静寂の中の会話



Knightsのみんなと共に行動するようになった当初はいろいろあった。

それこそ、あたしの存在を忌み嫌う人だって妬みだっていろいろあったのは知っている。今でもないかと言えば嘘になるけど、それは人それぞれ。彼らが魅力的だからこそ、そういった感情を持つ人たちがいたって納得できる。

そう、納得できることであればいいんだ。





「まーた、ネットニュースに書かれてるんだけど〜」

「まあ、この話題に関しては常について回るものじゃないかしら」



ニューディの事務所内でスマホを片手にイライラしている泉くんに、仕方ないと言いつつも困った表情のナルちゃん。二人のいう言葉に異論もなければ事実でしかないので、何もいう言葉が出てこない。



“月永レオと水城優希、実は交際していた?!”



全く、懲りずにまた書いたりして…という言葉がぴったり過ぎる。ネットニュースにはただの記事だけ。根も葉もない内容だ。Knightsと共に行動してから、必ずついて回るもの。それはみんなとの関係性を疑われるもの。


一時期はそれこそ、ひどいぐらいあった話でもあり、悪く書かれる時は五股じゃないかとか書かれていた時もあったっけ。それは結局Knights過激派の方々の仕業で、あり得なさすぎる話ばっかりだったから、割と時間もかからず消失した話なんだけど。



「はぁ…」



ネットニュースに書かれているのは、本当にレオくんとあたしが交際していないのか、という考察をまとめたようなものだった。週刊誌とかじゃないだけマシか…と思いつつ、未だにここを疑う人たちがいたことに驚きだ。割と落ち着いてきたと思ってたんだけどな…と思ったって仕方ない。この業界にいて分かったのは、噂は尾びれと背びれどころかいろんなものがくっついて話が出回るということだ。


もちろん、事実だって中にはあるけれど、そうじゃないことだって多い。事の発端の記事からどんどん内容が大きくなって…ってことばかり。



「んー、ファンの中では割と落ち着いてきた話題だったから、ちょっと意外かも」

「そうねぇ。お姫様たちの中では、アタシたちが一緒にいる写真とか載せても女子会のように思われてるからね」

「それはナルくんぐらいじゃないの」

「あらやだ!凛月ちゃんや司ちゃんといる時だってそう思われてるわよ?」



ナルちゃんは驚いた表情を浮かべて口にした言葉を聞いて、次は泉くんがなんとも言えない表情に切り替わる。うん、モデルらしからぬ表情になってるよ、泉くん…と心の中で呟くことにした。




「全く、レオくんも気をつけて欲しいよね〜、ところ構わず優希に抱きつくのとかそろそろやめられないわけ?」

「ん〜、前よりは全然減ったと思うんだけど」

「やめないから、こういう記事書かれてるんでしょ」

「そういうことなら、レオくんに言おうよ」




まあ、この場に当事者であるレオくんはいないのだけれど。




「ほんと、なんでこんな記事書くんだろうね…」

「ネタになるからでしょ」

「でもさ、みんながいう熱愛とか交際とかって判断は何…?」



よろしくないのはわかっているが、あたしはテーブルに肘をついてずっとモヤモヤしていた疑問を口にする。突然の言葉に泉くんもナルちゃんまぴたりと動きを止めて視線をあたしに向けてきた。



「交際とかお付き合いとかもそうだし、恋愛とかも」

「待って待って」



出てきた言葉が予想外だったのだろうか、制止の言葉を上げたのはナルちゃんだった。ナルちゃんはあたしの言葉を遮った後、一呼吸おいてゆっくりと言葉を紡ぐ。



「アナタ、恋愛がわからないの?」



あまりにも真剣で、かつ力があったからあたしは少しだけ身を引きながらも、コクリと頷いた。それには泉くんもびっくりだったみたいで、ナルちゃんと顔を見合わせていた。そんなに驚くことかな…ってあたしは思うんだけど、外に出てきて数年。人生の半分もまだ過ごしてないこの世界であたしが知らないことがまだまだあったっておかしくないんだけどな、と自問自答を繰り返した。

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