2nd Xmas



※娘と2回目のクリスマスの年

シャンシャンシャンシャン


テレビでも街中でもお店でも聞こえてくる鈴の音色。そしてキラキラと輝く電飾たち。



「見て、蓮。サンタさんだよ」
「んぅ?」
「サンタさん、こっちはトナカイだよ」



キラキラ光る電飾は星や月、花だったり、大きなモミの木に飾られていたり。そのそばにはサンタや赤い鼻のトナカイだっている。初めて見る景色が全て新鮮である蓮は食い入るように見つめているだけ。




「蓮!おまたせ!」
「んーぅ」
「ひーくん、おつかれさま」
「姉さんと蓮はなにを見てたのかな?」
「あう」



ひーくんがせっかく来たのに蓮の眼中には入らない。代わりに返事をしたけれど、ひーくんは動かない蓮の方が気になったようで覗き込むように蓮を見つめる。それでも無意識に声を漏らす程度で動かない蓮もなかなかの集中力だ。



「イルミネーション見てたんだよね、」
「クリスマスだからね!蓮は何が欲しいのかな」
「ふふっ、蓮にはまだサンタさんとかはわからないかな〜?」



そう聞こえていないであろう蓮に問い掛けたら、んーぅ?って不思議そうな表情の蓮と目が合った。それが何だかおかしくてあたしはまた笑ってしまった。







「ただいま〜」
「ま〜!ぱぱー!」
「お邪魔するよっ!」
「おうおう、おかえり」
「すごーい、準備してある…!」


ひーくんと一緒に家に戻って来てみれば、出かける前までなかったものがあちこちに準備されている。たとえばそれは、さっきまで見て来たものには劣るけれどキラキラ輝くクリスマスツリーだったり。



「はなちゃ」
「お花、きれいだね」
「まま、みーて!」
「蓮もキラキラしちゃうの?」
「ん!」


蓮はもちろん、家になかった真新しいものに興味津々。たたたっとクリスマスツリーのそばに行ったと思ったら、飾ってある飾りを見て指を差したり。かと思えば何か思い立ってたたたっとまたいなくなっては戻ってきたり。取って来たのがリングライトで指にしっかりつけてるあたり、ホント蓮のいいおもちゃになってるなって実感する。ファンの子たちが見たら、何とも言えない気持ちになりそうだけど。



トナカイのカチューシャつけたニキがご飯を持って来たり、サンタの格好した一彩がやってきてサンタさんだよ!って言っても、ひちゃ!って言われたり。


「しゃっしゃっしゃっ!」
「シャンシャンシャンシャン!」


ひーくんが買ってきたクリスマス用の鈴を手にしてシャンシャン音を鳴らしていたり。それをひーくんも一緒にシャンシャン言って体を揺らしているのがまた可愛い。



「はいはい!ご飯できましたよっ!」
「にい!しゃっしゃっ!」
「なはは〜っ!シャンシャンしてるんすか?」「しゃっしゃっ!」
「はいはい、次の料理持ってくるっすよ!」
「んぅ!」
「あ、ちょっと!蓮はこっちにいなさい…!」


料理を次々にテーブルに並べてくれるニキくん。そんなニキくんにも見てほしいらしくて、蓮はシャンシャン鈴を鳴らしながらニキくんの足元をドタバタ。ニキくんも相手してくれると言っても今はご飯の準備中。サラリと交わしてキッチンに戻ろうとすれば、蓮もちゃっかりついて行こうとするから、なんとか腕を掴んで止めに入る。



「んぅ!にい!」
「はいはい、ニキくん準備してるから邪魔しちゃだめだよ」
「んぅ…ぶぅ」


うん、不貞腐れてもダメなものはダメだからね。















子供用の椅子に座らせて、テーブルには色とりどりの料理を並べて、お皿とフォークなども出して準備完了。蓮専用の小さなお皿に、食べ物を取り分けて食べやすいようにしてあげれば、フォークを使って今では自分で食べることをするようになった。


