ママと娘とパパ



※生後数ヶ月


「蓮ちゃん」


ソファーの上に膝を立てて座ってるあたしは、太ももを背もたれになる位置で蓮を座らせている。まだ喋れない蓮はあたしが両手を握って上に下に好きに動かされるまま。


「ぅ〜」
「ふふっ、かわいいね〜」


クリクリの瞳であたしを見つめてくる蓮。ヨダレをダラダラと垂らしているけれど、今しかないこの歳のならではの可愛さを堪能する。ウリウリとほっぺたを突っつけば、ニコニコと笑顔を見せてくれて、それがまた可愛くて「んんんん」となりながらおでこ同士をコツンと擦り付けた。



「ぁ〜う」
「蓮、髪の毛伸びたねぇ。結ぼっかー?」
「んぅ」


生まれてすぐから比べれば伸びてきた髪の毛。それでもまだまだ多いとは言えないけれど、伸びてきた前髪が目に入らないようにしなきゃなと思って、少ない髪の毛をまとめてちょんまげを作ってみる。手元にちょうど良いヘアゴムはないので、とりあえずまとめた髪の毛を指でまとめて見れば、不思議そうに見つめてくる、ちょんとできたちょんまげ姿の蓮。これがまた可愛くて自然と口元が綻んだ。



「かわいいね、蓮」
「ぅ〜?」
「なに、やってンの」
「蓮の髪が伸びてきたからちょんまげにしてみたの」
「ぁう」


燐に尋ねられて、あたしは蓮から目が離せないからそのまま答える。燐は横に腰掛けてあたしと肩を並べながら蓮を覗き込んで、少しだけ噴き出した。



「可愛いんじゃねェの」
「なんで笑うの」
「いやァ、ママのおもちゃになってんなァって思ってよ」
「おもちゃじゃないもんね、可愛い可愛いってされてるんです〜」



ムチムチほっぺたを指でサンドしながらパパに向かって蓮に言わせてるようにすれば、パパは大きな体を少しだけあたしに体重をかけて寄りかかる。



「ママ、やめてよ〜」
「蓮ちゃんはそんな声じゃないもん」
「結構可愛い声頑張ったんだけどな」
「ふふっ、蓮見てるとね、ひーくん思い出すんだ」



裏声でアテレコする燐がおかしくて笑ってしまう。蓮を見ていると、昔が懐かしくなるのはあたしだけじゃないはず。



「赤ちゃんだったひーくんと遊びたいのによく噛まれてさ」
「優希、泣いてたもんな」
「だって、歯がなくてもあれ結構痛いんだよ…?」



「容赦なく思いっきり噛むんだから…」と言葉を漏らしながらも、それでも可愛い、愛おしい、大切だと思えるんだから。今では大きくなったなぁと感じるけど。蓮もこうやって大きくなるのかな、って思ったりもして。





「ま…ぅまっ」
「…蓮」
「今、」



ボーッと昔を懐かしんでいれば、目の前の蓮が小さな両手を前に出しながら発した声に今までの思考が一気に停止した。びっくりして、まじまじと見つめていれば蓮はまた口を開く。



「まぅっまぁ」
「蓮がママって言った…!」



辿々しい言葉ではあるけれど、これは今まさにママと言ったと言わせてほしい。嬉しさのあまり、蓮を両手で抱っこして高く持ち上げれば、蓮は楽しそうにキャッキャと笑って手足をバタバタさせた。



「蓮、ママが先だったかァ…。パパって言ってみ…?」
「んぅっ」
「蓮のパパはまだ先かもね」



蓮はパパの言葉を不思議そうにしながら、自分の手をもぐもぐさせてる様子だったから、パパはもう少し待たなきゃね。



ついこの間、生まれたと思ってたのに、本当に早いなぁ…と感じる。蓮が歩けるようになったらいっぱいいろんなところに連れて行ってあげたいな。あたしたちが外に出て感動したように、この子にもたくさんの景色を見せてあげたい。



この素晴らしい世界を。

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