娘と水遊び



電動の機械を動かしていれば、ぽてぽてとやってくる蓮。暑い日に熱すぎる体温の小さな手のひらで足を掴まれた。


「んぅ、まっま」
「はいはい、ちょっと待ってね」


あたしのやっていることを不思議そうに見つめる。足から伝わる体温がとにかく熱い。





「蓮、ほら。あんよを上げて…よいっしょ」
「んぅっ」


目の前にしゃがんで、手で広げがちに持っている衣類に足を通すよう促す。蓮は片足を上げるために、あたしの腕に手を乗せて一緒によいしょっと足を通して、着替えをさせた。


「はーいっ、蓮かわいいねっ」
「んぅ」
「ふふっ、写真撮ろっか」



可愛いと言われて素直に気分を良くする蓮。あたしたちの仕事を見過ぎたのか、自分なりに可愛いと思うようなポーズを取るのも当たり前になってきた。せっかくなので、スマホのカメラを起動して可愛らしい姿を収めていく。



「蓮、ママともお写真撮ろう」
「あいっ、まっま!」


おいで、と声をかければすぐに駆け寄り、あたしのところに飛び込んできてくれた。それをギュッと抱きしめれば、嬉しそうな笑い声が聞こえて来る。あたしはしゃがんだ状態で蓮を後ろから抱きしめて、カメラをインカメに切り替えて自撮りを数枚。なるべく蓮の格好も入るようにシャッター切る。



「可愛い水着の蓮が撮れたね」
「ね〜っ」


画面に映るのは今撮影したばかりの写真たち。そう、蓮は初めてとなる水着を着ているのた。フリフリのワンピース型の水着は、女の子らしくて、とても可愛らしい。初めて着るということもあり、蓮もご機嫌。写真に映る姿を見て、さらにご満悦の様子だ。



「パパにも見せてあげようね」
「ぱっぱ!」
「今度、ばーばに会いに行く時も見せようね」
「んぅ!」



全然行けてないけれど、故郷の母さまにもたまには蓮と会わせてあげたい。実際問題、なかなか会えない分、こうやって撮った写真を貯めておくのだ。

さてさて、さっきまで使っていた電動の機械で行っていたのは空気入れ。目の前には大きく膨らんだビニールプール。その中に水を流し入れて水面がたぷたぷと揺れている。水着姿に着替えた蓮と一緒に、ショートパンツに帽子を被った状態で並んで見つめる。



「ほら、蓮。プールだよ」


初めてのビニールプールに目をキラキラと輝かせて見つめる蓮。恐る恐る、手を伸ばして水面に手をつければ、驚いて手を引っ込めて振り向いた。


「ちめたっ!まっま!ちめたよっ!」
「冷たかった…?でも気持ちいいよ〜、ほらっ」


普段、こうやって水が溜まってると言えばお風呂場でしかなくって、しかもそれはお湯だから、イメージと違ったのだろう。水に突っ込んだ手をビックリしながら、自分で抱きしめて必死に冷たさを訴えてくる。なので、水温確認も兼ねて、自分の手をプールの中に入れてみて、たしかに冷たいけれど、このぐらいの量でこの気温なら問題ないはず。なので、水面下でゆらゆらと腕を動かしながら大丈夫だよ〜と見せてあげれば、蓮はその様子を食い入るように見つめる。



「蓮、大丈夫だよ」
「んぅ…」


もう一度、大丈夫だと声をかけてあげれば、再び恐る恐るながら手を入れる。次は水の温度もわかっていたからなのか、一瞬だけ「ちめたっ!」って声を上げるが手を出したりはしなかった。水の冷たさが気持ちよく感じられたのだろう、ピチャピチャと手を水面に叩いて遊び出す。


「蓮、中入ろっか」


両脇に手を入れて、持ち上げて上げればダランと体をさせながら下を見下ろす蓮。ゆっくりと足先から水面に入れようとすれば、足が水に触れた瞬間、「ちべたっ!」とまた足を軽くばたつかせて声を上げた。


ぴしゃぴしゃとしながらも、徐々に体を下ろして上げれば、足がプール内の床につけば大人しく一人で立ったかと思えば、ずっと下を見たまま腰を曲げて水をぴちゃぴちゃと手でまた掻き出した。


「んぅ」
「蓮、?」
「まっま!まっまも!」


どうやら、お気に召してくれたらしい蓮は、あたしの手を引いて一緒に入ろうと誘ってくれる。


「ありがとう、でも蓮が楽しんでほしいから、ママは大丈夫だよ」
「むぅ…」
「代わりに、ほらっ」
















仕事がひと段落ついて、スマホを見ればメッセージ受信のポップアップがあった。宛名は優希。

何も考えずにタップして、いつものように開いた瞬間、俺はついその場で崩れた。


「燐音くん、どうしたんすか?」


何も知らないニキの声がする。俺は反応する余裕もなくって、黙って手に持っていたスマホをニキに差し出した。


「なんすかも〜。…って、優希ちゃんと蓮ちゃんじゃないっすか!蓮ちゃん、水着っすか?おうちプール…?」


俺のスマホの画面を見たであろうニキが矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。そう、俺が見たのは優希から送られてきた蓮との写真。最近買ったビニールプールで遊んでいるらしく、同じく買ったばかりの水着を着ていた。他にも蓮が可愛くポーズしていたり、プールに浮かべた魚など海の生き物のおもちゃで遊んでいるものもあったり、どれもこれも可愛すぎる。


「蓮、可愛すぎんだろ」
「楽しそうに遊んでて、ホント可愛いっすね」
「ア?蓮はやんねェぞ」
「褒めただけなのに?!?!」

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