カチャカチャ、

モグモグ、


「あーむっ」
「蓮、美味しい?」
「んぅううう!」
「美味いよなァ、ほっぺた落ちそうってか?」
「んぅううう!」


今もおぼつかない、というかまだまだ雑さのある動きでフォークを扱い、食べ物を指して口に頬張り入れる。口の周りをベッタベタにして食べるから、洗い物は大変だけどこれも成長過程の一つなので仕方ない。むしろいつだって美味しそうに食べる姿はやっぱり可愛いものだ。今だって美味しさをめいいっぱ表現するために両手でほっぺたを覆いながら首を左右に振っている。



「蓮ちゃん、美味しそうに食べてくれるから嬉しいっすよ〜!」
「椎名さんのご飯は実際に美味しいからね!」
「料理人にとって嬉しい一言っす!」


今日はみんなでクリスマスパーティー。HiMERUくんとこはくんは仕事を終わり次第参加予定だけれど、蓮がいるので先に食べていてほしいという言葉に甘えて一足先に頂いていたりする。大人たちだけなら、待ってても良かったんだけどね。



「蓮」
「あい!」
「蓮は欲しいものあるかな?」
「んぅ?」


食事もある程度進んだ頃、ひーくんが蓮の名前を呼ぶ。口の周りをベッタベタにした蓮は自分の名前を呼ばれて元気よくお返事を一つ。最近、上手にしっかりと返事ができてて偉いなぁと思いつつ見守っていれば、ひーくんは蓮に何が欲しいかと尋ね始める。どうやらさっきした質問の通り、何かプレゼントすることを諦めてなかったみたい。



「おいおい、まだ蓮に物欲なんざわかんねぇっしょ」
「むっ!わからないよ!ね、蓮は何が欲しいかな?」
「ひちゃ、じゅーちゅ」
「うむ!ジュースだね!」
「いやいや、それは今欲しいものだから」



あたしが思ったことは燐も同じだったみたい。蓮の年齢で物欲なんて分かりっこない。例えこれが欲しいと言っても、それはその瞬間に目のついたものぐらい。だから、当てにならないその言葉。ほら、案の定今欲しいもの聞かれて空のプラスチックのコップをカンカンとテーブルに打ち付けておかわりを頼み始める。それなのに、ひーくんも素直に納得しちゃうし、話が噛み合わなすぎてそれがおかしかった。行儀が悪いから、とコップを打ち付けるのをやめさせて、ジュースを注いであげれば、ゴクゴクとのいい飲みっぷり。


「ぷはっ!」
「いっぱい飲んだね〜」


もはや、酒飲みの一杯目みたい。これはこれで微笑ましいものだ。一気に飲んで減ってしまったコップにまたジュースを注ぎ込む。しかし、蓮の欲しいものかぁ…。


「あ、そうだ。蓮とうさぎちゃんのお洋服とかどうかな」
「んぅ?」
「蓮、うさぎちゃんと同じおべべ欲しいー?」
「うーちゃ!蓮!ちいよ!」



蓮が納得して欲しいと言ってくれそうなもの、それで行き着いたのはウサギのぬいぐるみとお揃いの洋服。まあ、行き着いた、と言ってもたまたま視界に入って思いついただけなのだけれど。蓮も最近は可愛いものの判別がつくようになったこともあり、お気に入りのぬいぐるみのためのものなら、しかもそれが洋服だと言えば欲しい一択だ。ウンウンと肯定する姿をひーくんも見て嬉しそうに笑ってる。



「洋服だね!わかったよ、藍良にも聞いてみて可愛いの準備するね」
「ん!うちゃ、やたね〜」
「はいはい、一回口の周り拭こうね」
「んーぅっ!」



ひーくんの言葉を聞いて嬉しそうに笑う蓮。

視界の端で人影が見えたから、そろそろかなと目配せさせた。

口の周りを拭いてから、ウサギのぬいぐるみをギュッてする。


「そういやぁ、腹減ってンじゃねぇかな〜サンタさんも」
「サンタさん来たらご飯食べさせてあげないといけないっすね」


燐とニキくんのわざとらしい会話も始まって、ひーくんなんてすっごいソワソワ。

だけど、まだ蓮は何も気付いてない。


さてこの後、サンタさんの登場に蓮が驚いて逃げ出すまで後少し。

[ ]









×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -