あまなつ様リクエスト



※あまなつ様リクエスト
※燐音視点




優希と蓮を連れて戻ってきた。ずっと待たせていたアイツらにも会って、副所長くんにも挨拶してよ。ユニット活動再開、リーダー復帰ってこともあって、いろいろ確認しなきゃいけなかったりもすんだけどよォ…、まあ容赦なくスケジュールを組まれてた…。蓮、まだちっせェんだけど、と思っても自分でこの仕事を選んだんだし仕方ない。優希も気にしないで仕事復帰してほしいって言ってたからなァ…。



日々、復帰のための新曲のレコーディングや音楽番組の出演も決まってるから、ダンスレッスンもやったりして。朝起きた時だって、夜帰ってからだって、寝ている蓮ばかり。スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている蓮を見るたびに、一緒に遊びてぇなァ…なんて思ってしまう。





“Crazy:B活動再開”

“天城燐音、復帰!!”



ネットやニュースでは既に俺の復帰、グループ活動の再開の情報が流れていた。


自分が決めたことであり、後悔はないけれど、私事のために活動を休止した今回、正直周りの反応はどうなのか不安はある。


自分が昔、やった過去は拭えないし、拭いたいわけでもないけれど、自分自身が万人受けをするようなことをしていないのは重々承知だ。それを差し引いたとしても、戻ってきた今、自分が一旦離れることになったあの時と同じだけの人たちが待ってくれているだなんて確信はないし、確証もないのだ。


人の気持ちは変わりやすい。


絶対はあり得ない。










今日はラジオ収録。

しかも普通のラジオ収録ではない。


復帰イベントを兼ねたラジオ収録。


イベントスペースにて新曲披露という内容だ。




元々やっていたラジオ番組も、活動休止を理由に一旦終了していたため、これもまた久々の再開。早めに現地入りして、久々のためか緊張する気持ちを落ち着かせるために、ガラにもなく深呼吸をして目を閉じた。



「お疲れ様でーすっ」

「なんや、燐音はん早かったなぁ」



どのぐらい時間が経ったかわからない、少しだけかもしれないし、数十分経ったかも、その間にやってきたメンバー。本人たちには言わないけれど、いつものテンションが相変わらずで緊張が少しだけ和らいだ。




「天城、どのぐらい前に来たんですか」

「アー…、確か」




メルメルに聞かれて、時計を見て時間を確認する。あぁ、と思いながら来た時間を伝えれば「そうですか」と何か意味深な反応。「ンだよ、」と聞いても「いえ、なんでもないですよ」と含み笑いを浮かべるだけだった。







控室で衣装に着替えて、鏡の前で何度も自分の口を動かし、いろんな表情を確認する。ンなことをしてたら、ニキに「燐音くん阿呆ヅラっすね」とか言いやがったから、頬を思いっきり引っ張っといた。




開始時間になって、もう一度深呼吸。

メルメル、こはくちゃん、ニキ、それぞれ肩を叩いて「ウッシャ!行くかっ」と声をかけてイベントスペースへ。





場所はさすがコズプロが用意しただけあって、人の集まりやすいところで人の声が自然と耳に入ってくる。スタッフの誘導によって着いたそこに立てば久々のライトを浴びたこともあって、一瞬だけ目が慣れずに思わず細めてしまう。



こんなんじゃいけねぇと思って目を開いた時、その目の前の光景に息を飲む。



「天城、」



言葉が出ずにいた俺に気付いたメルメルが横から声をかけた。




「挨拶、ちゃんとせなあかんで」




こはくちゃんが含み笑いを浮かべてそう言った。




「燐音くん!ほーらっ、みんな待ってたんすからね!」




まるでファンの代弁かのように、ニキが呟いた。



目の前に広がるのは、今日俺たちのために集まってくれた人たち。中には、たまたま居合わせて立ち止まってる人たちもいるかもしれないけれど、今目の前にいる人たちは違う。



“燐音くん、おかえりなさい”

“祝クレビ活動再開”

“燐音くん、パパおめでとう!”



ファンの人たちが作ってくれたであろう弾幕や色とりどりのうちわ。さっきまで、不安だった気持ちが一瞬にしてぶっ飛んた。なんなら、目頭が熱いのは気のせいじゃないだろう。



あぁ、こんなにも待ってくれている人たちがいたんだ。

一度は離れても離れなかった人たち。


自分がどれだけ愛されていたのかを実感させられる。



ふと、視線に入ってきたのは帽子を深く被った女性。その腕には子供を抱えていて、俺はそれがすぐに誰かわかった。


俺が見てることに気づいたのか、ふふっと笑みを浮かべて子供の手を軽く掴んで手を振ってくる。



あぁ、優希と蓮だ。



ありがとな…。


俺は、思いっきり肺に空気を吸い込んでマイクを握る手に力を入れた。



「みんな、待たせたなっ!」



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