HiMERUたちは、それぞれ分担して準備をしていたはずなんですが。
「…何があったんですか」
「んぅううううう」
「蓮、ごめんな〜?」
「ぱぱ、しらないっ!」
事務所に戻ってきた椎名が小さな女の子を抱えていて、その子に対して天城が必死に謝っている。声からして蓮ちゃんのようですね。椎名は既に疲れた表情で苦笑いを浮かべていた。
「蓮ちゃんが泣いてはったんよ。ニキはんが泣かしたちゅう話やけ。燐音はんが出てきはったら、蓮ちゃん次はニキはんいじめられる思っち」
「なるほど、いつものパターンですね」
天城がちょっかい出して蓮ちゃんが怒るのはお決まりのことなのです。桜河は持ってくると言っていた段ボールをテーブルに置きながら、今までの流れを教えてくれました。全く、懲りないですね。
「蓮ちゃん」
「んぅ…、めるめる」
「はい、HiMERUですよ」
それからしばらくしてやってきた優希さんは、蓮ちゃんを見るなり驚きから呆れた表情とコロコロ変えていた。
「もー、せっかくナルちゃん達がやってくれたのに、蓮ボロボロ…」
「んぅ〜」
「はい、これでよしっ。蓮かわいくなったね」
涙で崩れた化粧をやり直し、着ていたドレスワンピースを整えてあげて最終チェック。鳴上さんたちがやってあげたという話を伺い、HiMERUも納得です。優希さんに鏡を見せてもらった蓮ちゃんも戻った姿を見て、さっきまでのグズリも嘘のように元通り。ニコニコ笑って満足そうに笑っています。
「蓮ちゃん、とってもお似合いですね」
「めるめる!」
「ふふっ、HiMERUです。蓮ちゃん、せっかく可愛いお姫様なので、お姫様と呼びましょうか」
「おひめさま!」
「蓮お姫様、ハロウィンの時に言う言葉、知ってますか?」
蓮ちゃんをお姫様と呼べば、瞳がキラキラと輝いたように見えます。蓮ちゃんはHiMERUの言葉を聞いて、「蓮ね!蓮ね!しってるよっ!」と興奮気味に両手をぶんぶんと上下に振っている。
「とりっくおあとりーとっていうのよっ!」
「はい、そうですね。さすが蓮お姫様です」
「蓮ちゃんは物知りなんやな」
桜河も蓮ちゃんの言葉を感心したように乗っかれば、蓮ちゃんは嬉しそうに胸を張る。
「なははっ!蓮ちゃん、さっきはごめんなさいっす!お菓子ないって言ったんすけど、違うんすよ〜」
「にーい?」
「蓮ちゃんと一緒にハロウィンパーティーしたくって、みんなで準備してたんすよ」
何処まで蓮ちゃんが理解できるかわからないけど、椎名は謝罪と説明をし始めた。
そう、HiMERUたちはハロウィンパーティーの準備をしていたのです。優希さんより蓮ちゃんにハロウィンの衣装をもらったことを聞き、きっと蓮ちゃんのことだからみんなにも見てもらいに行くだろうというお話を聞きました。なので、どうせならと言うことで、HiMERUたちは蓮ちゃんが楽しめるようにハロウィンパーティーをすることにしたのです。
椎名は料理、HiMERUたちでセッティング。
結局、途中で蓮ちゃんに椎名が見つかってしまって、ここまで連れてきてしまったので準備は中途半端だったんですが、優希さんが蓮ちゃんのお化粧直しをしている間に終えられました。
「蓮、」
「ぱぱ」
さっきまで天城に対してプンプンしていたのも忘れて、普通に返事をしている辺り、年相応の子どもらしいなと思うのです。天城は蓮ちゃんを抱えて今まで見えなかったテーブルたちを見渡して「わぁ!」と声を漏らす。
「おばけ!いっぱい!」
テーブルに並べられたおばけたち。
それはケチャップで着色されたカボチャのお化けのようにあしらわれたおにぎり、マッシュポテトで作った白いお化け、ウインナーにパンを巻きつかせて作ったミイラパンだったり。鮮やかな料理達が並んでいた。
他にもパスタやチキンもあって、ハロウィンに乗じたホームパーティである。
「蓮、これがパパ達からのトリックオアトリートのお返しだ」
「んぅ!すごーいっ!すごいねっ!」
いっぱいにいのごはんたべたよ!
にいとこはくちゃんとめるめるとばいばいしたの。
ぱぱとままとおうちにきたのよ。そしたらね、ままが蓮にいったのよ!
「蓮、トリックオアトリート」
りっちゃんが蓮、おかしもってなくっていたずらしたの。おかし持ってないからまたいたずらされちゃう…!
そしたらね、ままがぎゅってしてくれたのよ!
「ふふっ、お菓子持ってない蓮にはいたずらでママがぎゅーってしちゃう〜!」
「んぅ!蓮もままぎゅーっする!」
「あ、パパもいれてくれよなァっ!」
ぱぱもぎゅーってしてきて、蓮つぶれちゃうよ〜!でもぱぱのぎゅーっも、ままのぎゅーっもすきっ!
えへへ、みーんなといっぱいあそべてたのしかった!
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