床を這いつくばって机の下から出てきたんだけど…。




「みぃちゃん!みっけた!!!」
「蓮ちゃん、すごいなぁ…!」
「蓮すごいよっ!」




うん、格式高いValkyrieは世間のイメージ。だけど、そうだ。影片先輩はこういう人だ。こういう人だけど、こういうことまでしちゃうの…?っておれの中で大混乱が起きている。蓮 ちゃんは影片先輩のことをみぃちゃんって呼んでるし、まるでお友達相手に話してるようで。影片先輩は完全に面倒見のいいお兄ちゃんって感じかな。



「白鳥くん、こんにちはぁ」
「お疲れ様です、影片先輩…!」



影片先輩はおれのことにも気づいてくれてたみたい。いつものように挨拶してくれる影片先輩に内心緩みそうな頬を頑張って堪えて挨拶を返す。



「みぃちゃんみぃちゃん!」
「んあ〜そない引っ張らんといて〜」




なんだろう、ヒロくん以上にしっかりお兄ちゃんって感じしてるなぁ。影片先輩自身、小さい子の相手に慣れてる感じもするし。蓮ちゃんも一緒にいて楽しそうだ。正直、優希さんたちがいないのにここまで打ち解けてる事の方が驚きだったりもする。



「影片、何をやってるのだよ」



やってきたのは斎宮先輩。びっくりだよもう、影片先輩と会えただけでも嬉しいのに、斎宮先輩まで?!と思っていたけれど床に手をついていた影片先輩が両手をはたきながら立ち上がっている様子を見て、眉間に皺を寄せながらやってきたから、今じゃなかったかも…って内心思った。



ちなみにおれの驚きはここで終わらない。




「おっちちゃーん!!!!」
「なんだ、蓮も汚れてるじゃないか。君は可愛いんだから綺麗にしていなきゃだろう」
「おちちゃ」
「ほら、手を出したまえ」
「ん!」



蓮ちゃんはぴょんと飛び跳ねてパタパタと駆け出す。見るからに関心は完全に影片先輩から斎宮先輩へ行ってしまったようだ。蓮ちゃんもさっき所構わず触っていたから、その姿を見て敏感な斎宮先輩は露骨に眉間に皺を寄せる。まずい、って思ったけど、そう感じたのはどうやら俺だけらしい。斎宮先輩は持っていたハンカチを取り出し、蓮ちゃんは言われるがまま手を差し出す。そして、汚れた手のひらを優しく拭ってあげていて俺は驚いた。どうやら蓮ちゃんはValkyrieの二人とも仲が良いらしい。怖い物知らずというか、人懐っこいのか、いや、でもおれは最初の時に泣かれたし…でもそれもっと小さい頃で、と色々考え込んでしまう。



「ほら、蓮のマドモアゼルの着替えが終わったのだよ」
「んぅ!おっちちゃ!あんがと!」
「くれぐれも大事にするのだよ」
「うん!」


斎宮先輩は一体の綺麗なお洋服を身に付けた女の子のお人形をそっと手渡した。すると蓮ちゃんはそれを嬉しそうに抱きかかえ、「ままよ〜」と、まるでおままごとのようなことを始める。さっきまで影片先輩と一緒にあんだけ遊んでいたのに、もう眼中にない様子は子供ならではだろう。


「蓮ちゃんと知り合いだったんですね」
「蓮ちゃん、よく遊んでくれるんよ」
「あはは、遊んでもらう側なんですね」
「おちちゃ!まどねーねは?」
「僕のマドモアゼルはお留守番だから今度一緒に遊ぼうか」
「ん!」


改めて聞いたのは蓮ちゃんの持っていたお人形は斎宮先輩からのプレゼントだったらしい。なんとなく見ていて察しはついたけれど、やっぱりだったんだね。こういうValkyrieが見れるのも新鮮だしおれとしてはすごく嬉しい巡り合わせだったな〜!
後日聞いた話によると、ヒロくんは蓮ちゃんのお人形をもらった相手はしていて、どのタイミングでもらったのかが知らないってことだったらしい。ホント、ヒロくんの言葉足らず…!!!

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