ハチと踊る



※転倒とハチの続き


「ぶぅ!ぶぅ!」
「ただいま〜蓮」
「ぱっぱ!ぶぅ!ぶぅ!」
「ン〜?ハチさんじゃねェの、ブンブンだなァ」

仕事を終えて帰ってきた燐の元へハチリュックを背負ったまま、バタバタと駆け寄る蓮。燐は出向いてくれたことを喜んでおり、駆け寄ってきた蓮を抱っこした時に、背中のリュックに気づく。


「優希、これどうしたんだよ」
「あぁ、それ?レオくんにもらったの」
「ぶぅぶぅ!」
「蓮が最近踊ることが多いんだけどね、その分頭から転んじゃうことも多くて…って話したらもらったの」


紅月の鬼龍くんのお手製らしいんだよ〜って伝えれば、燐は何やら驚いた表情で固まっている。


「は…なんつった…?」
「え、だから鬼龍くんのお手製…」
「その前」
「…踊ることが多くて?」
「…蓮、踊ってンの?」
「ぶぅぶぅ!」


蓮を目の前に抱き上げながら、驚きながら見つめる燐に対して、蓮はキャッキャと手足を伸ばして声を上げた。


「そっか、燐が帰ってきてからだと、蓮と一緒にご飯食べてお風呂入って寝ちゃうことの方が多いもんね」
「俺、初耳なんだけど…」
「ぱーぱ!」


燐はあからさまにショックを受けた表情で蓮の体に顔を埋め始める。そんないじけなくても…と思いつつ、そんなあたしたちの考えは何も知らない蓮は、燐の頭をバシバシと叩いた。












燐とあたしがオフの日。
蓮もしっかり目を覚まして機嫌はご機嫌。もはやお気に入りとなったハチリュックをしっかり背負ってテレビの前へ。


「蓮、近いとテレビできないからね」
「ぶぅぶぅ!」
「はいはい、もうちょっと下がろうねー」
「ぶぅ…」


テレビに近すぎるのも良くないので、蓮を少しバックさせたら、面白くなさそうに頬をむぅとさせる蓮。さっきから一言も発さない燐と言えばスマホを片手にスタンバイして、この後のことをムービーに納めようとしてる姿から必死さが伝わってくる。


「ほら、ぶちゃいくになってますよ〜」
「蓮はいつでもかわいいもんなァ?」
「蓮の好きな曲つけてあげるからねー」
「ぱっぱ!」



誤魔化しながらもテレビをセッティングしてあげれば、画面に映る燐の姿。そこから蓮の気は完全にテレビに移行してしまい、その視線は釘付けだ。いつものようにクレビの曲を流し始めてしまえば、蓮は曲に合わせて動き出す。


「ぶぅぶぅ!」


テレビの中の燐たちが跳ねれば、蓮もジャンプをし、燐たちが回転すれば辿々しくクルクル回る。


「じょうずじょうず〜」


曲に合わせて、手を叩きながら声をかければ気分を良くした蓮はさらに嬉しそうに踊りを続けた。


大体、蓮が転倒するのはサビの手前で燐が足を蹴り上げているのを真似しようとして、そのままゴンっとやってしまうのだが、今回はなんとか無事でホッとする。そのまま曲は終盤になり、両手を上に上げながら足をドタバタさせ、テレビ画面でみんながジャンプする。この時のジャンプが思いっきり跳んだかと思えば、両足をしっかりと地につけた瞬間、その勢いに乗って腰を下ろしてしゃがむように着地する姿は、こばくんみたいでクスリと笑みが溢れる。


一曲踊り終えれば、蓮は満足したように「ぱーぱ!」とバタバタさせながら燐の元へ。燐は一旦、撮影をやめてスマホを横に置いて駆け寄る蓮を抱き止めた。


「蓮上手いな〜っ」
「ぱっぱ!ぶぅぶぅ!」
「最後のジャンプとか、こはくちゃんに負けねぇコシのある動きじゃねェか」
「こっちゃ!」
「今度あいつらと一緒に踊ろうなァ」

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