憧れの学生服3



こんな格好でどこに行こうか、遠くはまず行けないし、いろんな人に見られても…と思っていたら、だいぶ候補が絞られる。エレベーターに乗り込んで、スマホで時間を確認する。なんとも言えない時間だし、お腹が減ってるわけでもないので、とりあえずESのロビーに向かうことにした。

エレベーターに乗ってる間に、スマホをいじってみるが、目ぼしいものが見つからない。うーん、どうしようと思っていたら、ポーンと一階に到着したことを知らせる音が響く。ロビーに出たところで、誰かとぶつかりそうになったので条件反射で「すいません」と謝りつつ、相手を見ようとすれば、一瞬動きが止まる。目の前には青のネクタイ、目線が明らかに合わないのでパッと顔を上げてみれば済んだターコイズブルーの瞳。あ、っと認識した時には、時すでに遅し。気づけば何時ぞやの時のように、ぎゅうううと抱きしめられていた。 


「姉さん!会えて嬉しいよ!!!」
「ん、あたしも嬉しいよ、ひーくんっ…」


あたしがぶつかりそうになった相手は、ひーくんだった。もはや定番のご挨拶のごとく、毎回会うたびに満面の笑みでぎゅっとしてくるひーくん。昔は毎日会うたびに、ギュッてしてあげてたのでそれが当たり前になっているのだろう。あたし自身、外の世界に出てきてから、そんな行動も年齢とともに控えなければならないと学んだわけなのだが、正直こんなにも可愛い弟相手がしてきてくれるなら、別にいいのかな、と思いたくもなる。



(でもお互いアイドルだから、さすがにまずいよなあ)



正直この笑顔に弱いあたしからすると、言いにくいことではあるが、言わなきゃいけないと葛藤を繰り広げる。どうやったら、傷つけず理解してもらえるか、と考えていたら後ろから、「ちょっとォ、ヒロくん!」って声がロビーに響く。

本人には言えないが、プンプンという擬音が似合いそうな表情で、ひーくんの後ろから姿を見せたのは藍ちゃんだった。藍ちゃんがやってくるや否、ひーくんは笑顔で藍ちゃんの方を向く。もしもひーくんに尻尾とか生えてたら。これがまた大型犬みたいで可愛らしい。


「こんなところで何やってるのォ!人前で突然抱きしめたりしちゃダメでしょ!…って水城優希?!」


「うむ!誰かにぶつかりそうになったと思ったら、姉さんだったからいつもみたいに抱きしめてしまったよ。姉さんは制服みたいな服装をしているね?可愛いよ!」
 

藍ちゃんは藍ちゃんであたしの存在に驚き、ひーくんはひーくんであたしの両腕をそれぞれ掴んだと思ったら、勢いよく引き剥がして上から下まで見てから褒めてくれた。と、いうより、忘れてた。


「ほんとだァ〜!!!なんかの衣装ですか?」
「あ、うん、そんなところかな」
「それで姉さんはどこに行こうとしてたんだい?」
「今自由時間みたいな感じになったから、ちょっと散歩でしようかな、って思って…」
「えっ、じゃあじゃあ!優希さんが良ければ、新しくできたスイーツさん行ってみませんか?」


ESから近いし、映えスイーツがあるらしいですよぉ〜!と藍ちゃんに、映えとはなんだい?姉さんも行こうよ!と訳もわからずノリノリのひーくん。正直、現役高校生と一緒にこの格好は、やや辛いものがあるが仕方ない。どうせ行く宛もなかったわけだし、可愛い2人からのお誘いなので、ご一緒させてもらうことにした。


(やったー!優希さんと一緒に行けるなんて、ラブ〜い!)
(僕も姉さんといれて嬉しいよ)

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