娘と一彩7



※一彩視点
※娘への来客後


「水城来てたんだね!」
「お久しぶりです、一彩様」



蓮と遊ぶために兄さんの家に来て見たら、水城がいて驚いたよ!
水城がこっちに来るかも、という話をそういえば兄さんがしていたね。水城と話していれば、蓮がドタバタとやってきて僕にドンっと突っ込んできた。


「んぅ!蓮ちゃんだよっ!」
「蓮!今日も元気だね!」


蓮は僕に突っ込んだのが楽しかったみたいで、笑いながら僕の足の間を潜ったり遊び始める。すっかり慣れてくれた蓮が楽しそうにしてくれるなら、と思っていれば、目の前にいた水城がワナワナと震え出す。



「蓮…」
「んぅ?ひーちゃよ!ばーば!」



水城が何を思ってるのか僕にはわからないけれど、水城と目が合った蓮は僕の足の間にしゃがんで僕の両足を掴みながら、「ねーっ」と笑って見上げてきてくれたから「うむ!」って返したら、水城の顔色が悪くなったよ。



「水城、いっちいち蓮の行動気にすンなって。此処じゃそんなの気にすンな」


中からひょっこり顔を出した兄さんは何かわかったらしくて、ケラケラ笑いながら水城に声をかける。水城は小さくなんとか「はい」とだけ返事をしたのだけれど、大丈夫なのかな。

















水城はこっちに来て2、3日目らしい。
こっちに来て初日の話も聞いたのだけれど、水城もいろいろ困惑したようだね。現に今、僕たちが食べているご飯だって水城からしたら初めてのもので、数年前の僕のようだった。



実際に今、みんなで一緒にテーブルを囲んでの食事、



「ひーちゃ、ちょだい!あーちて」



蓮は、蓮専用の椅子に座って蓮専用の小さなお皿に小さなフォークを持っている。今日のご飯はパスタ。蓮の分は食べやすいように細かくされていて、それでもツルツルするから蓮の口の周りはパスタのソースがついていた。蓮のも僕たちのも同じだというのに、僕のものが食べたいから、あーんして欲しいと頼まれてしまった。



「蓮、自分のご飯があるでしょう」
「んぅ、ひーちゃの!あーよっ!」



蓮の横に座っていた姉さんは少しだけ困ったように蓮に問いかけてみるが、蓮は首を横に振って僕のお皿を指差す。



「はい、蓮。あーん」
「あー、むっ」


パスタを少量、フォークに巻きつけて差し出せば、パクっとそれを頬張る蓮。満足したように、嬉しそうにニコニコしながらモグモグさせる姿はとても可愛らしいよ!



「蓮のやつ、一彩にちょっと強いんだよなァ」
「ひーくんが怒らないからね」
「あんなに一彩のこと嫌がってたのになァ」
「そうなんですか?」



僕が蓮と一緒にご飯を楽しんでる中、兄さんたちの話に耳を傾けてみれば、少し前の蓮と僕の話題になっていた。
思い返せば、生まれて間もない頃、姉さんたちがこっちに戻ってきた時、抱っこさせてもらった時も泣いてたし、その後も蓮となかなか仲良くなれなかったことを思い出す。

ウサギのぬいぐるみをあげた後ぐらいからだね、蓮とやっと仲良くできたの。




『ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"やぁっっ』



そんなことを思い返していれば、懐かしい泣き声が聞こえてきて、視線を移せば水城が兄さんに何か動画を見せられていた。どうやら、僕が蓮にイヤイヤされていた頃の動画らしい。


「んぅ?」


動画の中の兄さんが蓮のことを呼んだ声が入っていて、その声に蓮も反応した。


「ほら、蓮。この赤ちゃん誰だろうな?」
「あかちゃ」


兄さんが持っていたスマホを蓮の前に持っていき、画面を見せればさっき聞こえた声の通り、まだ僕のことを嫌がってる頃の蓮がいた。
ちなみに視界の端で見えた水城は動画を見て笑いか何かに堪えているようだ。


『蓮、危ないよっ!』
『ぶぅうう』
『鼻水出てきたよっ!』
『わぁ"あ"あ"あ"ん』



動画の中の僕が泣き喚いて落ち着きのない蓮を必死になれない手つきで抱っこする姿が。泣きすぎて蓮からは鼻水が噴射されるし兄さんたちの笑い声も入っている。




「蓮、この赤ちゃんは蓮?」
「んーんっ」
「えっ、蓮ちゃんだろ〜」



蓮の中でこの頃の記憶はない。だから、自分ではないと即答し首を横に振る。その姿がおかしかったのだろう、兄さんたちが笑い出すから、蓮は更に不思議そうな表情を浮かべるだけ。



「あかちゃ、ないてぅよ」
「そうだね」
「ひちゃ、あかちゃはいいこいいこすぅよ」



画面を指さしながら、次は僕はダメ出しをされてしまったね!蓮に赤ちゃんのあやしかたを教わってしまったよ、いい子いい子するらしい!


食事もちゃんと終えてないのに、蓮は椅子を降りてパタパタと行ってしまう。口の周りもべったりつけたままだ。だから、姉さんが「あっ、蓮!」とタオルを片手に引っ掴んで、蓮の後を追っかけていく。



その後すぐに蓮は、僕があげたウサギのぬいぐるみを持ってきて、「いいこいいこ、…こうよ!」って実演をしてくれる。
どうやらこのために動いてくれたらしい。



「いや、だからそれは蓮だって」なんて兄さんは笑っているけど、いいんだよ。蓮の言うことは覚えておくよっ!

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