娘と一彩5



暑い夏の日のこと。


今日も我が家のビニールプールは稼働中。



水着を着てパシャパシャと水をかき上げて遊ぶ蓮。暑い日差しも気にせずに、冷たい水に触れられるのが楽しいらしく、蓮は遊具を使って水を弾く。



「蓮、気持ちいい?」
「ん〜!」


嬉しそうに、満足そうな笑顔を浮かべてくれる蓮が我が子ながら可愛くて、スマホに写真を収めていく。



「姉さん!蓮!」
「んぅ?」
「あ、いらっしゃい」



蓮がおもちゃで遊んでいた時、ふと呼ばれて視線を向ければひーくんが笑顔で立っていた。すっかりひーくんが大丈夫になった蓮は、ひーくんを見てもぽけっとした表情で見つめるだけ。あんなに嫌がってたのが嘘のようで、ついつい笑みが溢れる。




「蓮、水浴びしてたんだね!」
「そうそう、暑いからね」
「ひーちゃ」
「蓮、気持ちいいかな?」
「んぅ!」



ひーくんに話しかけられても、楽しそうな笑みをつけている様子を見て改めて安心した。



















「蓮!水鉄砲を見せてあげるよ!」
「んぅ?」
「こうやって…」


水遊びをする蓮の傍で、しゃがんで手をビニールプールの中に突っ込むひーくん。どうやら、両手で水を飛ばすことをしてあげようとしているようだ。蓮は何が起きるのか、不思議そうに覗き込んだいる。こうやって見ていると昔、燐からやってもらって水が飛び出ることに驚いていたなと懐かしくなる。





ピュッ




ピシャッ





「姉さん…?!ごめんよっ!?!!」


ひーくんの声を聞いても一瞬何事かと思った。
頭で理解できた時には、ひーくんがあわあわと慌てる姿を認識した時だった。

どうやら、ひーくんがやろうとしていた水鉄砲があたしの方に飛んできて見事に頭から被ってしまったのだ。顔面に直撃した訳でもないし、蓮の水遊びに付き合ってる時点で多少濡れるぐらいならのスタンス、問題ない。



「大丈夫だよ。ちょっとびっくりしたけど…」
「ごめんよ…濡らしてしまって」
「へーき…!それより、凄いね、水鉄砲飛ばせて…!蓮も見てた…よ、ね…?」



ものすごく申し訳なさそうにするひーくんに大丈夫だと返して、蓮の方に視線を移しながら声をかけてみようとしたら、蓮がこちらを見たまま立ちすくんでいるではないか。そのため、こっちがどうしたの?!ってなってしまう。

あまりにもピシッと固まってこちらを見ているから、てっきり蓮にも水が飛んでしまったのかと思った。




「ひちゃっ…むぅぅううッッッ」
「え、蓮」
「めっめっ!」



けど、どうやら違ったようだ。突然スイッチが入ったように、ビニールプールの中で地団駄を踏み始める。短い足を必死に動かしてピチャピチャと水を飛ばしながら、むくれっ面を浮かべて、ひーくんに言い寄る姿はまるで非難しているようで。

どうしたものか、となんて声をかけるべきかもわからず、つい見ていることしかできなかったあたしは、途中でハッとして「蓮、」と声をかければ、蓮は意外と冷静なのか、あたしの声を聞き入れてくれた。



「まっま…」



ビチャビチャに濡れている手を伸ばしながら、水をかき分けてプールの中からあたしの元へ歩み寄る蓮。しゃがんで、蓮の目線の高さに合わせてあげれば、蓮はそのまま濡れた手であたしの顔に手を伸ばす。



「まっま、…たい、いたい?んぅ?」



どうやら蓮は、ひーくんの水鉄砲が当たって怒ったようだった。水鉄砲と聞いた言葉からして、痛いものだと連想したのかもしれない。さっきまでのプンプンした様子とは打って変わって、泣きそうな表情に切り替わる。



「蓮、大丈夫だよ」
「んぅ…」


大丈夫って言っても、蓮は信じてないのか、不安なのか。そのまま抱きついてきたので、ぽんぽんと背中を軽く叩いてあげる。



「蓮はびっくりしちゃったね。痛くないから大丈夫だよ、ちょっと濡れちゃっただけで」
「むぅ…ひちゃ、めっ…!」
「ウム、僕が悪かったから…」
「蓮、一彩おにいちゃんも謝ってくれてるから…それより」



蓮がビショビショの水着で抱きついてきてくれてるおかげで、そっちの方が濡れちゃうなぁ…と思ったけど、その言葉は飲み込んだ。
蓮はひーくんに怒るし、ひーくんは蓮に頭を下げてるし、どっちが上なんだろう…って思ってしまう。



蓮、ひーくんに慣れたら慣れたで、だいぶ強気になった、…気がする。






「ひちゃ!むぅ!」
「蓮、そんな怒らないで欲しいよ」
「むぅうう!」



うん、この時ばっかりはさすがに蓮を甘やかし過ぎたのかな…って不安になった。

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