娘とSwitch



※逆先視点
※娘3歳ぐらい


ニューディに行く途中の廊下で何処からか聞こえて来るのは子供の声。それはなんだか悲しそうな声だった。


「んぅ…ん…」


声の主はうちのお姫サマのところの一人娘のヒメちゃん。いつも姫サマと一緒にいるのをよく見かけるし、最近では一人で歩いてよく喋るようにもなったネって話してたばっかりなんだけどネ。今のヒメちゃんはいつもと違って浮かない顔をしている。



「ヒメちゃん、どうしたノ?」
「なっくん、」


ヒメちゃんはボクを見るなり、目をウルウルさせて今にも泣き出しそうだヨ。困ったネ、もしかして迷子カナ?


「ヒメちゃん、ママはどうしたのカナ?」
「蓮ね、うきちみてたらね、ままおしごといくっていってね、いっちゃってね、蓮、ままのところいこうとしたら、ままいないの」
「じゃあ、ヒメちゃんはママを探してるんだネ?」
「んぅ、なっくん…、ままどこ…」



ヒメちゃんの話から察するに、何かを見てたら姫サマが仕事行ったようだネ?その姫サマ探しに行ったけど、って感じかナ。仕方ない、ヒメちゃんも大事なニューディのお姫様だからネ。



「ヒメちゃん、ボクと一緒においでヨ」


ボクはそう言ってヒメちゃんの手を握った。







「ってワケで、ヒメちゃんも一緒だヨ」
「HaHa〜!いらっしゃい!蓮ちゃん」
「そらくん〜」


ヒメちゃんを連れてニューディに戻ってきたワケだけど、最初に事務所内を一巡して確認してもうちの姫サマの姿はなかった。手を繋いでいたヒメちゃんがそれを察して、んぅ…と悲しそうな声で俯くから、コッチに連れてきちゃったヨ。ソラとヒメちゃんは仲良しだからネ。ソラに駆け寄って抱きつく姿は二人ともとっても可愛イ。


「そらくん、ままいないの」
「そうなのな〜、だから蓮ちゃんは悲しい色をしてるな〜?じゃあ、宙たちと一緒に待ってましょ〜!」
「ここなラ、姫サマも戻ってくるはずだからネ」
「うん!蓮、なっくんとそらくんといるよっ」


良かっタ。ソラのおかげでヒメちゃんも元気になったようで、やっと少しだけ笑ってくれたヨ。


「はーい、蓮ちゃん、ケーキ食べますか?」
「たべる!つむつむ!」
「センパイ、そのケーキどうしたノ」
「蓮ちゃんが来てるって聞いて買って来ちゃいました」



姿を見ないなと思ったら、ニコニコとケーキの箱を持って来たセンパイ。ウン、ボクの話聞いてタ?ヒメちゃん、迷子なんだけド?ケーキ買ってきたって呑気なこと言わないでヨ、そう思ったけど、センパイがケーキ買ってきたって言ったらヒメちゃんも喜んでたし、まぁ結果的には良かったとしよウ。



「蓮ちゃんはどのケーキが食べたいですか?」
「蓮ね、いちご!」
「わかりました、いちごのケーキを出しますね」
「いちごー!」



ヒメちゃんはバンバイして喜びを表現し、目の前にケーキを出してあげれば、「いちご!」と言いつつツンツンと突っつく。ヒメちゃんはいちごが好きって覚えておこウ。



「蓮ちゃん、ジュースは飲みますか?」
「のむ!」
「ではジュースも準備しますね」
「ジュースもあるなんテ。準備がいいネ」
「はい、蓮ちゃんが来た時ように準備してるんです」


センパイの質問に勢いよく答えるヒメちゃん。ホント、可愛いナ。そしてセンパイは準備の良過ぎル。ニューディによく来るからってのもあるかもしれないけド、来るたびにみんなに愛でられてホントに扱いがお姫サマだね。



「ヒメちゃんはホントにうちの姫サマに似て可愛いよネ」
「HaHa〜!ギャンブルのおに〜さんと見た目は似てるけど、中身は全然違うのな〜!」
「んぅ?」
「パパとママのことは好キ?」
「すきー!」


ボクもソラもヒメちゃんが可愛くて仕方ないんだヨ。目が離せないシ、ついつい見ちゃウ。ケーキをモグモグと頬張る姿もまたカワイイよネ。素直にすくすくと育つヒメちゃんは癒しだヨ。


「やっぱり、ヒメちゃんは泣くより笑ってる方が良いヨ」
「蓮、ないてないよっ!」
「そうだったネ」
「HiHi〜!蓮ちゃんは今とてもキラキラな色してるな〜!キレイな色〜!」
「そらくん、蓮きらきら???」



ヒメちゃんがソラの言ってることをどう理解してるかわからないけれど、ソラと顔を見合わせては楽しそうにしたいル。ソラの言う通り、気持ち的にも落ち着いたんだろうネ。ママがいなくなって泣きそうになってたことモ、今ではもう忘れてしまってるようだシ。


「あ、優希さんから連絡来ましたよ」
「姫サマはどこに行ってたのかナ?」


良いタイミングだっタ。姫サマからセンパイに連絡が来た。と、言うよりはセンパイが姫サマに連絡しておいたらしイ。スマホでトークの内容を確認するセンパイは苦笑いを浮かべているから、何かあったのかモ。



「蓮ちゃん、動画に夢中で声かけても動かなかったから、買い出しに行ってたみたいですよ」
「あァ、ウキチがどうこう言ってたからネ」
「それを勘違いして、事務所に来たと思ったようですよ。優希さん、すぐ行くって書いてありましたけど、ケーキ食べてるんで大丈夫ですって言っておきました」
「さすがヒメちゃん。ママが行くところはここってわかってるのが偉いネ」


迷子になってたけド。それでもよくわかってル。今頃、ヒメちゃんがいなくて姫サマは慌ててただろうナ。もしかしたらまた泣いてたかもしれなイ。それでセンパイからの連絡があって安心してる頃かナ。


「宙の一口あげるな〜!」
「じゃあ蓮のもあげる!」


互いのケーキを一口ずつ交換するヒメちゃんはそんな母親の心配なんて知らなイ。パクりと食べたケーキを美味しい〜!と頬っぺたに手を添えてニコニコとしている様子が平和そのもノ。見てるこっちまでニコニコしちゃうネ。


「なっくんもあーんしよ!」
「一口くれるノ?」
「うん!なっくんのもちょーだい!」


魔法を使わなくたって笑顔にしてくれル、ヒメちゃんはボクたちニューディの小さなお姫様だネ。

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