ハリポタ | ナノ

俺を見つけた瞳  




初めてナマエを見たのは組み分け帽子を被った姿だった。



「ナマエ・ミョウジ」


大広間に響く名前を察するにこっちの人間ではないのはすぐにわかった。後々に、東洋にある日本人ってことを知る。漆黒の髪に黒い瞳に黄色の肌。同じ黒髪の俺とはまた違って見えたし、何より本当に同い年か?まだまだガキじゃんって思ってしまう顔立ちだった。



最初はただの同寮生。

基本一人でいるか、気づけばエバンスと一緒にいるところを見かけたぐらい。


目立つ性格でもなければ、静かに過ごしているタイプだった。


「リーマス、何食ってんだよ」
「ん、これかい?ナマエからもらったんだ、日本のお菓子だよ」


ある日、リーマスが珍しいものを食べていて聞けば、ミョウジにもらったという。正直言って驚いた、リーマスとミョウジが一緒にいるイメージがまずなかったから。リーマスは美味しそうに、かつ嬉しそうに咀嚼をしていて、まだ手のつけていない方のお菓子を俺に差し出す。


「シリウスも食べるかい?甘くて美味しいよ」
「甘いのはいらねぇ」
「だろうと思った、美味しいんだけどね」


やや紫がかった赤褐色のそれを俺は凝視しながら、首を横に振った。俺の知らないところで、アイツは意外と社交的なのかもしれない。この時思ったのもこの程度だった。





「リリー、ここの表現教えてほしいんだけど」
「良いわよ、どこかしら」



大広間で食事をしていた時、たまたま近くの席に座っていたエバンスとミョウジの会話が聞こえてくる。ミョウジは食事を終えた後らしく、日刊預言者新聞を開いて難しそうな表情でそれを見つめている。「あぁ、その言い方については」とエバンスも新聞の内容を覗き込んで説明を始めて、その言葉に何となく耳を傾けてみたが、正直言って「そんなことがわからなかったのか?」と思ってしまった。骨つきチキンも気付けば骨だけになっていて、それを自分の皿にカランと放って次のチキンに手を伸ばす。



「ごめんね、リリー。いつも教えてもらってばっかりで」
「良いのよ、慣れない言葉だもの。むしろきちんと覚えて来てるんだから、ナマエは偉いわ」
「だって、嫌なんだもん。日本人だからわからない、とか。出来ないとか言われるの。同じ人間なんだから」



俺はコイツを誤解していた。もっと暗い奴かと思ってたし、陰湿な奴なのかと思い込んでいたけれど、実際は見た目に出さないだけで芯がある努力家タイプなんだな、と感じた。馬鹿馬鹿しいとは思わなかったのは、多分ミョウジの言っていた差別嫌悪に対する発言を聞いたからだろう。


純血主義でマグルや混血を差別するブラック家の思想を否定する俺と似ている気がしたから。



 


「シリウスたちのイタズラ、楽しそうよね!あたしも混ぜてほしいわ」
「あっそ、」
「え、それだけ…?」
「お前が入って何になるんだよ、つーか要件はそれ?」
「…え、あたしシリウスが好きで」
「俺はお前なんか好きじゃないし、四人で悪戯仕掛人だから」


名前もはっきりと覚えてない女は顔を真っ赤にして「っあっそう!!!」と言葉を投げ捨てていなくなった。こうやって言い寄ってくる奴も珍しくない。俺たちの行動を煽ててくる奴、ブラック家の名前を使ってくる奴、見た目を褒められることだってよくある。お前らに何がわかるんだ、何もわかってないだろう。そんな奴らの機嫌も今後の印象も知らねぇし。思ったことを吐いての繰り返し。ある日、それを、たまたまた見てしまったミョウジが「シリウス、大変だね」と困ったように笑っていた。



「見た目とかお家柄だけとかだけで見られるのって嫌になるよね、誰も自分のこと見てくれない、見てないんだなって実感する。シリウスは性格がかっこいいわけではないのにね」
「おまっ、それ本人に言うのかよ」
「事実でしょう?イタズラだって、度が過ぎるのはやめるべきだと思ってるんだから」



そっから、な気がする。ミョウジを、ナマエを追っかけて見るようになったのは。

たまにリーマスと図書室にいる時、一緒に本を読んだりしてはたまに話して(ちなみに最初の時は、ナマエが面食らった顔して俺を見てたし、リーマスはすっげぇクスクス笑いやがった)、ジェームズがエバンスに構い出したらナマエとお互い大変だな、なんて言いながら一緒に並んでたりして。


「シリウス、君はナマエが好きなのかい?」


いつだだたか、ジェームズに言われた言葉。俺は「は?、」って言葉しか出ず、コイツ何言ってやがるって思っていたら、「君こそ何言ってるのさ」と呆れられた。周りからチヤホヤされたことはごまんとある。けど、人を好きになったことはない、過去に一人だけ気になった奴はいた、けどそれは好きという感情がわからない幼少期の話だ。


それから時間をかけてナマエが好きだということを自負したし、その瞬間本気で悩んだ。今まで寄ってきた女と違うタイプだし、日本人だからこそ感覚も違う。本音が見えなさ過ぎて、押してみようにもジェームズのアドバイスはアテになんねぇし。



「シリウス、隣いい?」
「ん。あぁ」
「ありがとう」


気づけば、ナマエから来てくれるようにもなった。ふんわりと笑う仕草とか、俺よりも小さな体とか、一つ一つのことが全て愛おしい、ブラック家では知らなかった感情を教えてくれる。

だからこそ、間違えたくない。

だからこそ、伝わってほしい。


俺自身を見てくれる君、俺のことをかっこいいと言わなかった唯一の存在。

俺を全て肯定せず、笑いかけてくれる人がナマエだった。


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