ハロウィン21 | ナノ

「蓮ちゃん」
「んぅ?」
「可愛いポーズしてほしいなぁ」
「ぴーすっ!」
「かっわいぃ〜!らぶーいっ!!!」



目の前には水色のワンピースを着た蓮ちゃん。スマホのカメラを向けて、ポーズをお願いすれば喜んでピースをしてポージングしてくれる蓮ちゃんがすっごい可愛くてシャッターのボタンが止まらない。



こうなったのは今から数十分前のこと。











「ひーろ、とりっくおあとりーと!おかちちょーだいっ」


タッツン先輩とマヨさんが連れて来たのは真っ赤なずきんを被った姿の蓮ちゃんだった。赤ずきんちゃんの格好をしていて、マヨさんたちに手を繋がれながらやってくる。ヒロくんが「蓮がいなくなった!」なんて言うから、最初は誘拐?!?!って思ったけど、どうやらここに来るまでの間に何処かで寄り道してしまったらしく、なかなか姿を見せないという話だった。


なので、おれたちは蓮ちゃんを探しに各自分散していたら、マヨさんより蓮ちゃんを見つけたとの連絡があってホッと胸を撫で下ろす。戻って来た時にはタッツン先輩も合流していたらしく一緒だった。おれたちの心配はつゆ知らず、ヒロくんを見るなり「おかしちょーだい」なんてすごいストレートなお願いに思わず苦笑い。ヒロくんはヒロくんで、そんなことお構いなしらしくって、ウム!なんて言いながら嬉しそうに用意していたお菓子をあげていた。




「蓮は何をしてたのかな」
「蓮はね、マヨちゃんみつけた!」
「あれ、マヨさんを蓮ちゃんが見つけたの?」
「うん!マヨちゃん、かくれんぼしてたのよね」



ヒロくんからお菓子を受け取った蓮ちゃんは、持っていたカゴへと仕舞い込む。ヒロくんは蓮ちゃんの仕草を見ながら、何をしていたのかと尋ねれば、まさかのマヨさんがかくれんぼしていたと言い出した。ビックリして、おれがマヨさんの方を見ればマヨさんは慌てながら「違うんですぅ〜!」と首を振る。



「マヨイ先輩を見つけた蓮は凄いね!」
「うん!蓮すごいの!ひーろ、おかちもーいっこちょーだい」
「蓮のカゴにはもういっぱいお菓子入ってるよ?」
「ままにあげるの!あともーいっこ!」
「ママにもあげるなら仕方ないね、パパのは?」
「ぱぱの…ぱぱはいらない」



蓮ちゃん、燐音先輩に容赦なさすぎてちょっと不憫に思えた。ヒロくんにお菓子を強請ったかと思えば、ママの分って言ってて優希さんのまでもらう蓮ちゃん優しいなァ〜と思ってたのに。


それなのにすぐこのあと、「ひーろ!にいにもあげるからもーいっこよ!」なんて言い出してて笑うしかなかった。




お菓子をもらえて満足した蓮ちゃんに、俺たちはそろそろ本題へと移らなければならない。



「蓮、お着替えしよう」
「…んぅ?」
「その赤ずきん脱ごうか」
「やぁっ!蓮のっ!」



ヒロくんが蓮ちゃんに赤ずきんを取ることを告げれば、蓮ちゃんは赤ずきんを両手で掴みながら、イヤイヤと首を振る。



「蓮!」
「ひーろきちゃ、めっ!!!」



チョロチョロと逃げ回り始めて、ヒロくんと追いかけっこ状態。しかも、おれたちの周りを逃げ回るから目で追いかけてたら目が回りそうだ。



「どうやら、赤ずきんがお気に入りのようですね」
「蓮さん、赤色が好きみたいですぅ」



タッツン先輩とマヨさんの発言を耳にしながら、蓮ちゃんが嫌がるなら…と思う部分もあるが、おれは手にしているモノに視線を送る。




「ひーろ!やぁっ!」
「蓮!」
「蓮ちゃん、おいで」
「あいちゃんっ」



走り回ることをやめないヒロくんと蓮ちゃん。おれはしゃがんで蓮ちゃんを呼べば、蓮ちゃんはおれに気づいて駆け寄ってそのまま抱きついて来た。なので、よしよしと頭を撫でてあげれば、んぅ…ともぞもぞしている。



