娘とHiMERU



※HiMERU視点


夏本番手前だというのに、ジリジリと降り注ぐ太陽の日差し。アイドルとして日差しの下に長居して焼けるわけにはいかない。俺は持っていた帽子を被る。

今日はオフなので、何をしようかと思った際に、たまには街中をブラブラするのもいいなと思ったので、宛もなく過ごす事を決めた。


世間は夏モード。

服も雑貨も食べ物でさえ、夏関連のもので溢れている。HiMERUはアイドルなので、念には念をサングラスをかけて、バレないように存在感をなるべく消すように努める。そんな中、ブラブラと歩いていた街中でふと目についた物に思わず足を止めてしまった。











「はい、蓮。お茶飲もうね」
「んぅ」


とある日陰に収まって、小さな子供に飲み物を与えている親子が視界に入った。よく見れば、優希さんと蓮ちゃんで、優希さんは中腰になって小さなストロー付きの容器を蓮ちゃんに差し出していた。こうも暑いと熱中症になりかねませんからね、そのための水分補給をしてるんでしょう。手には折りたたんだ日傘らしきものもあって、おそらく散歩中と俺は予想した。


「優希さん、蓮ちゃん」
「あ、HiMERUくん。こんにちは」
「めうめ〜う!」


無視する理由もないため、歩み寄って声をかけてみれば、いつもの仕草をつけてHiMERUの名前を呼ぶ蓮ちゃん。髪色も目の色も父親譲りというのに、こういう愛嬌は父親に似ず、とても可愛らしいなと思う。暑さでジンワリと出た汗が髪を引っ付かせて、おでこなどに張り付いていた。



「お散歩ですか」
「そう、自分で歩いてるんだよねー」
「ねー!」
「出た時はそんなに強くなかったのに途中から日差しも凄くて…蓮も汗いっぱいだね」


優希さんはタオルを取り出して、蓮ちゃんのおでこに出た汗を拭いてあげる。水気を含んだ髪がまとわりついて気持ち悪いのか、蓮ちゃんはされるがまま拭かれながらその髪の毛を無造作に振り払う。



「適度な太陽の光は必要ですが、こうも暑いと気が滅入りますね」
「そうなんだよね、熱中症にならないようにしなきゃいけないから、いろいろ大変で」
「まっま、にゃんにゃん」
「うん、にゃんにゃんいるね〜」



大人である我々の考えなどつゆ知らず、日陰で休んでいる猫を見つけては興味津々に見つめる蓮ちゃん。好奇心旺盛にもなってきて、優希さんはさらに大変そうだなと感じた。



「にゃんにゃんっ!」



そしてこちらの気持ちを知らないのは猫も同じで、蓮ちゃんがジリジリと距離を詰めてきたことに気づき、閉じていた目を薄らと開けて、重い体を持ち上げてどこかへ行ってしまった。せっかく見ていた猫がいなくなってしまったことにより、蓮ちゃんはさっきまでの楽しそうな様子から一変して切なそうな声で「にゃんにゃん…」と呟く。



「蓮ちゃん」
「んぅ?」
「今日はHiMERUからプレゼントがあるんですよ」



猫に完全に意識が向いていた蓮ちゃんの目の前にしゃがんで目を合わせながら問い掛ければ、蓮ちゃんは不思議そうな表情で俺を見つめる。手に持っていた袋かは中身を取り出す。


「にゃんにゃん!」
「そうです、にゃんにゃんですね」



取り出したのは猫をモチーフにした麦わら帽子。見るなり、猫と気づいた蓮ちゃんは帽子を指差す。俺はその帽子をそのまま蓮ちゃんに被せてあげれば、帽子のつばを両手で掴みながら「にゃんにゃん!」とぴょんぴょん跳ねる。



「とても可愛らしい帽子を見かけて、蓮ちゃんに是非と思って」



そう、久々のオフでたまたまブラブラしていた時に、とある帽子屋で趣味の帽子を眺めていた際に見つけたこの麦わら帽子。季節的にもたくさん並んでいた麦わら帽子の中、可愛らしいデザインだったため、蓮ちゃんに是非…と思って柄にもなく買ってしまった。


「HiMERUくん、ありがとう…!」
「めーう、あーがと!」


突然のプレゼントもどうかと思いましたが、実際にあげてみて優希さんも蓮ちゃんも喜んでくれたので良かったです。

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