転倒とハチ



「ぶぅぶぅ!」
「ふふっ、上手だね」
「ぶぅぶぅ!」


蓮はテレビの前で両手を広げて立っていた。その体はテレビから流れるリズムに合わせて辿々しく動く。テレビ画面には、Crazy:Bの4人が映っており、彼らのMV流れていた。今流れている曲はBe The Party Bee!最近の蓮のブーム曲だ。テレビに映る燐たちと一緒に両手を上げて、振り回す様は言われなければ何を踊っているか正直わからない動きだけど、これがまたとても可愛くて笑みが溢れる。


ただ、最近のブームであるダンスをしている際に問題がひとつ。



ゴンッッッッ



「蓮っ?!?」



高確率でこうやって踊っていると、最近大きな音を立てる瞬間がある。気づいた時には時既に遅し。バッと視線を送れば、さっきまていたところから姿が忽然と消えていて。元々いた場所より視線を下に移せば、仰向けの状態で目をパチクリしながら天井を見つめる蓮の姿。一瞬何が起きたかわかってない表情を浮かべるが、それもすぐに表情は崩れて目に大粒の涙を浮かべ始める。



「ぅ"あ"あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"ん"ん"ん"ん"ん"ん"」
「あぁ、蓮…大丈夫だからねっ」
「ま"ぁ"ま"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"」



横たわる蓮を抱っこして、頭を撫でながらよしよししてあげるが、大声で泣き喚くことがこれですぐに収まるわけでもなく。ポロポロと溢れる涙を洋服にグシグシと擦り付けてくる。



「ん"ん"ん"ん"ん"ん"」
「はぁ…」



そう、最近の蓮は自分で立って動けるようになって。こうやってテレビに合わせて動くことも増えて喜ばしい反面、夢中になって気を許した瞬間に頭から転んでぶつけてしまうのだ。そしてぶつけた衝撃による痛みと驚きで大きな声で泣き喚く蓮。これに懲りずに日々繰り返すため、正直どうにかして対策を練らなければと思いつつも、何も見出せずに悩んでいた。
















「優希!蓮!」
「レオくん」
「これ、蓮にやるんだぞ!」


たまたま蓮を連れて出かけた時、レオくんと出会った。レオくんは大きな袋を持っていて、ずいっとその袋を差し出してくる。あまりにも大きすぎて、素直に受け取れず驚きの方が大きい。


「あ〜う」
「きっと蓮も気にいるからなっ!」
「えっ、と、」


蓮はレオくんがガサガサと袋を漁る音につられて、手を伸ばす。その様子を見つめていれば袋から出てきたのは大きなハチのぬいぐるみ、のようなもの。



「…ハチ…?」
「わははっ!これクロに作ってもらったんだぞ!」
「ぶぅ!」
「蓮も気に入ったようだな!」
「あーぅ」
「蓮がよく転ぶって聞いてたからな!転倒防止用のリュックだぞ!」



我ながら名案だろう!と笑った。レオくんが言ってるクロって、あれだよね、紅月の鬼龍くんだよね…。今度個人的にもお礼を言っておこうと心に決める。その場で蓮に背負わせてあげれば、頭のところにちょうどハチのクッションが充てがわれている。重さもあまりなく、軽いのにふかふかクッションで気持ちいい。レオくんの言う通り、蓮は本当にお気に召したようでハチリュックをしたまま、その場でぴょこぴょこと動き回る。



「ぶぅ!ぶぅ!」
「ありがとう、レオくん。これなら転んでもぶつけなくて済むから助かる」
「良かった!蓮も気をつけるんだぞ〜」
「あーい!」

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