仲間とご飯



「にー!にーい!」
「なっはは〜蓮ちゃんはパパみたいになっちゃダメっすよ〜」
「ニキはん、また燐音はんにどやされるで」


蓮はニキに何故かお熱で、ニキを見るなり嬉しそうに両手を伸ばしているし、今の発言も含めてニキの奴は今度締めてやる。けどそんなことより、今はここにきた理由を全うしなければならない。



「おい、ニキ。飯だ、蓮の分もたのむわ」
「いやいや、ここにあるメニューだけにしてくださいっす!蓮ちゃんのご飯持ってきてないんすか?!いっつも食べてる離乳食あるでしょ…!!!」
「ァアッ?蓮のために飯作れねェっていうのかよ」
「にーい…」
「普通に考えて無理っすからね?!あぁ、蓮ちゃんもそんな悲しそうな目で僕を見ないでほしいっす…うぅっ」



かわいいかわいい蓮の悲しそうな反応にグゥ…と押されたニキが結局折れて、なんとかして蓮の分の飯も作ってくれた。ちゃんと食べやすいように細かくトロトロで、大人からすれば薄過ぎるぐらいの薄味にしてくれている。蓮用のカバンから専用の小さなスプーンを取り出して、掬って口元に運べば自然にアーンと口を開いてぱくっとする。まだまだ歯は生えてこないので、器用に舌ですり潰しながらモグモグとさせているのがわかるし、これがまたかわいい。


「蓮、おいしいか?」
「ん、まんま」
「うまいよなァ〜、ニキのご飯だもんなァ」
「まんま」


美味いと言ってるのか、飯と言ってるのか定かではないが、とりあえず与えられたご飯をきちんと食べてくれるから、それでいい。自分の料理も気付けばテーブルに運ばれてきているが、先に蓮が優先だ。


「良いように言いくるめられてる気もするっすけど、蓮ちゃんに喜んでもらえたなら本望っす!」
「まんま!」


どうやらニキも休憩なのか自分用のであろう飯を持って空いてる席に座り始めた。つまり、そばにニキがいると言うことにより、蓮はドタドタとその場で動いてしまって、完全に飯からニキへと意識が変わる。


「おいおい、蓮危ねェだろ」
「まんま!まんま!」
「…仕方ねェなァ…、おいニキ」


蓮が落ちたりぶつけたりしないように、脇の下に手をやって抱えながらニキに声をかければ、口いっぱいに飯を頬張りながら「ん?」と反応をする。コイツ完全に目の前の状況よりも飯だな。



「蓮がお前の方行きたがってるから、パス」
「えっ、ちょっと待って欲しいっす!せめてあと一口…!」
「まんま!」
「泣かせたり、落としたり、ぶつけんなよ」
「んぐっ」





て訳で、泣く泣く蓮をニキの方に行かせてやれば、蓮はニキの足の上にちょこんと座って大人しくなった。俺の上だと立ち上がって動き回るのになァ…。ニキに蓮の飯の入った小皿も渡して食わせるように言えば、横にいたこはくちゃんが次の飯係に。ちなみにニキは蓮を抱えながら、器用に食べ続けてる。


「蓮ちゃん、アーン」
「あー」
「コッコッコッ、ほんま可愛いなぁ。蓮ちゃん、美味しい?」
「…んぅ、まんま」


こはくちゃんのことをじっと見つめながら、目の前に出された飯の乗ったスプーンをパクりと食べてはもぐもぐ。こはくちゃんもこうやって面倒見るのは慣れてきたようで。それこそ蓮を初お目見えした時とか初めての抱っことか恐る恐るで慣れなくって慌てていたのが懐かしい。コイツらなら大丈夫かと思い、やっと自分の料理に手をつける。


「以前から思ってたんですが、」
「ん、何をだよ」
「天城はこういう子育てができるのか、と思ってたのですが割と器用にやりますね」


蓮の様子を見つめながら飯を咀嚼していれば、隣にいたメルメルが口を開く。あぁ、それはよく言われんなァ…と思いながら、その度に行き着く答えが俺の中にはある。


「まあ、何となくわかってたからな。母親が一彩の時いろいろやってたの見てたしよォ」
「そういえば、燐音はんはお兄ちゃんやったわ」
「そうそう!燐音くんはお兄ちゃんだからよォ〜下の子の面倒見てたからなァ」


なんて口では言うけど、実際見てたと言っても幼かった自分があの頃見れる範囲なだけであって、今こうやって蓮の子育てをしていてわかるのは、想像以上に大変だということ。それでもやらなければならないし、できてしまうのは蓮が、我が子が可愛いから、愛しているから。ただそれだけで充分な理由である。


「ゎあっ!蓮ちゃん、口から食べ物出てるっす!」
「ほんまやっ!ふっ、拭くもの!」
「っぷは!蓮のやつ、他に気が取られっと、口ン中にあるの忘れてダラダラ溢すっから」
「笑い事じゃないっすよ!」



二人の慌てふためく反応を見て気付いたが蓮はじっと俺の方を見ていた。と、言うよりは飯を食ってる動作が目についたようで俺が口を開けて食べ物を食べようとしていたら、つられて蓮も口を開けていた。それにより、さっき口の中に入れられたばかりの離乳食がダラダラと口から溢れている。俺にとってはよくあることなのだが、2人からすれば慣れない現状に慌ただしくしていて笑ってしまった。


あぁ、俺も最初はこうだったなぁと。



「ほれ、これで拭いて」
「あ〜蓮ちゃん、口の周り拭きましょ〜」
「んやっ!」
「ぇえっ!拭かないと!」
「きゃははっ!ニキ、嫌がられてやンの」
「ちょっと、ニキはん。わいがやったる」

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