「蓮はなんでそんな格好してるの〜?」
「まほーつかい蓮よ!りっちゃん!」
「うん、魔法使いだねぇ〜」
「えいえいっ!」
「蓮は何の魔法してるのかな〜」
「かさくんお菓子買いすぎぃ〜!レオくんもこんなにお菓子ばっかり買って蓮に一気にあげる気ぃ?!」
「これは蓮ちゃんとご一緒に食べようと…!」
「蓮が欲しいって言ったんだから良いだろ〜」
「こんなに一気にあげて虫歯になったらどうするわけぇ?!」
あらあら、いろいろ大変なことになってるわね。みんながいるって聞いたから来てみたけど、これはどういう事かしら。
片方は蓮ちゃんと凛月ちゃんが一緒にお話ししてるわ。蓮ちゃんは魔法使いの格好をしていて、魔法の杖も持っているの。その杖を思いっきり上下に振って、まるで魔法使いね、ふふっ、可愛らしいわ。凛月ちゃんも優しい目をして微笑ましそうに見ているもの。
それで、
はぁ…、こっちは泉ちゃんがすっごい怒ってるわね。レオくんも司ちゃんは正座させられて、その傍にはたくさんのお菓子が山積みになってるから、原因はこれのようだけど。
「蓮ちゃん」
「なーちゃん!みてみて!蓮、まほーつかいよ!」
「ふふっ、可愛らしい魔法使いさんね」
泉ちゃんのお怒りに触れてとばっちりを受けるのも嫌だもの。それだったら可愛らしいものに触れていたいわ。なので、アタシは迷わず蓮ちゃんに声をかければ、蓮ちゃんは屈託のない笑顔でアタシを出迎えてくれる。
「蓮ちゃんはどんな魔法が使えるのかしら?」
「んーとね、んーとね、とりっくおあとりーとっていったら、おかしもらえるまほーのことばしってるよっ!」
「蓮、それ魔法の言葉なの?」
「そうよ、りっちゃん!」
どうやら誰からか聞いたらしいトリック・オア・トリートという言葉。この言葉を魔法の言葉とでも教えられたのかしら。蓮ちゃんは嬉しそうに教えてくれる、けどその手に持ってる杖が関係なくて、なんだかおかしいわ。凛月ちゃんも蓮ちゃんの話を聞いて尋ねてみれば、蓮ちゃんは自信満々に力強く言葉を返す。
「こーんなにおかしもらえたもん!」
「あらあら、たくさんのお菓子じゃない!これ全部魔法の言葉でもらったの?すごいわね」
「まほーつかい蓮ちゃんだもんね!」
凛月ちゃんの言葉に張り合うように蓮ちゃんが出したのはカゴいっぱいに入ったお菓子。色鮮やかで多種多様なお菓子がそこには入っていた。レオくんと司ちゃんの横にもお菓子があるけど、たしかにそれらと別に蓮ちゃんがこれだけ貰ってきたのであれば、泉ちゃんが怒りたくなるのもわからないでもないわね…。
「そっかぁ、蓮」
「なあに、りっちゃん」
「魔法の言葉なんだよね」
凛月ちゃんは、ふふんと笑って蓮ちゃんの名を呼ぶ。蓮ちゃんは名前を呼ばれて、くるりと凛月ちゃんの方を向いて首を傾げる。アタシの気のせいじゃなければ、凛月ちゃんがなんか企んでるように見えるのよね。
「じゃあさ、蓮」
「うん?」
「トリック・オア・トリート♪」
ほらやっぱり。凛月ちゃんはニッコリと笑みを浮かべて蓮ちゃんに手のひらを差し出しながら呟いた。蓮ちゃんと言えば、凛月ちゃんの言葉を聞いて何を思ったのか動かない。
「…なーちゃん」
「何かしら?」
「りっちゃんがおかし、ほしーって」
あら、今のってアタシが言われたのかしら?
