ハロウィン21 | ナノ





「いーばーにゃーん!」
「…」
「いばにゃん、蓮ちゃんよ!」
「…」



あの、これはどういう光景なんすかねぇ?



「いばにゃんっ、とりっくおあとりーと!」
「…」



えっと、まずオレは茨を探してたんすよね。
茨はすんなりと見つけられましたよ。とある共有スペースでパソコンを広げて、何か作業していたのは予想できてたんで全然問題ないんすけど。




「いばにゃん!ばあ!」
「天城蓮氏!!!!」
「はーい!」




画面から視線を外さず、パソコンをひたすら見つめる茨に対して、蓮ちゃんが画面を遮るように茨とパソコンの間からジャーンと効果音がつきそうな感じで割り込んでいた。

ずっと、見て見ぬふりをしていた茨もさすがにそれはできなかったようで、大声を上げて名前を呼ぶ。茨的には威嚇だったようだけど、蓮ちゃんにはそれが通じておらず、むしろやっと反応してもらえて笑顔で楽しそうだった。



「何やってんすか、2人とも」
「じゅんくん!」
「ジュン…」



思わず声に出してしまったことにより、2人がオレの存在を認識する。蓮ちゃんは楽しそうに、茨はいつも以上に怖い表情で、2人に視線を向けてきた。茨は心なしが疲れてるようにも見えるから、少しだけ同情してしまう。



「蓮ちゃん、アリスの格好っすか?似合ってますよぉ」
「蓮ちゃん、かわいい?」
「可愛いっすよ、めちゃくちゃ蓮ちゃんに似合ってますね」
「えへへ!」



蓮ちゃんはいつも可愛らしい格好してますけど、今日はまた一味違う格好だった。まるでアリスだなと思っていたら、どうやら当たっていたらしく蓮ちゃんは首をこてんと傾げてきたので、純粋に思ったことを伝えてあげれば嬉しそうにはにかんだ。



「いばにゃんは???」
「はいはい、似合ってますよ」
「いばにゃん!蓮ちゃんみて!!!」



オレに褒められて気分を良くした蓮ちゃんはすぐに茨へ意識が切り替わり、蓮ちゃんは茨へ質問攻めをし始める。適当にあしらわれてることも理解している蓮ちゃんは、茨の顔を覗き込みながら構ってもらおうと必死だし、茨の視線を合わせないという強い意思もなかなかだ。




「蓮氏」
「なあに?いばにゃん」
「自分は今仕事をしています」
「いばにゃんがんばれ!」
「ありがとうございます、なので今蓮氏と遊んでる暇はないんです」
「蓮ちゃん、あそばないよっ」



蓮、いばにゃんとおはなししてるのよ!とそれはもう自信満々に答えてて、オレは茨に申し訳ないが噴き出してしまった。茨は茨で深いため息をついていたけど、蓮ちゃんは至って真面目なんだろう。




「ジュン、蓮氏を何処かに連れて行ってくれませんか」
「いばにゃん…」
 



あぁ、茨の言葉を聞いてさすがの蓮ちゃんも切なそうな表情になっちまったっすね。泣きはしないけど、普段ニコニコしてる子だからこそ、そこまでシュンってされちゃうとオレもどうすればいいか困るっすよぉ。





「蓮氏」
「んぅ…」
「これは自分からのお菓子です」




シュンとしてしまった蓮ちゃんに罪悪感を覚えたのか、たまたまの気まぐれかわからないっすけど、蓮ちゃんの目の前には茨が持ってるには似つかないカラフルなグミのお菓子。ハロウィンパッケージになっていて、より色鮮やかだ。突然茨から差し出されて、両手で受け取った蓮ちゃんは不思議そうな表情で食い入るようにそれを見つめている。



「いばにゃん、くれるの?」
「閣下と殿下より、蓮氏のことは聞いてましたからね。閣下と一緒にいた際に買ったものですが」
「いばにゃん!ありがとう!」



蓮ちゃんの方を見向きもしないで語る茨。パソコンを見てあからさまに仕事してるんで自分、みたいな空気出してるっすけどねぇ。蓮ちゃんにはそんなの関係ないっすよ。現に今も茨からお菓子をもらえて嬉しかったようで、茨に抱きついてちゃんとありがとうと伝えているんすから。茨も素直じゃないっすねぇ。























「ところで。ジュンは何故ここに」
「あ、そうそう。ナギ先輩から茨に渡してくれって頼まれたんすよ。おひいさんがナギ先輩も一緒にって言って引き止めちまった代わりに」
「これですか。別に急ぎではなかったので支障はありませんでしたが、預かりますね」
「別にいいっすよ。おひいさんに蓮ちゃん迎えに行くよう言われていたついでなんで」



茨に尋ねられて、本来の目的を思い出す。オレは手に持っていたナギ先輩からの預かり物を手渡せば、茨はすぐに察して受け取ってくれる。オレとしては急ぎでも急ぎでなくても、ただのついでなんであんまり気にしてないんすけどね。



「蓮氏はこれから殿下とお茶会ですか」
「いばにゃん!でぇとだね!」
「デート」
「ははっ、おひいさんが自分と会うことをデートって教え込ませてたんすよ」
「ひよりちゃんとでぇとよ!」
「そうっすね」



しかしまぁデートという名のお茶会のようなもの。こう考えてみると、お茶会にアリスの格好で参加する蓮ちゃん。しかも相手はおひいさんとナギ先輩がいるわけなんで、常識外れのお茶会的な意味ではアリスのお茶会と同じかもしれない。



「いばにゃんもでぇとしよ!」
「いえ、自分は仕事があるので」
「いーばーにゃん!」










これから蓮は、ひよりちゃんとでぇとだね!
そしたらじゅんくんがね、


「蓮ちゃん、なんで茨のその呼び名なんで知ってるんすか?」
「んぅ?ぱぱがいばにゃんっていってた!」
「天城燐音氏…」
「ぱぱがね、いばにゃんってよぶんだよ〜って!」



ぱぱとてれびみてたときいってたの!ひよりちゃんとはおなじおへやでねんねしてたのとか、じゅんくんといっしょにあそんでたとか!



「いばにゃんかわいーね、にゃんにゃん!」





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -