憧れの学生服2



「優希ちゃん、できたわよ」


もし何か絵文字とかイラストとか何かつけられるなら間違いなく語尾についているものはハートだなと思った。
ニューディの事務所に行って早々に出会ったのはナルちゃん。と、その両手には何かを持っている。あたしに見せるように。それは何やら紺色のブレザーのようなものだった。すごい笑顔で、それはもう楽しそうな嬉しそうな笑顔で見せつけるように持っていたため、ひらりと袖が靡いた。


「…どこかの制服?」

 
正直見覚えがない、紺色のブレザー。できたわよ、って、どういう意味だ?と思っていたら、ナルちゃんは驚いたような表情で口を開く。


「違うわよ、Knightsプロデュースの制服よ」



Knightsプロデュースの制服…???


初耳ナンデスケド。



詳細を聞いたら、こうだった。先日、打ち合わせ中に学生服をいいなと思わず口にしていたあたし。その発言を聞き逃さなかった泉くんを始め、Knightsのみんなが話に乗っかり盛り上がっていたところ、あんずちゃんの計らいもあって夢ノ咲学院の制服を着させてもらったあたし。どうやら、その間に話というのがKnightsプロデュースの制服を作ろう、というものだったのだ。私服の高校も多いらしく、そんな人たちも楽しめるし、制服を着る学生さんだけじゃなくても、なんちゃって制服で遊園地に行ったりする人もいるので、そういう人を狙ってのものらしい。まあ、Knightsにはモデル組のお二人がいるので、ファッション関連でのアイディアは正直ありだと思う。

アリだと思うんだけど、


「…で、試作品ができたので着てみて欲しい、ということ…?」
「そういうこと。俺もなるくんも、女子のは着れないでしょ」
「ふふっ、あたしたちがいろいろと考えて作ったから可愛いわよ〜?早速着てみて!」


気づけば泉くんもいて、呆れたように正論を呟く。そうですね、モデル組でも女子の学校がいけるわけではないもんね。ナルちゃんに、あれよあれよと持たされるプリーツスカートやブレザー、リボンたち。ご丁寧にローファーまで、準備されていたので、何を言っても意味はなさないと思ったので、とりあえず言われるがまま着替えることにした。











濃紺のブレザーには左胸ポケットのところにKnightsのロゴピンバッジ。水色のシャツ、濃紺、青、グレーなどで彩られたプリーツスカートに似た配色でデザインされたストライプのリボンとKnightsのロゴがワンポイントで入ってる紺ソックスとローファー。カーディガンは橙、群青、赤、黄、黒の5色があり、こちらもワンポイントでKnightsのロゴが入っていた。種類もあったので、どれを着るべきか悩んだがあたしはこの中で目についた橙色を選んで袖を通す。


「こんな感じでいいの…?」
「あらァ、可愛いじゃない!」


すごくこのやりとり、デジャヴだなと思った。着替え終えて、2人のところに戻れば、ナルちゃんはキャッキャと両手を合わせてキラキラした目をしている。一方、泉くんは前回同様、上から下までチェックするように見てくるから、正直落ち着かない…。しかも何やら、面白くなさそうな表情をしている。


「ちょっと〜、カーディガンそれにしたの?こっち着てみてよ」


そう言いつつ、泉くんが手にしてるのは先程悩んだ末に選ばれなかった群青色のカーディガン。あたしはファッションに関しては、されるがままな部分があるので、言われた通り来たばかりのブレザーを脱いで着替えようとしたら、ナルちゃんが後ろから両肩に手を置いて「やだ〜」なんて言いつつ笑っている。


「泉ちゃんったら、自分のが選ばれなくって拗ねてるの?優希ちゃんが選んだのレオくんのだものね」
「あ、やっぱりこれってみんなそれぞれモチーフだったんだ」


どうやら、あたしが着ていたのはレオくんモチーフのカーディガンだったようだ。それで、群青色は泉くんで間違いなさそうだ。ちなみに泉くんは、「うっさい」とナルちゃんにおこである。 


「群青色も悩んだんだけど、全体的に青統一になるから、差し色の方がいいかなって思ったんだけど…」
「せっかく5種類あるんだから、全部着てみてもらわないといけないでしょ〜?」


あぁ、そういうことか。と、思ったが、いやでもさっき選んだ色に関して面白くなさそうだったから、多分ナルちゃんの言う通り図星もありそう。って思ったけど、あたしはあえてその言葉は飲み込んだ。



結局あれから、あれよあれよと全てのカーディガンに着替えさせられ、なんなら、リボンだけじゃなくてストライプのネクタイも出てきて、ネクタイに付け替えられたり、もはや着せ替え人形だった。着替えるたびに、スマホで写真を撮られて、全身で撮るときもあれば、何故かナルちゃんはあたしと泉くんと自撮りでピースを促して撮るものもあったりもして、本当に何をしてるんだと我に帰る時がある。


「優希のおかげで資料も取れたし、助かったよ」
「そうね、割といい感じだし、あとはもうちょっと手を加えましょう」


うん、ただ単に着せ替え人形してた訳ではなく、ちゃんと商品としての見直しもしてくれていたようだ。聞いた話によると、セット販売とそれぞれのパーツ販売を考えているらしい。Knights、メイク道具の次はファッション…さすがだなって思う。


「あぁ、その服のままでもうちょっと過ごして」 

うん、さすがだなって思ったのを撤回したい。泉くんがサラリと言った言葉にあたしはフリーズする他なかった。


「え、と…冗談…?」
「ハァ?俺が冗談とかいうと思ってるわけェ?」


泉くんは泉くんで、何言ってるんだコイツ、みたいな顔している。泉くん、辛辣なんだけど、なんだかんだ優しい部分を知ってるから、あたしも物怖じしないのが逆にいけないのかなと思ってしまう。でも、言わないと泉くんの言いたいことわからないんだもん…。



「ふふっ、泉ちゃんったら言葉が足りないもの。それじゃわからないわよ。優希ちゃん、せっかくだからその格好でもう少し過ごしてみてちょうだい?せっかくの制服姿、楽しんでみて」


ナルちゃんはふふっと笑いながら、話してくれた。どうやら、先日の話のことを気にしてのことらしい。正直一人でこんな格好をするのも恥ずかしさが勝るが、泉くんたちの配慮だろう。泉くんは、ふんってそっぽを向いてしまったが、怒ってはいないようなので大丈夫だろう。まあ、誰かに見られたら次の仕事の衣装で、とか、撮影があってって言って誤魔化せばいいかと自分の中でケリをつけた。

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