娘と甚平〜前編〜



ぽてぽて…


「ぱっぱ!」
「ア?なんだよ、」
「ぱっぱ!かわいー?んぅ?」



思わず、クスッと笑ってしまう。
さっきまで、一緒にいて着替えさせた蓮。昨日買ったばっかりのそれをずっと楽しみにしていた蓮は起きて早々、その服を持ってきた。なので、着替えさせてあげれば満足したように、ぽてぽてと駆け出す。向かった先に燐のところで、燐の目の前に立つなり可愛く首を傾げながら今の格好を見て見てと行動を示すあたり、女の子だなあ…と実感する。



「カワイイよ、蓮」
「んぅ!」
「どうしたんだよそれ、ママに買ってもらったのか、?」
「あい!」



パパにも褒められて嬉しそうな蓮はパパからの問いかけに大きく手をあげて肯定する。



「買い物行ったら見つけたんだよね、夏っぽくていいかなって思って買っちゃった、甚平」
「カワイイの売ってたんだなァ」



ぴょこぴょこと嬉しそうにする蓮を横目に、燐の質問を蓮の代わりに返した。蓮が来ているのは、女の子用の甚平。りんごがあしらってある可愛らしい赤ベースのデザインだ。

蓮と言えば、パパに可愛いと言ってもらえて満足したようで、次に向かったのは横たわった状態でいたウサギのぬいぐるみの元へ。抱っこするなり、ウサギのぬいぐるみを自分の方へ向けて声をかける。



「うちゃ、かわい〜?んぅう?」
「ウサギチャンもカワイイって」
「んーう!」


やっぱり褒められて嬉しい蓮は、緩みきった笑顔を浮かべて思いっきりウサギのぬいぐるみを抱きしめた。















 







 
「お邪魔しまーすっ」
「にーい!」


玄関から聞こえてくるニキくんの声。そう言えば、燐が呼ぶって言ってたなと思っていれば、声を聞いた蓮がドタバタと玄関へ真っしぐら。蓮のことだから、ニキくんにも見てもらいたいんだろうな、と思ったらこれまた自然と頬が緩む。



「蓮ちゃんこんにちは!」
「にい!かわいー?」
「ん?蓮ちゃんはいつでも可愛いっすよ〜」
「ぶう…」



我が家に遊びに来たニキくんと蓮の会話が廊下から聞こえて来る。ニキくんはいつも通りの対応で間違いではないんだけれど、蓮にとっては求めていたものと違うため、あからさまに不貞腐れた声がした。



「あれ、蓮ちゃん…?」
「バッカだなァ、ニキきゅんは」
「なんすか、燐音くん…。来て早々」
「蓮がこーんな可愛い甚平着てンのによォ。買ったばっかのおニューなやつ見て欲しかったンだよなァ」



この事態を予想していたかのように、燐もそばにいたようで蓮の代弁を図る。と、いうよりは、若干面白がってるような気もする。案の定、ニキくんの困った声は聞こえるし、覗いてみれば、後ろ姿でわか、ないけれど、ぷんぷんした様子の蓮の横でしゃがんで抱きしめながら、蓮の味方のように寄り添う燐の姿があった。



「えっ、それ早く言ってくださいよ〜!蓮ちゃん美味しそうなりんごっすね!」
「むぅううう」
「きゃっはは!それはちっげェっしょ!」
「ぱっぱ、やぁっ」
「は、」
「燐音くんも嫌がられてるじゃないっすか〜!」



蓮が完全に拗ねてしまったようで、とうとうパパもイヤイヤになってしまったみたい。くっついてた燐の顔を押し退けているし、燐は素直に受け止めてショック受けてそう…。次はニキくんの笑い声が響いて、もはや苦笑いしか出てこない。



「蓮、ほらウサちゃんが待ってるよ」
「うちゃっ…!」



困った時のウサギのぬいぐるみ。蓮にウサちゃんが待ってると伝えれば、思い出したかのようにダッと駆け出した。燐とニキくんはまだ悪態ついてるようだけど、そろそろ熱りも冷めるだろう。



「蓮」
「んぅ?」



ウサギのぬいぐるみに意識が行った蓮を呼べば、不思議そうにこちらを見る。


「かわいいね」


そう言えば、蓮は嬉しそうに笑みを浮かべて「あい!」と答えてくれた。

[ ]









×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -