ハリポタ | ナノ

君の隠し事  




最近、ナマエの様子がおかしい。

目立って何かがおかしいわけではないが、なんとなく落ち着きがない。授業を終えて空き時間にはすぐ自室に戻ってしまったり、用があると言ってどこかに行ったり。別に束縛したい訳じゃねぇし、俺だって好きなことやってる所はあるから、仕方ないこともわかってはいるけれど、それを差し引いても一緒にいる時間があからさまに減った。

問い詰めてみようかとも思った。けど、なんて聞くのかわからず言葉が出ない。たぶん、昔の俺なら誰構わず噛み付くような言葉を投げかけていたであろうに、それさえできないのは完全に惚れた弱みってやつだろう。何をどうすれば、ナマエを傷付けず、嫌われないように知り得るのかわからない俺は、エバンスと楽しそうに談笑しているナマエの後を目で追うことしかできなかった。



「ずっと見てるんなら、そばに行けば良いじゃないか」
「行けるんだったら、さっさと行ってるってーの」
「行けない理由でも?君が?そんなこと考えるなんてどうしたのさ」


物珍しいと言いたげな声色でわざとらしく呟くジェームズに視線を送れば、「イケメンが台無しだよ」と茶化される始末。こういうあえて空気を読まねぇところがエバンスに怒られんだろ、って思って口には出すことを止めた。


「…ナマエが最近なんか変なんだよ」
「ナマエが?何かしたのかい?」
「俺が何かした前提なのやめろって」
「じゃあ、何か他に理由でもあるっていうのかい?」
「わかんねぇから悩んでんだろ…」


結局ジェームズに話しても何もわかるはずもなく、俺はテーブルに身を投げて項垂れるだけ。ジェームズから見ても多分わかんねぇんだろう。ナマエの変化は些細なもので、それに気付いてる時点でジェームズからすれば、「ナマエのことよく見てるね」って言われかねないから、あえて深く言ってなかったってのもあるけどよ。そしたら、俺が何かしでかした前提になってるし。そんなことをゴチャゴチャと考える中、ジェームズが「うーん」と隣で唸る声した気がした。




今日も昼飯は同じ時間、大広間で当たり前のように飯を食う。俺の横にはナマエがいて、たまにナマエの届かない料理を俺が取ってやったり。「ありがとう」って嬉しそうに微笑む表情にホッとさせられるが、根本的な不安が解決したわけではない。食べ初めの頃にはなかった感情も食べ終わる目処が立ってくるにつれてやってくるのは本当によくないと思う。


「ごちそうさまでした」
「…ナマエ、もう行くのかよ」
「うん、この後ちょっと、予定があって、ね」


やっぱりだ。食べ終わってゆっくりすればいいのに、ナマエは今日も何か急かされるように立ち上がる。俺が話しかけても、申し訳なさそうにはっきりしない言葉を並べて「また授業でね」と言い残して行ってしまった。くっそ、授業開始まで会うつもりねぇのかよ…って思ったら、俺だけがこんなに悩んでるみたいで、余計にモヤモヤさせられた。



飯も食い終わり、寮に向かおうとしてた。だけど突然の気変わりで、もうちょいブラブラしたくて、本当にたまたま方向転換をしたのがきっかけだったと思う。
たまたま見かけてしまったのだ、ナマエがレイブンクローの男子生徒と楽しそうに話している姿を。それだけではない、紙袋を手渡されて中身を確認し、それを嬉しそうに抱えていた。ナマエの弟がレイブンクローにいるのは知っているが、その弟ではないのは一目瞭然だった。じゃあ、誰なんだ?どんな関係なのか、それさえもわからず俺は距離を置いてただ見ていることしかできなかった。





結局あの出来事からさらに数日が経ったが、あの日のことを俺はナマエに言い出せてはいない。言い出したら、何かが終わりそうで言い出せない、というのが正解だろう。あの日以降、ナマエがヤツと接触してはいなさそうだったけど、それでも不安は何一つ拭えたわけではないのだから。気づけばもうすぐ冬休み、ナマエがどう過ごすかもわからない上に、こんなスッキリしないモヤモヤを抱えてホグワーツに残り、年を越すのか。あぁもう、何も面白くない。このままスニベリーを仕掛けに行こうか、って考えていた矢先のことだった。


