兄と弟



※娘と一彩2の数時間前の出来事



「兄さん兄さん」
「ア?…ンだよ」


たまたま出会したのは弟の一彩。珍しく思い詰めた表情を浮かべていて、ユニット内で何か問題でもあったのかと思い、仕方ねぇなァ…と思って足を止めてみた。



「兄さん…どうしよう…」



視線は下を向いて、耳に入るのは深刻そうな声。表情が見えないため、俺も珍しく深刻そうな一彩に対してどうすればいいかと思っていれば、突然一彩のヤツが顔をバッと上げるもんだから、思わず驚いて少しだけ身を引いてしまった。







「蓮は、ネコとウサギどっちが好きかな…」
「ハァ?」












一彩のやつに連れてこられたのは、可愛らしい雑貨屋だった。普段だったら来る機会は全くないお店であり、一彩のヤツもなんでまた…って思わざる終えない。



「なんで、野郎二人でこんな店来てンだか…」
「藍良が言ってたんだ。蓮と仲良くなるためにぬいぐるみの一つでもあげたらどうだとね。だから、蓮にぬいぐるみをあげたいんだ!」
「あー、そういう…」



心配して損した、と思いつつも何事もなくて良かったと、安堵した部分もある。



「藍良に女の子ならウサギやネコが無難と言われたんだが、せっかくなら蓮の好きなものを…と思ってね」
「まあ、一彩にしちゃァ、考えたンじゃねぇか」



連れられて目の前にあるのは可愛らしいぬいぐるみたち。その中で、ネコとウサギのぬいぐるみと目が合う。二つのぬいぐるみを見せつけられて、俺はうーんと唸るしかない。どっちも可愛らしいから、どっちでもいいと思うがねェ…。まあ、その前に。



「蓮はまだネコとかウサギとかまだよくわかってねェだろ」
「ウ、ウム…、そうか…」



最近やっと喋れるようになったぐらいだし、と家にいる我が子を思い出してみる。だから、



「一彩が選んだやつなら、蓮はどっちでも喜んでくれンだろ」



ちゃんと蓮のために選んでくれたものなら、アイツだって嫌がらねェよ。だって、俺たちの可愛い娘だからな。

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