「藍良っ」



蓮ちゃんから、ヒロくんが視界に入らないから見えてないわけで、ヒロくんに名前を呼ばれるけど、おれはシーって小声で伝える。






「蓮ちゃん、ヒロくん来ないから大丈夫だよ」
「んぅ…」



俺の言葉を聞いて、蓮ちゃんはもぞもぞと顔を少しだけずらしてヒロくんの位置を確認した。ヒロくんは少し離れた位置で、マヨさんやタッツン先輩と一緒にいるわけだけど、落ち着きのない様子で今にもこちらに来たい気持ちを堪えて座っているのが見える。その姿を確認した蓮ちゃんも少しだけ安心したのか、ずっと密着していた体を起こして離れた隙間が少しだけ寂しく感じる。



「蓮ちゃん、それがお気に入りなんだね」
「うん。きーくんがつくってくれたの」
「きーくんって、鬼龍先輩かな?すっごい、かわいいねっ」
「蓮とおなじあかいのよっ」
「ふふっ、そうだね。真っ赤で綺麗な蓮ちゃんの髪とおんなじだね」



蓮ちゃんに赤ずきんのことを尋ねてみれば、お気に入りのものを褒めてもらえて機嫌は一気に回復。嬉しそうに赤ずきんの経緯を話してくれた。



「そっか、鬼龍先輩に作ってもらえたからお気に入りなんだね」
「きーくんが蓮につくってくれたの!」
「じゃあ、これも鬼龍先輩がせっかく作ってくれたお洋服だからおれ見てみたいなァ〜、蓮ちゃんが着てるところ」



そう言って、おれが手にしていた水色のワンピースを蓮ちゃんの前に出してみた。おれが手にしてるのは、蓮さんから預かったアリスモチーフのワンピースだ。別個で白いエプロンワンピースもちゃんとある。聞くところ、これも鬼龍先輩が作ったらしい。フリルがあしらわれていて、とても可愛らしいシルエットになっている。



「赤ずきんちゃんも可愛いよ。けど、このワンピースも可愛いと思うんだ!だって、水色と白だから、蓮ちゃんの素敵な赤い髪の毛もはっきり見えてもっと可愛くなれると思うんだよね」



そこから蓮ちゃんの切り替えはとても早かった。おれの話に耳を傾けてくれて、おれのプレゼンを終えた頃には、「あいちゃん、蓮おきがえする!」って言ってくれたんだよねぇ。


「はい、ばんざーい!」って言えば、大人しくバンザイをしてくれて、おれたちで蓮ちゃんのお着替えをお手伝いする。ほぼほぼ、おれとマヨさんで着替えさせて完成!


鏡で着替えた姿を見てもらったら、蓮ちゃんもキラキラした瞳で見つめていたから、お気に召したようだった。





「ひーろ、みして」
「ウム!どうかな」
「ままにみせる!」



さっきまでヒロくんから逃げていたのも嘘みたいに、おれと同じように写真を撮っていたヒロくんのところへ駆け寄り、スマホの中を覗き込む。ヒロくんに撮ってもらった写真を見て満足したようで嬉しそうに笑っていて、ホッとする。




「じゃあ、ママのところに行くかい?」
「ううん!」





うん、ホッとした気持ちを返してほしい。
ビックリした、ヒロくんに優希さんのところに行くか尋ねられて、思いっきり否定したんだけどぉ?!?!




「ひーろ、蓮はこれからでぇとだね!」
「そうなのかい?」
「うん!だから、でぇといってくるね!」



ばいばい!なんて大きく手を振って行ってしまった。なんなら、ヒロくんも呑気に手を振って見送ってるんだけど、おれはそれをただ見てることしかできなかった。おれが動けるようになった時は蓮ちゃんがいなくなって、ヒロくんに「藍良?」って呼ばれた時である。




「ヒロくん?!蓮ちゃん、今デートって言った?!?!」
「ウム!言ってたね!」
「えっ、相手は?!大丈夫なの?!!!」
「大丈夫だよ、藍良もよく知ってる人だからね」


その一言におれは今日何度目かわからない、エッという声を漏らした。








蓮はね、これからでぇとだね!

あかずきんちゃんかわいくて、みてみてしたかったなぁ。

でもねでもね、あいちゃんがかわいいっていってたから、きっとかわいいっていってくれるよねっ!





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