「シリウス、ちょっといいかな」


ナマエにより、俺は呼び止められてしまった。







冬の風は冷たい。わかっていたはずなのにやってきたのはホグワーツから離れた人気のない湖のそば。冬のこの時期にわざわざ外に出る人も少なければ、こんな水辺のそばにいる人はもっといなかった。


「ここまで来て何だよ」


こんな寒い時期、わざわざここまで呼び出された意味もわからないシリウスの声はすごく不満げだった。普通の人間だったら、その反応は正解だ。いくら付き合っている彼女の呼び出しでも、理解できなければそういう態度も取りたくなるだろう。


「シリウスにちょっと、ね」


あたしははっきり言えず、ちょっとだけはぐらかしてしまった。そのせいか、シリウスの表情はよろしくない。あはは、このままだと切り出しにくくなりそうだし。あたしは変に引っ張りすぎるのもよくないと判断し、意を決して目的を打ち明けるためにシリウスに近づいた。


「ちょっと屈んでくれるかな」
「、は?」
「おねがい」


ずっと訳がわからないまま、それが不服ですって表情に出ているのが分かり易すぎて、おかしくもあるがそれももう間も無くネタバラシ。なのでその前まで素直に聞き入れて欲しくって、念を押してお願いしてみればシリウスの方が折れて、言われるがままあたしの目線に合わせて屈んでくれた。あたしは、シリウスに見つからないようにとローブに隠していたものを首に巻き付ける。


「…ナマエ、これ」
「遅くなってごめんね」


我ながら肌触りの良い出来だと思う。最後までこれで良かったのかわからないけれど、あたしはこれでよかったと思いたくて、そっと撫でる。


「本当はいいもの買ってあげられたらよかったんだけど、あたしには難しいから手作りになっちゃった」


シリウスはブラック家で育った長男。良いものをいっぱい知っている。だから、手作りなんていかがなものかとも思ったけれど、あたしが年相応に準備できるのを考えた時これ以外浮かばなかった。


「マフラー、編んでみたの。ちゃんと手編みでやったから、時間かかっちゃって」


11月3日にあったシリウスの誕生日は一緒にご飯を食べておしまいだった。大したことを何もしてあげられず過ぎてしまったあたしから付き合って初めてのプレゼント。シリウスはずっと面食らった表情を浮かべて固まったまま、そっとマフラーに触れるだけ。


「これ作るのに時間かかっちゃって、ごめんね。最近全然話もできなくて」
「ナマエ…」
「遅くなっちゃったけど、誕生日おめでとう」
「スッゲ、嬉しい…」


寒さに強いシリウスに手編みのマフラーもどうかなって思った部分もあるけれど、シリウスは嬉しそうにマフラーに顔を埋めてくれた。その姿を見てあたしもほっと安堵させられる。


「ナマエ、そういや、飯食った後とか作ってるのはわかったけど、レイブンクローのヤツはなんだったんだよ」
「レイブン…あぁ、毛糸が足りなくなって実家から送ってもらったんだけど、直接送ってもらうとバレちゃうかなって思って弟の方に送ってもらったの」


シリウスに尋ねられたことに心当たりがなくって、最初はなんのことかと思ってしまった。まさかシリウスに見られたなんて。あの日は弟とタイミングが合わなくて、弟が同級生に託してあたしに手渡してくれたんだっけ。些細な挨拶と受け取って終わりだったから、あまり記憶に残していなかったけど、どうやらそれをタイミングいいのか悪いのかシリウスが目撃していたらしい。


「んだよそれ」
「ごめんね、リリーからも話聞いてたんだけど、いっぱい心配かけちゃったね」
「心臓に悪すぎる」
「もう大丈夫だから」


あたしをギュッと抱きしめて離さないシリウスをヨシヨシとしてあげればさらに腕の力を込められた。


「あたしはここにいるよ」


シリウスが安心してくれるなら、あたしは何度でも伝えるよ。
そう思ってあたしはシリウスの腕の中に顔を埋めた。


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