娘と雪



パジャマから蓮にセーターを着せて、靴下を履かせる。加えて冬の中でも一番モコモコの暖かいダウンを着せてあげれば、蓮は新しい服が珍しかったらしくペタペタと触る。着込んでいて動きにくいかもしれないけれど、仕方ない。



「蓮、おいで」



パパに呼ばれた蓮は素直にあたしの元からぽてぽてと動きにくい体を動かしてパパの元へと歩み寄る。服に着せられてる感がある蓮が目の前にくると燐はそのままギュッと蓮を抱きしめる。



「…んぅ?」
「蓮、不思議そうな顔してるよ〜パパ」
「んぅうう」
「蓮嫌がってるよ…」


最初こそパパにギュッとされて不思議そうにしていた蓮も、モコモコに着膨れした上にギュッてされて身動きが取りにくいのが嫌だったのか、腕の中から出ようと突っ張っている。だけど今のパパはそんなことはお構いなしで、こう呟いた。


「まじ、さっみぃ」
「んぅうううう」
「蓮ちゃん、どんだけ嫌なんだよ…」
















寒さも暑さも苦手な燐も厚手のダウンを着込んでしっかり前も首元も隙間ないようにボタンを閉めてファスナーを上げて封鎖する。そして靴を履いて玄関で蓮を抱っこしたまま、いざ外へ。



「蓮、ほら見えるか〜?」



玄関を開けて見える景色を蓮はどう捉えたのだろうか。パパに抱っこされて目をパチパチとさせながら、ただいま目の前に広がる景色を黙って見つめている。



「ぱぱ、ちろ」


空から降ってくるそれを不思議そうに指差して呟く蓮。そのまま目を追って手を伸ばす。手の届く距離にある柵の上のそれに触れた瞬間、蓮はびっくりしたように手を引っ込める。



「…ちめたっ!ぱぱちめた!」
「冷たいよな〜さみぃもんよ」
「ん、ちめたっ!」



蓮は初めて触れたものへの驚きはあるものの、好奇心の方が優ったようで再度自分で触れては冷たさに驚きの声を再度上げる。ちなみにパパはあまりにもの寒さに蓮を抱きしめて暖を取る。



「蓮、これは雪だよ」



蓮の触れたものは雪。真っ白な雪が今、積もり始めている。と、いうのも今現在まだ雪は降り続けているから、玄関の扉を開けて外を眺めるだけ。


「ゆい?」
「うん、雪ね」


空から降る雪は道路や柵、葉っぱなどありとあらゆるところに降り積もり始めており、路面に関してはコンクリートが見えるか見えないか、というぐらいになっていた。あたしは適当に塀や柵の上に積もった雪をかき集めて丸く握ってみせる。


「ほら、雪玉だよ」
「ちめたよ!あいしゅ?」
「あ、食べちゃダメだからね…!食べれません」


どうやら雪玉を見てかき氷とかアイスとかを連想したよう。蓮の前に差し出してみれば、アイスと言い始めたので食べれないことを言い聞かせた上で蓮は恐る恐る掴み上げる。おぉ…と感動の声を漏らす。



「蓮、こんなさみぃのによく持てンなァ…」
「ぱぱ!みーて!」
「つめたっ!見えてるしッ、蓮ちゃんよ、つめてェからパパのほっぺにくっつけんのやめてくんねェかな」



蓮は興奮したように次はそれをパパに共有しようとし始めた。パパは寒がりだ。しかも今日は特に冷え込んで雪が降っているため、空気も風もより冷たい。しかしそんなことを知らなければ関係ない蓮はグイグイとパパに見て!と主張する。その結果、見て欲しさに雪玉を頬にくっつけていて、あまりにもの冷たさにパパが驚いてしまう。せっかく、蓮を抱っこしながら寒い外にいることを堪えているのに可哀想だけど可笑しくてつい笑いが出てしまう。







「蓮、ほら雪だるま!」
「ママはよく作れンな…」
「冷たいけど楽しいよ、ねー蓮」
「ねー!」



小さな大きさの違う雪玉を二つ作って蓮に見せてあげれば、嬉しそうにしてくれる。だけどパパは寒さの方が勝ってるみたいで、なんとも言えない表情。

楽しいのに、と思いつつまた一つ雪だるまを作った。


「見て見て、雪だるまが並んで可愛いでしょ」
「まま!蓮の!」
「蓮も作るの?」
「ん!」



並べて見れば仲良しな二人組のように見てる。それを見た蓮も作ると言い始めたので小さな雪の塊を作ってあげてから手渡して作りやすいように手助けしつつ、蓮も一生懸命雪玉を作り始めた。蓮の小さな手で作った初めての雪玉は歪ながらも小さなもの。完成したら、もう一個作ると言うので作った雪玉を預かってまた一つ、少しだけ小さな雪玉が完成。

それを重ねてあげて蓮の作ったかわいい雪だるま。サイズも形もあたしの作ったものと違って可愛らしいそれを二つの雪だるまの間に置いてあげた。


「パパとママと子供みたいだな」


一人より二人、二人より三人。


「ふふっ、まるであたしたちみたい」


燐の言葉を聞いて仲良く三人で並ぶ姿が自分達と重なる。蓮もそれを嬉しそうに見ていたが、突然吹雪いた冷たい風と雪。目を閉じかけたけど、蓮が心配で辛うじて開けた瞼を細めながら蓮を見たら、「んぅうううう」と呻きながらなんとも渋い表情で堪えているのがおかしくて不覚にも笑ってしまった。



「寒いから、中に戻ろうか」
「んぅううう」
「蓮、すっげェ顔してんな」



寒さでテンションの低かったパパもこれには笑うしかない。だって、目を細めて可愛らしくない表情がおかしくて可愛すぎたから。だからあたしはスマホで写真を撮り、そのまま三人で暖かい部屋へと戻る。


明日には吹雪も落ち着いて改めて雪で遊べたらいいなと思いながら。

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