憧れの学生服5



あれから、ひーくんたちとはバイバイしてまた一人になった。スマホを取り出して時間を確認すれば、そろそろ、あたしも事務所に戻って着替えようかなと思える時間。


「あっれれ〜優希ちゃんっすか〜?」
「んーと、ニキくん」


不意に名前を呼ばれて、そこにいたのはニキくんだった。なっはは〜お疲れ様っす!と寄ってくる。


「優希ちゃん、珍しい格好してるっすね」
「あ、うん、ちょっと仕事でね」
「そうなんすね!似合ってるっすよ〜!」


なんか今日は褒められてばかりで、くすぐったい、気恥ずかしい思いばっかりしてる気がする。でも、それは嫌な気持ちじゃないので、素直にありがとうと返せば、なははと笑顔のニキくん、だったが、あたしの後ろを見て一気に表情が崩れた。


「お〜い、ニキ、なァに女子高生ナンパなんかしてんだァ〜?」
「げっ…燐音くん…ナンパじゃないっすよ…」


どうやらニキくんの表情が崩れた理由は燐のようだ。あたしの後ろから燐の声がするし、燐は多分あたしに気づいていないだろう。ニキくんは燐の言葉に本気で困った表情を浮かべてる。


「つーか、こんなところに、なンで女子高生いるんだァ〜?…って、な、」


どうやら気づけば燐はすぐ後ろまで来ていたようで、ニキくんの肩に腕を回してニヤニヤしながらこちらを見るなり、一瞬にして動きが止まる。ニキくんはニキくんで燐からそっぽむいて「僕、知らないっすよ…」って呟いた。


「優希…」
「え、っと、お疲れ様、燐」
「…おい、ニキてめェ、なに優希をナンパしてやがる」
「だーかーらー違うって言ってるじゃないっすかぁ〜!!!」



燐は、一気に不機嫌そうな表情に雰囲気を醸し出して、腕を回していた方の手でニキくんの尻尾髪を、思いっきり引っ張り出した。ニキくんは「痛いっす!違うっす!」って半泣き状態で、正直あたしはどうすればいいかわからず、オロオロしてしまう。


「も〜たまたま会っただけっすから!優希ちゃんが可愛い格好してるからって、僕に当たらないでくださいよ〜!!!」
「うるせェ」


心なしか燐の耳が赤いようにも見えるのは、多分気のせいではないだろう。ニキくんの言ったように、そう感じてくれてるのなら嬉しいなと純粋に思う。燐にもニキくんにも申し訳ないが、ついクスクス笑っていれば、二人とも何故笑ってるんだとキョトン顔であたしを見てきたのがわかる。



「ねえ、燐。かわいー?」


あまりこういうことを自分で言うのは気恥ずかしいのだけれど、今目の前の出来事もあってか、何故か口にしてしまい、段々と上がる体温。そして顔に集中する熱。顔、赤くなってないかなって内心思いつつ、少し早まる鼓動を自覚しながらも燐の様子を窺えば、頬を赤らめて視線を泳がせながらも「ン…」と短く肯定してくれた。それがまた嬉しくて、胸の中がポカポカするのがわかる。
ちなみに横でそんな様子を見ていたニキくんがニヤニヤしながら、燐の様子を見てたんだけれど。ニキくんの反応に気づいた燐はすぐさま、また尻尾髪を引っ張り始めたので、ニキくんはまた「痛いっす!」なんて大声を上げていた。


「あ、そうだ。燐、ちょっと屈んでほしいな」
「ン〜こうかァ?」
「そう、ちょっとそのままで頑張って」


燐に目の前で屈んでもらうように頼めば、顔がほぼ目線の高さまで低くなってもらった。多分、燐にとって大変な姿勢だろうから、あたしは急がなきゃと思い、燐の左耳に手をかけた。

燐は少し目を泳がせながらあたしの行動にされるがまま、待ちの体制。ニキくんはあたしの手元をいっしょに見ている。


「できた!」
「キレイっすね」


燐にもういいよって言ってあげれば、燐は足をちゃんと伸ばすと同時に伸びもして、なんだァ?と呟く。燐はもちろん自分で見ることができないので、持っていた小さな手鏡を出して、燐が見えるように目の前に掲げる。


「燐にお土産」


そう言って燐の視界に入るのは緑の石が嵌め込まれたピアス。そう、さっきひーくんにあげたピアスと色違いのものである。
燐はそれを見るなり、ポカンと口を開けていたが、すぐにふっと笑って「さんきゅーな」と言いつつ、ピアスに触れた。
 

(ひーくんと色違いなんだよ)
(弟くんとも会ったんすか?)
(そう、ひーくんとお出かけしてたの)
((クッソ、俺っちも一緒に出かけたかった))

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