蓮ちゃんは当たり前のようにアタシの方を見て、凛月ちゃんがほしいって教えてくれたのよね。
「違うでしょ、蓮」
「んーぅ?」
「蓮に言ってるんだよね、俺」
「…蓮のおかしよっ」
「うん、それは蓮が貰ったお菓子だよね〜。蓮が言われた場合のお菓子はないの?」
凛月ちゃん、わかってて言ってるわね。
だけどそんなことを知らない蓮ちゃんは自分の持っていたお菓子を大切そうに抱きしめる。
「…蓮、」
「トリック・オア・トリートって言われたらお菓子もらえるんだよね〜?蓮も言われたらくれるんでしょ?」
「んぅ…」
だけど、凛月ちゃんが改めて直接的に言葉にしたことによって、蓮ちゃんはすごく不安そうな目の色を浮かべ始める。
「ねえ、蓮知ってる?この言葉を言われた人はね、お菓子あげないといたずらされちゃうんだよ〜?」
「いたずら…」
「蓮、お菓子持ってないなら、いたずらされないといけないね〜」
「んぅううう」
ごめんなさいね、蓮ちゃん。
凛月ちゃんの言葉の通りだから、アタシにはどうしようもできなくって。
蓮ね、おかしもってないの。
みんなからもらったおかしはもってるよっ。
でもね、蓮があげられるおかしがなかったの…。
だから蓮ね、いたずらされちゃうんだって…、どうしよ…。
凛月ちゃんの一言により、アタシたちのやりとりに気づいた泉ちゃんたちもやってきて、Knightsみんなでの Knights流のいたずらを開始したのよ。
蓮はアタシたちにされるがまま!
いたずらが完了した頃には、泉ちゃんはやり切った笑みを浮かべていて、さっきまでガミガミ怒ってたのが嘘みたいだわ。
「こんなもんでしょ」
「ふふっ、可愛いわぁ!」
「さすがセッちゃんとナッちゃん」
凛月ちゃんも感心した様子で蓮ちゃんを見つめる。ちなみにあたしたちの後ろからレオくんと司ちゃんも見てるのだけれど、2人を見たら言葉を失って感動してたわ。
「なーちゃん」
「何かしら」
「…蓮?」
「ふふっ、蓮ちゃんよ」
まあ、言葉を失ってたのは蓮ちゃんも同じね。鏡を目の前にして、ポカンとした様子で鏡に映った自分を指差す蓮ちゃんは状況が飲み込んでいない様子だった。だから、何も間違ってない、蓮ちゃん自身のと伝えれば、蓮ちゃんは再び鏡に視線を戻す。
「蓮、きらきらしてる」
「だって蓮、トリック・オア・トリートって言ってもお菓子くれなかったからね〜」
「りっちゃ」
「だから、俺たちのやってほしい姿にしちゃった」
と凛月ちゃんはいたずらな笑みで呟いた。
「蓮、まるでお姫様だな!」
「何言ってるんですか!レオさん!いつだって蓮ちゃんはとてもCuteなお姫様です!!!」
「蓮は俺たちのお姫様だからねぇ」
レオくん、司ちゃん、泉ちゃんがそれぞれお姫様と言った。そう、蓮ちゃんはアタシたちの手によって魔法使いの姿からお姫様の格好に変身させちゃったのよね。
最初こそ、突然何をされるのか不安そうだった蓮ちゃんだけど、アタシたちが蓮ちゃんに怖がらせるようないたずらをするはずがないじゃない?
せっかくの可愛い蓮ちゃんだもの、魔法使いも可愛らしいけど、どうせならもっと可愛くしてあげたくって、アタシたちKnightsのお姫様にしちゃったわ。
「蓮、おひめさまになっちゃった!!!」
ふふっ、蓮ちゃんもすっごく嬉しそう。
可愛い可愛いあたしたちのPrincess。
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