学パロ3
高校2年燐音×高校1年優希
入学式翌日
ホームルームを終えて、今日は帰宅の時間。
帰り支度をしていれば、後ろの席の子たちに声をかけられる。
「ねえねえ、優希ちゃんはどこ中?」
「水城さんってさ」
気づけば、何故かあたしばかり質問攻めにあってしまった。どうやら、割と同じ中学上がりの子達が多いらしく、あたしみたいなのは物珍しいのかもしれない。
中には男の子も混ざってたりもして、どうしようってなる。男の子…結構ぐいぐい話してくるからなあ…。あんまりこうやって話す機会がないから、どうすれば良いのか。
「ねえ、水城さ」
「はーい、お疲れちゃーん」
男の子の一人が、あたしの手を掴んで何かを言いかけた瞬間、後ろから誰かに抱きしめられる。突然のことに周りは一瞬にして動きが止まる人、声をあげる人とさまざまだ。
声と感覚を知ってるあたしとしては、なんでここに…?という疑問が沸々と湧き上がる。
「優希、入学おめでとちゃん」
「うん?昨日も言ってたね、燐」
「昨日は昨日、あれは家に帰ってきてだったからなァ。高校の制服似合ってるじゃん」
「燐、昨日も見せたのに」
あたし含めて、この教室にいる人たちからすれば初めましてであり、先輩にあたる燐が当たり前のようにいた。場の雰囲気はこれっぽっちも気にしてないのか、ニコニコと笑みを浮かべて、あたしの頭を撫でる。
「ここ一年生の教室だよ…?」
「ン〜、わーってる。優希も入学したしなァ、こういうのは早めにやンねーと」
はて、なんのことを言ってるのだろう。変わらずニコニコしてはいるが、段々その表情は含み笑いに見えてくるのは気のせいではないだろう。燐は何をしたいのか、わからずにいれば突然あたしの胸元をに手をかける。
「へっ」
周りから短い驚愕の声が上がったのが耳に入る。正確には燐が手をかけたのはあたしの胸元についた制服のリボンで、気づけば首から外されて彼の手の中に。
「燐…?」
「優希がつけるのはコッチ」
するりと自分がしていた制服のネクタイを緩めたかと思えば、そのまま解いてあたしの首にかける。そして後ろから器用にネクタイを結び直して燐からあたしに変わってネクタイはまた本来の着用スタイルに元通り。
「リボンも良いけど、今日からこっちな」
優希は俺っちのだから、ってまるで語尾にハートがついてそうな感じで呟く燐。どうせ周りにはいつかバレるとは思ってたけど、まさかこんな形で燐の存在も燐との関係も公になると思ってなかったあたしとしては、完全に思考回路はショートしている。と、いうよりは考えても何も浮かばない。
「なんだ、みんなまだ帰ってなかったのか…って。天城、ここは一年の教室だぞ」
完全に周りのクラスメイトとの間に微妙な空気感が生まれてしまって、どうしようと思っていれば教室の扉が開いて入ってきたのは先程までいた先生。しかも担任の先生だったし、たまたま戻ってきたようで助かった。
「知ってまァす」
「しかも、なんだ天城…一年困らすなよ…」
「ン〜、センセー聞いてよォ。俺っちの可愛いカノジョが入学してしたンだよ〜」
「…あぁ、水城が」
うん、助かったなんて気のせいだった、なんで先生も全てを察して遠い目をしてるんだろう。それ以前に入学して早々制服の着方を変えててまずいのではとも思ったけど、それさえ何も言われない。
燐…どんな高校生活送ってたんだろ…。
こうして入学して早々、あたしには2年に彼氏がいることが一瞬にしてバレてしまった。そのため翌日、クラスメイトから質問攻めになるとまでは現状、思ってもみなかった。
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