ママの子育て



※出産後数ヶ月以内の故郷にて


故郷に帰って来られてよかったと、ふとした時様々な場面で思うことがある。もちろん、最初に帰ってきた時だってそう。だけど、出産を終えてから蓮を育てる上でそれは更に思うことが増えたのは気のせいじゃない。



「ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"」
「…ん…蓮…」



生まれて間もない蓮、他の子と同様に夜泣きをする。日中でも夜中でも乳をあげなければならない。生まれて間もない赤ちゃんは、上手く乳を吸えないことにより頻繁に乳をあげなければならない。しかも母乳は消化が早いとのこと。出産前に色々と得た知識で知ってはいたし、覚悟はしていたがやはり現実問題、こうやってやってみてわかるのは母親って凄いなって思うことである。


燐も日中は君主としての仕事があって大変だから、起こしちゃいけないし、蓮だってお腹が減って泣いてしまう。重たい瞼を何度かこじ開けて蓮を抱っこして乳をあげれば、鳴き声もぴたりと止まる。


薄暗い部屋の中、この瞬間のあどけない表情が可愛くて、ぼんやりと見つめる。腕に収まるのにきちんと存在を主張する重さもあって、尊い小さな命が確かにここにあると実感させられた。



ぽんぽんぽんぽん…


乳を飲み終えて、ゲップをさせるためにとんとんと背中を軽く叩いてあげれば、「けぽっ…」と小さい音が耳に入る。ここでやっとほっとして、寝床に寝かせようとするが「んぅうあっ」とぐずり始める。


「…変わるか…?」
「ぁ…ごめんね、起こしちゃった…」


結局、抱っこしたまま手放すことを許してもらえずに、思わず一息つけば寝ていたはずの燐と目が合った。蓮の鳴き声か、もしかしたらあたしの些細な物音に起こしてしまったようで謝罪をすれば、「気にすンな」と返してくれる。



「優希もねみぃだろ、変わるよ」
「ううん、燐こそ。明日もお勤めあるんだから、ちゃんと寝て、?あたしは大丈夫だから」


だって、あたしは蓮のママなんだから。しっかりしなきゃ、そう思って蓮を抱えたまま外に移動した。このままだと燐の睡眠を妨げそうだったから。燐だって明日もあるんだからしっかり寝てもらわないと。













朝になって燐は「何かあったら、すぐに言えよな」なんて言葉を残してお勤めに行った。燐の優しさが支えになりながら、今日も変わらず蓮の世話をする。泣くたびに乳をあげて、おしめを替えてあげて、抱っこしてあやしてあげて。連日の睡眠不足もあって、ウトウトしていた頃、「優希、大丈夫?」なんて言いながらやってきたのは母様だった。



「やだ、すごい隈」
「ん…蓮、おろすと寝てくれなくて…」
「赤ちゃんって敏感だからね。乳はあげたの?」
「うん、少し前に」


母様は家事までできていないあたしの代わりに洗濯をしてくれた上にご飯も持ってきてくれた。部屋の隅にそれらを整理して置いて、そっと手を差し出されるから、そのまま抱えていた蓮を受け渡す。


「可愛い寝顔、ほんと髪色とか燐音様似ね」
「うん」


母様に抱えられた蓮は、あたしじゃなくても気にならないのか気づいてないのかわからないけれど、泣きはしなかった。その事にホッと胸を撫で下ろしていれば、母様は蓮から視線をあたしに移す。



「寝れてないなら、とりあえず今のうちに寝ちゃいなさい。お腹が減ってるなら先に食べてからでもいいけど。蓮のことは見ててあげるから」
「…とりあえず寝る…」


ご飯を食べて蓮のためにも、乳が出るように栄養を摂った方がいいのはわかってはいる。が、しかしこの睡魔を何とかする方が何よりも先だと思ったあたしは、母様に「ありがとう」と返して布団に潜った。この時だけは蓮のことを母様に任せて素直に睡魔に向き合える。


あぁ、母はやっぱり偉大だ。



それと同時にあたしも母様のようになれるかなって不安が過った。

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