あなただけだから



※とうか様リクエストヒロイン視点

※再会編時間軸
※熱愛発表前


今日の行き先は決まっている。セゾンアベニューだ。近場だし、買い物目的に行くわけであって、適当に私服を選んで着替えて外に出る。


待ち合わせ場所に向かいながら、ちょっとだけ不安が頭をよぎるけれど、それもすぐに安心へと切り替わった。



「お待たせ、ちゃんと来れたね」
「おれだってやる時はやるんだからな〜!」



待ち合わせ場所に立っていたレオくんは、あたしの姿に気づく。黙って立っていれば、世間一般的に見てかっこいい分類に入るはずなのに、今も目の前でえっへん!って胸張る姿から可愛らしさしかないのがレオくんの魅力だろう。



今日はレオくんと買い物だ。目的はレオくんの妹のるかちゃんへのプレゼント。昔、お世話になったことがある。レオくんが今回贈り物をする話を聞いて、あたしからも何かあげたいと思い買い物に同伴することになった。今日、出かけることは、燐にも事前に伝えてあるから多分心配はないはず。


レオくんもあたしもいつもなら伊達メガネをかけたり、マスクをしたりして街へと繰り出すけれど、今回はほぼ普段通り、私服のみの姿だ。



「こうやって二人で出かけるのも久々だな」
「懐かしいね、レオくんが色々教えてくれたんだもんね」



可愛らしい雑貨屋さんだったりブランド系のお店だったり。お店を渡り歩いて、一緒に商品を眺めて悩んだりして思い出すのは昔のことだ。故郷から出てきて馴染めてないあたしをレオくんが色々教えてくれた昔の記憶。レオくんたちのおかげで今がある訳だから、あたしはきっとこれからも感謝してもしきれない、感情を抱えて過ごすだろう。レオくんはそんなこと気にしないだろうけど、そんなことをぼんやりと思いながら懐かしんでいれば、とあるカフェの前を通りかかって二人で顔を見合わせる。そういえば、買い物に出てから何物わず食わずで歩いていたから喉が渇いてきたな、と。なので、カフェでドリンクを互いに買うことに。



「優希!写真撮ろう!」



買った飲み物を片手にレオくんが珍しく写真を撮ろうなんて言ってきた。「るかたんに見せてあげたい」なんて言うから、断る理由もなく了承するだけ。レオくんがスマホを構えてあたしの写真を撮る。うんうん、かわいい!なんて言いながら、勝手に納得しているレオくん。気づけばあたしの横に並んで、インカメラを起動し構え始めるから、あたしもぴったり並んで一緒にツーショットを撮ってもらう。こうやってオフの状態での写真を撮るのも久々だ。レオくんはすぐにポチポチとスマホをいじり始めるから、早速るかちゃんに送ってるんだろう。



「レオくん、凄い鳴ってるけどいいの?」
「いい!へーきだ!ほら、いこ!」



あたしは横でドリンクのストローに口をつけて飲んでいれば、レオくんのスマホがすぐに鳴り始めて「わははは!」と笑い出す。それなのにレオくんは鳴り出したスマホをそのまま気にせずしまってしまうから、つい聞いてしまった。あたしを気にしてなら、と思ったけどレオくんの性格上それはないだろう。だいじょーぶ!を連呼してレオくんはスマホをしまう姿に少しだけ、引っかかる部分はあるもののあたしもこれで深く追求することをやめてしまった。





無事、プレゼントも買えて渡すのはまた後日なので今日はここで解散。レオくんがちゃんとプレゼントを落とさずに帰るか心配だけれど、レオくんもいい大人だから大丈夫だと信じよう。なにより、るかちゃんへのプレゼントだから気を引き締めて帰ってくれるはず。

レオくんと解散してスマホを久々に見てみれば、何件かメッセージの通知が表示されていた。一つはKnightsのみんなとのグループのもので、レオくんはどうやらここにもさっきの写真を流していたらしい。優希とデートだ!なんて書かれてて、それに対して泉くんや司くんたちの返事で溢れてて笑ってしまう。


「あ、」


メッセージが来ていたのはKnightsだけではない。燐からもメッセージが来ていて、時間を見れば数時間前のもの。「迎えに行くから、連絡して」と簡潔的なもので、あたしはそのまま「今から帰るよ」とメッセージを返す。



燐に送ったメッセージはすぐに既読になった。あたしはいつもの帰り道を歩いていれば、前から見慣れた燐の姿が現れる。今日の出来事を伝えたくて、駆け寄ったあたしは燐の様子に驚かされる。人通りの少ない通りにまでやってきたとはいえ、燐が人目を気にせず抱きしめてきたから。抱きしめられて気付いたのは、その直前の表情も浮かないものだったこと。メッセージは文面上だったから、気づかなかったけど何かあったのだろうか。



「…燐?」



ギュッと込められた腕が少しだけ痛いけれど、燐が意味もなくこんなところでするはずがない。とりあえず、無理やり離すわけにもいなかいこの現状、手の届く範囲で燐の背中をポンポンと撫でていれば、耳元で燐が呟いた。



「レオちゃんと距離近ェ」



…レオくん?



「買い物、二人でって聞いてねェんだけど」



あ、そっか。買い物に行ってくるしか言ってなかったっけ。



「しかもデートって何」
「へ、デート…?」



思わず声が出てしまった。あたしの声を聞いてから、燐の腕の力が緩むのがわかる。だから少しだけ身を捩ってみれば、すんなりと動くことができたから、燐の顔を見上げてみると不安そうな色を浮かべた瞳と目が合う。



「レオちゃんからメッセージ来た」
「レオくんから…?」
「二人とも普通に出掛けてんの…いっつも」


最初は何のことかと思ったけど、コソコソとしねェで出歩いてんの…そう言って燐はまたあたしをギュッと抱きしめられて、遅れて意味を理解する。燐と出かける時はいつだってコソコソしなきゃいけなくて、普通に出掛けられることの方が少なくて。



「燐、嫉妬…?」



普段、こんな風な話をすることもなければ、燐が露骨に態度に出すのも珍しかった。現に今だって、あたしの言葉を聞いて黙ってしまったし、なんなら腕の力が更に強まった。


本当は堂々と二人で歩きたいけれど、周りの目があるから。レオくんに関しては、こっちに来てからの付き合いが長い。故にいろんな場面で離す機会が多かったこともあり、良いのか悪いのかKnightsファンの中でも納得されてる関係で、慌てられないし騒がれないだけ。その違いが燐を今回不安にさせてしまったんだろう。
 


「あたしだって、あんずちゃんと出かけるの知って面白くなかったんだからね」



思い出すのは燐が専用衣装のためにあんずちゃんと出かけた日のこと。



「だから、レオくんとデートした」



少しだけ、本音と嫌味を混ぜて呟いてみれば、燐の何とも言えない声が耳に入ってきて思わず笑ってしまった。



「うそうそ。今日はレオくんの妹ちゃんへプレゼント買いに行っただけだよ」
「…」
「燐だけだから、」



そう、あたしには燐だけだ。

こんなに思っていても不安にさせてしまうのはあたしの行動にも原因はあるけれど、ふとした時いつだって思うんだ。



「燐、帰ろう。おうちに」
「ん…」
「あたしの居場所は燐のところだから」



燐の手に触れれば、少しだけ低い体温が伝わってくる。まるで燐の緊張や不安が表れているようで、だからこそあたしが触れることによって少しだけ安心させられたらいいな。燐はみんなの前で気張っているけれど、あたししか知らない本当の燐。


だから余計に思うんだ、



みんなに認められたら一番良いのにね、と。

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