ハロウィン21 | ナノ

「んぅ!」
「いや、ちょっと待てッ」
「んやぁっ」


アドニスからお菓子をもらって嬉しそうにしていた蓮がまた勝手に走り出しそうになったもんだから俺様は思わず、ずきんの上から頭を掴んで止めてしまった。そしたら、蓮のやつ、びっくりして声上げて、やっべ!ってなり、思わず手を離す。



「大神、頭を掴むのは良くない」
「わりぃ、」
「んぅ…、わんわん、蓮のあたまぎゅっした…」



ずきんごと両手で頭を押さえて、ぶぅ…とした表情で俺様を見てくる蓮。



「悪かった…。けど、蓮も勝手にウロウロすんじゃねぇよ、あぶねぇだろ」
「蓮、あぶなくないもん」
「そうだよ、蓮ちゃんの頭を引っ掴むなんてダメだよ、わんわん」
「ッわんわんって、テメェが言うな!!」




蓮の頭をよしよしと撫でるソイツ、羽風先輩に俺様は言葉を投げつけた。気づけば蓮の横にしゃがんでいて、「蓮ちゃん、大丈夫?」などと声をかけている。




「かおくん、わんわんが蓮ちゃんのあたまぎゅってしたの」
「うん、俺も見てたよ〜?わんちゃんが蓮ちゃんの頭ぎゅってしてたね」
「蓮ちゃんね、かおくんみつけたからね、かおくんにもみてほしかったの」
「そっかぁ。蓮ちゃんは俺に何を見せたかったのかな?」
「…んーとね、んぅ?」




羽風先輩が蓮に合わせて問い掛ければ、どうやらさっきのは羽風先輩を見つけて駆け出そうとしていたらしい。向かおうとしてたのが同じメンバーでホッとするも、ここは事務所であり蓮は言わば部外者、しかも子供だ。何か起きてからは困るわけで、俺様の行動は致し方ないと思ってもらいたい。

頭を掴んだのはまずかったけどよ…。



「ははっ、忘れちゃったのかな」
「蓮は多分、羽風先輩に赤ずきんの格好を見せたかったんだろう」



今の一連の流れで蓮は本来したかったことが頭からぶっ飛んだらしい。んぅ?って首を傾げている。だから、アドニスが蓮の今までの行動からしての憶測でフォローを入れてやれば、蓮は「そうっ、そうよあどちゃん!」と手をパチパチさせながら同意した。


「かおくん!蓮ちゃん、あかずきんちゃんよ!」


そう言いながら、羽風先輩の前でくるりと回転する蓮。なんなら、羽風先輩の呼び方移って自分のことちゃん付けしてんじゃねぇか。



「可愛いね、蓮ちゃん。すっごい似合ってるよ」
「本当じゃのう。こんなに可愛い赤ずきんはオオカミに食べられてしまうぞ」
「んぅ?」



気づけばいつのまにか朔間先輩も来ていて、2人して蓮の味方の如く、しゃがんで話しかけている。ここはなんだよ、迷子センターか託児場か。



「けーくん、あかずきんちゃんはおばあちゃんのところいくっていってたっ」
「その赤ずきんちゃんは、おばあちゃんのところに行く途中オオカミに食べられてしまうんじゃぞ」
「蓮ちゃん、可愛い赤ずきんちゃんだから食べられたら大変だよ〜?そこにいるわんちゃんとか」



どうやら蓮は赤ずきんの話をきちんと理解していなかったらしい。朔間先輩は「怖いのぅ」と怯える真似をしながらも口元は笑ってやがるし、羽風先輩もニヤニヤしながら俺を指差してくる。んなこと言いやがったら、蓮がビビんだろうが…!!!



「んぅ…」



案の定、蓮はさっきまでの楽しそうな表情から一変してなんとも言えない表情で俺様を見る。明らかに雲行きが怪しくなってきたじゃねぇか…。



「かおくん」
「何かな?」
「わんわんは蓮ちゃんのこと食べないよ、わんわんだもん」










かおくんとれいくんがね、あかずきんちゃんは、おおかみにたべられちゃうっていってたの。
じゃあ、蓮もたべられちゃうの…?
でもわんわんとれおんはおともだちだから、蓮のことたべないもん。


そうしたらね、かおくんとれいくんとあどちゃんがわらったの、なんでかなぁ、?






「くくくっ…わんこや、蓮にわんこと思われてるぞい」
「うるっせぇ!!!」
「はー笑った笑った。そうだね、わんわんだから蓮ちゃんのこと食べれないね」



ツボに入ったまま収まらない朔間先輩、そして笑い過ぎて涙が出たらしい羽風先輩は目尻を拭いながら、蓮の頭をポンポンと撫でる。発言者である蓮はキョトンとした様子だから、完全にわかってねぇ…。



「わんわん、蓮のことたべないもんね」
「お、おう…」



むしろ、肯定してやったらにぱって、すっげぇ笑顔になったしよ、ああもう!



「あ、でもね」



これでこの話はおしまいかと思いきや、蓮は何かを思い出したらしい。えーっと、なんて言いながら思い出した言葉を絞り出そうとする、なんなら羽風先輩の後ろにコソコソし始めて次はなんだ…。



「りっちゃんがね、れいくんはあぶないからおはなししちゃめっ!っていってた…」



結局あれから、次は朔間先輩が距離を置かれそうになったけど、ハロウィン仕様のお菓子をあげれば蓮はケロッと反応を切り替えた。リッチ〜のやつが何か吹き込んだいたらしいけど、それ信じる蓮も蓮だな。




「これはけーくんからでね、これはあどちゃん!」
「いっぱいお菓子もらえて良かったね〜」
「うん!いっぱいよ!ねっ、わんわん!」



まあ、楽しそうにしてるから良いか。

自然と俺様の頬も緩んだのを誤魔化すようにまん丸のその頭を撫でてやれば、蓮は嬉しそうに笑った。





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