娘とパパと昼寝



洗濯物を終わらせて部屋の中に戻るが、室内はすごく静かだった。洗濯物を乾しに行く前に燐と蓮が一緒にいたのは知っているし、二人がでかけてもいないはず。それなのに、やけに静かな家の中にあたしは思わず首を傾げる。



何をやってるんだろう、と思いながら部屋の中を移動してみることにした。


リビングにもいなければ、キッチンもいなくて、最後に寝室を覗き込む。すると、そこに探していた蓮の背中を見つけるが、何やらモゾモゾ動いている。


「…蓮?」


名前を呼んでも聞こえてないのか、蓮はしゃがんだ状態で小さな背中を丸めている。おしりがふりふりしてて、あまりにも可愛い後ろ姿に癒される。


「うーちゃ、ねんねよ〜ねんね〜」


そっと寄ってみれば、蓮の影に隠れて見えてなかったお気に入りのウサギのぬいぐるみがこてんと横になっている。そして大きすぎるタオルケットをウサギのぬいぐるみにかけてあげていて、どうやらウサギのぬいぐるみを蓮は寝かしつけてる様子。ポンポンと撫でる様子はまるであたしが普段蓮にやってあげていた行動、そのものだった。

ウサギのぬいぐるみをポンポンとしていたと思えば、突然立ち上がって寝転ぶウサギのぬいぐるみの向こう側にぽてぽてと移動し始めた。そして、ウサギのぬいぐるみの横に横たわるそれを同じようにポンポンと撫で始める。



「ぱっぱも〜ねんね〜ねんねよ〜」



そう、ウサギのぬいぐるみの横にいたのは蓮を見てくれているかと思っていた燐だった。燐は瞳を閉じていて、自分でかけたのか蓮がやったのか、ウサギのぬいぐるみと同じようにタオルケットをお腹のところにかけていて、そんな燐の頭をよしよし、と優しく撫でて寝かしつける蓮。娘に寝かしつけられてるパパの図があまりにも可愛すぎて、思わず噴き出しそうになってしまうのを何とか堪えた。



「蓮、何してるの?」



笑いを誤魔化しながら、蓮に声をかけてみれば、ここでやっと蓮があたしに気づいて目が合う。蓮は、撫でていた手を止めて、その顔つきは真剣そのもの。


「まっま!うーちゃとぱっぱ、ねんねよ〜。しーっ!」


人差し指を立てて、しーっと促す蓮。その声は必死すぎて全然静かじゃないんだけど、これがまた可愛すぎて笑みが溢れる。なんなら、燐の体も僅かながら震えてるから、起きてますね、パパ。



「ごめんごめん、しーっするね」
「うーちゃ、ねんねよ〜。ぱっぱ、ねんね〜」



あたしが静かになったことを確認すれば、蓮はまたウサギのぬいぐるみの横にしゃがみこんで、ポンポンし始める。


「うーちゃ、ねんね?んぅ?」


もはや、なんの真似なのだろうか。ウサギのぬいぐるみを抱っこして、あやすように声をかけている。蓮の中では寝てないのか、眠そうなのかも見てる限りではわからず。むぎゅーっと思いっきり抱きしめ始めて、本人の中では抱っこしてるのかなと何となくその場の行動を感じ取る。


「蓮ちゃん、パパそろそろおっきしてェなァ…」
「めっ!ぱっぱ!ねんねっ!」


完全に構われなくなってたパパの目は気づいたら開いていて、肘を突きながら蓮に声をかけた。しかし蓮は何故か起きることを許してはくれない。パパは困ったように笑いながら、あたしを手招きして呼んでくる。


不思議に思って寄ってみれば、触れられる距離になった瞬間に腕を掴んでにやっと笑う。



「んじゃ、ママも一緒に寝よ」



思わず目をパチクリさせてしまった。何事かと思ったが、燐の言いたいことを何となくだけど察したあたしは、ふふっと笑いながら横にごろんと寝転んで蓮を見る。


「蓮、ママもねんねしたいな」


蓮といえば、ウサギのぬいぐるみをギュッとしながらキョトンとした表情であたしとパパを交互に見つめる。


「ねんね!すぅ!」


ドタドタと足踏みをして、自分も一緒に寝ると全力で表現する蓮。ウサギのぬいぐるみを抱っこしたまま、辿々しく動いてあたしとパパの間に入り込んできたかと思えば、すっぽりと体を収めて寝転んだ。


「みんなで、お昼寝しよっか」
「んぅ!ねんねよ〜」



蓮にもタオルケットをかけてあげて、ポンポンとリズムよく体を撫でてあげれば、段々うとうとしてきた蓮はそのままスヤスヤと夢の中。そんな様子が可愛すぎて愛おしくて、幸せを噛み締めながらあたしたちも一緒に夢の中へと落ちていった。

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