憧れの学生服



Knightsのみんなとは、レオくんや泉くんがまだ夢ノ咲学院の生徒だった時からの付き合いである。一番長いのはレオくんでその次に泉くんと凛月くん、それからナルちゃんで司くん。1年経つことに、ネクタイの色はもち、ん、みんなの背丈って見た目もそうだけど、雰囲気も段々と大人びてきたなあと感じる。


そう、彼らの成長を感じる日々なのだけれど、



「やっぱ制服って憧れちゃうなあ…」
「何、優希は制服着たいわけぇ?」 



ボソリとつぶやいた声を泉くんは聞き逃さなかったようで。眉間に皺を寄せながら、不可思議なものでも見るような顔であたしを見てくる。そんなあたしといえば、両掌に顎を乗せて机に肘をついて凛月くんやナルちゃん、司くんを見ながらボンヤリとしていた。


「だって…制服って学生じゃないと着れないじゃん…」


そう、あたしが見ていたのは正確にいうと3人の制服姿である。それぞれカーディガンを着ていたり、ネクタイの色だって学年によって異なるわけで。着こなしだって様々。確か学生だった頃のレオくんはパーカーを着てたなあと少し前の彼の姿が頭を過ぎる。


打ち合わせ中だというのに、関係ないことを呟き始めてしまったのはあたしだが、凛月くんは机に上半身をダランとぶっ潰して寝そべってるし、レオくんは相変わらず五線譜に何やら作曲中で、いつものように自由な打ち合わせになっていた。


「優希は学校行ってなかったからねぇ」
「学校ってのも行ってみたかったし、制服も着てみたかったな…って今更すごく思う」
「じゃあ、今からでも一緒に通う〜?」
「えーそれはちょっと」


気づけば凛月くんも起きていて、ニヤニヤしながら話に入って来てる。起きてたんだ…って思ったし、今更学校って行けるとしても正直年下の子達と通うのはちょっと辛いものがある。凛月くんは留年ってので一個下の子達と一緒にいるみたいだけど、それはまた別問題。

はぁ…とため息をついて、今日はKnightsのプロデュース商品企画についての話し合いのはず。話の流れを戻さなければと思い、手元にある資料に目を向けた時だった。「制服着るだけなら、できますよ?」と突然女の子の声がした。声の聞こえた方を見てみれば、いつのまにか会議室の入り口にはあんずちゃんがにっこりと笑みを浮かべて立っていた。












何故こうなってしまったのか。


「えっ…と…こんな感じでいいのかな…、?」


あれから、あんずちゃんと一旦会議室を後にしたあたしは、しばらくしてまた会議室に戻ってきた。いろいろ落ち着かなくて、気恥ずかしくて会議室の入り口扉から上半身だけ出してみるが、戻ってきたあたしに気づいた泉くんに容赦なく腕を引っ張られて全身お披露目状態になる。



「あらァ、似合ってるじゃない!」
「優希ならまだ学生って言われてもいけそうじゃん」
「まぁ、いいんじゃない」


上から順番に、ナルちゃん、凛月くん、泉くん。3人に上から下までじっくり見られる、正直居た堪れない…。しかも2人はモデル組だし…。

さっきの会話をどこからかわからないけれど聞いていたあんずちゃんが「制服、良ければ着てみますか?」と言ってくれたのだ。それを聞いて、一瞬でも悩んでいたあたしをさて置き、何故か周りのみんなが「いいじゃない」「着てみなよ」「はい決まり〜」なんて流れで着る流れに。学校帰りに来ていたあんずちゃんがその制服あるとのことで貸してくれたのだ。ちなみにあんずちゃんは今持参していたスーツを着ている。



「優希お姉さま、可愛らしいですよ」
「司くん、ありがとう」



3人よりも素直に照れてしまう言葉をかけてくれた司くん。少し前まで、末っ子ちゃんって感じで可愛らしかったのに、今やお兄さんたちにいろいろと扱かれて、この子が一番成長したなと思う。


「カーディガン着てるからわからないけど、ちょっとサイズあってないんじゃない〜?」
「あんずちゃんのだからね」
「ブレザー前締めたらキツそう〜」
「凛月くん、その発言危ない気がする」



ズケズケと言いたい放題な泉くんと凛月くん。失礼な、もしくはグレーゾーンなことしか言わないから、勘弁して欲しい。あたし自身、スカートの丈の短さにちょっと落ち着かない…。



「あんずちゃんの方が身長的にも体格的にも小柄だから、優希ちゃんに合わないところがあるのは仕方ないんじゃないかしら」
「優希の方が胸もあるもんねえ」
「凛月先輩!それはladyに対しておっしゃってはいけないです…!!」



ナルちゃんは上手くフォローしてくれてたのに、凛月くんがアウトな発言してきたのでもう気にしないようにしよう。
頭を抱えたくなるけれど、このままじゃ埒もあかないだろうから、打ち合わせに戻ろうと提案したら泉くんに「それなら、ある程度固まったから」なんて言われてあたしは驚いた。今、なんて…?



「優希が着替えに行ってる間にいい案が出たって訳。これからデザイン依頼出してって感じだから、優希はとりあえず今日はもういいよ」
「え、っと…今回あたし何もできてない…」
「むしろ優希がいたから、出てきたからいい仕事したね〜」
「くまくんなんて、何にもやってないでしょ〜???」
「ふふっ、優希ちゃんにはまた改めて今日の続きをお願いするわぁ!」


全然ことが理解できないまま、ナルちゃんの笑顔とその一言で何故かお開きになってしまった。



(なんだなんだ〜???優希、夢ノ咲に通うのか〜?)
(レオくん…その話はだいぶ前に終わってるし、通わないからね…)

[ ]









×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -