ハロウィン21 | ナノ

「きーくん!」
「よう、蓮の嬢ちゃん。早速着てくれたんだな」
「うん!!!」



蓮がやってきたのはきーくんのところ!

きーくんが蓮にきづいてくれたの!



「赤ずきんにしたのか」
「うん、蓮とおんなじでね、まっかなおいろ!」
「ははっ、他のはちょっと地味だったかな」
「じみ?」
「あー、目立たない、とか、はっきりしない、とかわかるか?」
「…んぅ…」
「気にすんな、大丈夫だ」



きーくんはすっごくやさしいの。

いま、蓮がきているおようふくも、きーくんがつくってくれたの。ままといっしょにあったときに、いろいろしてくれたんだよ!


きーくんのいうことがわからなくても、きーくんやさしいから。ぽんぽんってきーくんのおっきなおててで、あたまをなでてもらって、ほっとする。











リズリンの事務所に蓮の嬢ちゃんがやってきた。先日、俺が作ったハロウィンの衣装の一つ、赤ずきんの格好をして。

蓮の嬢ちゃんは嬉しそうに真っ赤なずきんを両手で掴んでニコニコしている。せっかくのキレイな赤い髪が見えなくなっちまってるのは勿体ない気もするけど、本人が喜んでるならいいか。



「なんだ、天城のところの娘か」
「蓮殿と鬼龍殿とは珍しい組み合わせ」
「けーくん、そーちゃんこんにちは!」
「こんにちは、蓮殿」
「挨拶ができて偉いな」



蓮の嬢ちゃんと話していたら、蓮巳の旦那と神崎がやってきた。おう、そういえばもう少ししたら俺たちの打ち合わせもあるんだったな。



「蓮殿、それは」
「あかずきんちゃんだよっ、そーちゃん!」
「鬼龍が作ったのか」
「あぁ、蓮の嬢ちゃんに何着か作ってみたんだ」
「きーくんがちくちくつくったんだよっ」



蓮の嬢ちゃんは相当気に入ったらしく、さっきから神崎や旦那との話にちょくちょく入ってきては興奮気味に説明してくれる。俺たちがでけェせいで完全に見下ろされている嬢ちゃんがぴょこぴょことする姿がまた可愛らしい。


「そうか、それはよかったな」
「蓮、かわいい?」
「あぁ、とても可愛らしい」
「蓮殿らしく、似合っておられる!」


あの旦那でさえ、蓮の嬢ちゃんに対しては珍しく優しく笑うもんだ。蓮の嬢ちゃんは癒しの効果があるからだろうな。



「きーくん!蓮かわいいって!」
「ははっ、良かったな」
「うん!」


えへへと笑う嬢ちゃん。妹もこんな時があったな…なんて懐かしくなっちまった。おかげで俺の表情筋も自然と緩みっぱなしだ。



「しかし、赤ずきんならそうだな」



気づけば神崎のやつと楽しそうにわちゃわちゃし始める嬢ちゃんを横目に蓮巳の旦那が何か考えた様子でこの場を離席する。事務所の奥に行ってしまった蓮巳の旦那は何かしら仕事でも思い出したんだろう、と思っていればすぐに何かを持って戻ってくる。





「けーくん、どーしたの?」
「赤ずきん…という話はどんなお話か知っているか?」
「んーん、蓮しらない…」


嬢ちゃんの前にしゃがんだ旦那が問いかける。どうやら、嬢ちゃんは赤ずきんの物語を知らないらしい。と、いうことは本当にただ色だけでこの衣装を選んだのだろう。知らないことを問いかけられて、少しだけ不安そうにする嬢ちゃん。


「そうか。赤ずきんは食べものをおばあさんのところに届けに行く女の子なんだ。そのためにはカゴが必要になる」
「んぅ?」




「だから、これを持って行くといい」



そう言って旦那が取り出したのは小さなカゴバックだった。ちょうど嬢ちゃんが持つのに最適な小さなサイズのものである。
これには神崎も驚いた様子で「蓮巳殿、このようなものを持っていたとは!」と声を漏らす。



「たまたま、事務所を片付けていた際に出てきたんだ。おそらく何かの小物入れだったんだろう」
「蓮の嬢ちゃんにピッタリじゃねェか」
「ついでに、ハロウィンならこのお菓子も持って行くと良い」
「わぁ!ありがとうっ、けーくん!」



そう言ってカゴの中にカラフルな色のグミが入った袋をそっと入れてあげていた。嬢ちゃんは「かわいい!」と言いながら喜んでいるし、なんだかんだ蓮巳の旦那も嬉しそうでなによりだ。




「蓮殿、この後はどのように過ごされるのか」



そういえば、嬢ちゃんは一人でここにきた。俺たちはこの後打ち合わせがあるから、嬢ちゃんを連れては行けない。こんな小さな子を一人にするわけにも行かず、どうしたものかと考えていれば、嬢ちゃんが「あ!!!」と声を上げて走り出す。


何を見つけたかと思えば、確かにちょうどいい人物だ、と思える奴のところに行ったので大丈夫だろう。




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