娘と一彩8
側から見たら、どんな風に見られるか。
赤い髪をした男二人と小さな子供が一人。見るからに血縁者ってわかるだろうけど、一発で当てられっかァ〜?
ちなみに、正解言っちまえば、兄と弟、そして兄の娘、つまり弟の方とは叔父と姪っ子って関係。
今日はそんな三人でお出かけの日。
「わんわん!」
「ウム、わんわんだね!」
蓮のちっさな手を握りながら、歩幅を合わせてゆっくり歩く。蓮はちっせぇから俺的には抱っこしてやった方が楽だけど、それじゃ歩かせられないから意味がねェ。背中を丸めねェと繋げないから仕方ねェけど、さすがにしんどくなってきたなァ、と思っていたら、蓮が勢いよく手を離して指を刺す。一彩の奴が、蓮の言葉にすぐさま反応して復唱してた、最近こういうやり取りばっかだな。
「おら、蓮。ウサギさんもいるぞ」
やってきたのはショッピングセンター。オフの日に、ブラブラするためにやってきた。優希は仕事、俺は休みで蓮の面倒を見る日。たまたま時間が空いてると言ってた一彩もやってきて、一緒に時間の潰せそうな此処に来たってワケ。
蓮はなんでも興味を見せる。今も店内に貼られているポスターを指差す。そこに映る犬やウサギなどの動物たちに反応していて食い入るように見ていたと思えば、次の瞬間には飽きているのもよくある話だ。
「ひちゃ、あち」
「あれはガチャガチャだね!」
「がちゃがっちゃ!」
次に目に止まったものといえば2段に重なる白い箱、ガチャガチャだった。ズラっと並ぶガチャガチャのところまで、パタパタと駆けて行き回らないノブを回そうとして、本体がガタガタと揺れる。それにより、中にあるガチャガチャもカタカタと音を立てる。
「むぅ…、ないない」
「そりゃ金入れてないか回さねェし、出ねェっしょ」
本来ならガチャガチャのカプセルが出てくる出口のところに手をやって出てこないと訴える蓮。金を入れてないと言えば、お金ちょうだいと言わんばかりに手を差し出してくるから、賢くなったなと感心してしまう。
「んな缶詰の指輪、可愛くないっしょ」
「蓮!これとかどうかな!」
ガチャガチャを回すことしか考えていない蓮は、自分が今回そうとしていたガチャガチャが何かもわかっていない。鯖缶リングとか可愛くなさすぎっしょ。どうせ出してすぐパパにあげるってなるのは目に見えていた。そしたら、一彩がガチャガチャの他の種類を見つけたらしく、蓮を手招きで呼んだことにより、一彩の方へ。
「ひちゃ、ちょだい」
「うむ!」
「おいおい、一彩。あんま、蓮を甘やかすなよ」
「でも兄さん、蓮が欲しがってるからね」
そういうのを甘やかすっていうんだけどな…、既に一彩は蓮に小銭を渡していたし、蓮もその小銭を投入口に入れていく。その様子を楽しそうに見つめる一彩。まったく、可愛がってくれるのは嬉しいが困ったもんだ、と思っていたって、ついつい頬の筋肉が緩む俺も同じ立場なら結局やってたんだろうなって思ってしまう。
「んぅ!しょっ」
ガラッガラッと音を立てて回るガチャガチャ。蓮の力だけでは足りないので俺も助けるために一緒に回してやれば、コロンと緑色のカプセルが出てきた。
「ぱっぱ!でたっ!あーて!」
「はいはい、待ってな」
カプセルが出るなり、すぐさま手に取り俺に開けてと頼んでくる蓮。瞳をキラキラ輝かせて早く早く!と訴えてくる。こういう時も一彩に頼んでやれば喜んでやってくれるのに。まぁ、一彩も蓮と一緒にワクワクさせながら見てるのも面白いけど。
ガチャガチャで一頻り楽しんだ後、また移動をしていれば蓮が次の何かを見つける。
「あ、」
「ん?あぁ、ゴーカートだね」
蓮が次に気に留めたのはゲームセンターの入り口にあるゴーカートのゲーム。他の子供たちがそれでワイワイと競争しているため、楽しそうな声が聞こえてくる。蓮はジッとそれを立って見ているだけ。移動を促して見ても動く気配もないため、俺と一彩も必然的にその場で停滞。すると、その間に遊んでいた子供たちがいなくなり、ゴーカートは空きの状態。
「ん!あち!あちよ!」
やっぱりか、蓮は次はこれで遊びたかったらしい。俺の手を思いっきり引っ張っていく姿は、この時を待ってました!と言わんばかりのものだった。高さがあるから、蓮にはデカいんだけどな、と思いつつも座らせてやれば最初こそ「ぶーぶー!」と楽しんでいた蓮だけど、自分の目線の低さが気になったのか画面が見えないことが楽しくなかったのか、「ぶぅ…」と不貞腐れる。今回は早々に飽きるかと思えば、「ひちゃ!こち!」と一彩を呼び出す。
「なにかな、蓮」
「ひちゃ、ここよ!」
蓮は立ち上がって自分が座っていたゴーカートの座席に一彩を座らせる。一彩は完全にされるがまま、座って蓮の様子をニコニコしながら見つめている。俺も蓮が何をしたいのかわからず、とりあえず見ていることに。蓮は一彩が座ったことを確認すると一彩の上に座り始め、一彩の両手を手に取る。
「ひちゃ、ぎゅっよ」
「うむ!」
いやいや、一彩。うむ!じゃねェっしょ。蓮は一彩の手を取ったかと思えば、しっかりと自分の体を支えるように掴むよう言い聞かせていて、噴き出しそうになった。車だから、シートベルトってか?我が子ながら発想力がなかなか過ぎる。
「ぶーぶー!」
「蓮、上手だね!」
ゲーム画面はお金を入れていないけれど、キャラクターたちが走る映像が流れていることにより、蓮は自分が操作してるとでも思ってくれてるのだろう。一彩が座ったことにより座高も高くなって視野も変わったのか、蓮は楽しそうにハンドルを回す。
一彩も一緒になって、「ぶーぶー!」なんて言っていて今やアイドル天城一彩ではなく、姪っ子と楽しそうに遊ぶお兄ちゃんだ。
そんな蓮と一彩、二人のそんな光景がまた微笑ましくて可愛すぎて俺は動画を撮り収めた。
こんなオフも悪くないな。
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