パパとママになった日



※燐音視点



お産の時は里の風習もあって、立ち合いはできず。屋敷の外でずっと不安と隣り合わせだった。気づいた時には耳に入ってくる鳴き声と水城が呼びに来てくれて中に入れば、お産の後の汗だくで疲れ切った様子にも関わらず、優しく微笑む優希の傍には先程まで泣いていたであろう小さな命。

正直この時、周りになんて言われて自分がなんて答えたかとかあまり覚えていない。


ただ目の前ですやすやとした様子の小さな命の存在が嬉しくてたまらなく愛おしくて。


「りんもだっこ、してあげて」


全てを振り絞ったであろう優希は、起き上がる体力もないはずなのに優しく囁く。


水城に助けられて、初めて抱っこした時、あまりにもの小ささに自分の腕の角度や位置が分からずに困惑してしまった。そんなことをつゆ知らず、スヤスヤと眠る姿がまた愛おしくて。ずっと優希の中でこの日を待っていたのか、と思ったら胸が熱くなった。



「…生まれてきてくれてありがとう…」



そっとおでこに頬を擦り寄せれば、確かに温もりがあって柔らかくて、熱くなる目頭を気づかれないように目を閉じた。





聞いた話がある。



子は親を選べない、というが、子どもが親を選ぶらしい。

稀に生まれる前の記憶がある子どもがいるらしく、その子が語っていたことを取り上げられている話を見た。


もし、それが本当ならば、この子は俺と優希を選んで来てくれたことになる。



「俺たちを親に選んでくれてありがとう…」



この子が生まれたことによって、俺たちも親になった。当たり前だけど、まだ何もかもができない父親だけど、これから一緒に成長させてほしい。たくさんのことがあるだろうけど、いっぱい一緒に過ごさせて欲しい。




「よろしくな、蓮」




生まれる前に優希と決めたこの子の名前を呼んであげれば、少しだけ手がピクリと動いた気がした。

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