ハロウィン21 | ナノ


はぁ…自分は何故ここにいることになってるんでしょうか。


作業をしていたら、やってきたのは天城蓮氏。知る人ぞ知る天城燐音氏の愛娘だ。蓮氏は何故かアリスの衣装を見に纏い、何故か自分の周りをうろちょろとしていた。しかも自分をいばにゃんと呼んでいるのは幻聴ではないだろう。何度か顔合わせしたことがあるとはいえ、この懐き様はおかしすぎる。大方、燐音氏が何か吹き込んだと予想しましたが、その通りだった。ジュンが来てくれて、解放されると思ってたのに。




「蓮は何がいいかな」
「蓮はいちごのけーき!」
「これはイチゴのケーキじゃなくて、ミックスベリーのパンケーキだね!」
「んぅ?いちご…」
「イチゴも乗ってるから、頼んでみよう。きっと美味しいよ」



連れて来られたのはカフェシナモン。
閣下と殿下の間にちょこんと座って3人で仲良くメニューを眺めている蓮氏。地に足がつかないため、ぶらぶらと足をさせているのか、体が揺れていた。両手で彼女にしては大きすぎるメニューをしっかり持って、大きな声で自分の食べたいものを述べるが、どうやらそれは違ったメニューだったらしい。殿下が訂正を入れるが、蓮氏は理解しきれず何とも言えない声を漏らす。それをフォローするために閣下が声をかけたことにより、蓮氏は嬉しそうに「うん!」と明るく返事をした。





「はい、蓮ちゃんのミックスベリーのパンケーキが来たね!」
「わあっ!」
「よかったね、蓮」
「おおきいねっ!」
「このままじゃ、蓮ちゃん食べにくいからね。ジュンくんに食べやすいようにしてもらおうね!」




間も無くしてやってきた品物たち。自分はコーヒーだけで十分なので、食べ物は頼まなかったんですが向かいのテーブルの上は色鮮やか。殿下の頼んだキッシュやティーカップ。蓮氏の頼んだパンケーキは彼女に似合わないほどの大きさだった。明らかにナイフで切らなければ食べにくいそれをどのようにして食べるのか、と思っていれば殿下は当たり前のように呟き、蓮氏も「はーい!」なんて呑気なものだ。




「ジュン、そんなことまでしてるんですか…」
「仕方ないっすよぉ、おひいさんがするわけないし、ナギ先輩に頼むのもおかしいし」
「じゅんくん、ありがとうっ!」
「はいっすよぉ〜、溢さないように気をつけてくださいね」



自分が知らないだけで、割とこのやり取りは当たり前なのかもしれない。誰一人、この流れを突っ込もうとしないし、もはや当たり前の如く時が流れていく。まあ、このメンバーで誰かが何かを言い出す方がないでしょうが。


フォークにジュンが切り分けたパンケーキを思いっきりぶっ刺して、そのまま口に頬張る蓮氏。格好はアリスという奇抜さ。しかし、もぐもぐさせながら、緩む表情はとても年相応。本当に不思議の国アリスが普通じゃないお茶会をしているようだ。



「なぎくん」
「何かな」
「なぎくんのそれはなあに?」
「これはタルトだよ」
「たると?」
「そう、ハロウィン限定の紫芋のタルトだね」
「おばけだ!」




子供というのは好奇心の塊だ。自分のデザートを食べながら、目線の先には閣下のデザートを捉えていて、ジッとそれを見つめる。閣下は自分が頼んでいたデザートを蓮氏の見やすい位置に移動して見せてあげれば、それをお化けと言った。どうやら、タルトに刺さっている紙はお化けだったらしい、何ともよくあるものだった。



「蓮はお化けは怖いかな」
「蓮、こわくないよっ!」
「蓮ちゃんより燐音先輩の方が怖がりそうだね」
「ぱぱ、おばけこわいの?」
「今度聞いてみるといいかもね」


















「さてと、デザートも食べたね。蓮ちゃん」
「いっぱいたべたね、ひよりちゃん!」
「じゃあ、お土産を見ようね!」
「わーいっ!」



このお茶会に参加してわかったこと。

それは殿下と閣下、蓮氏の波長がとても合っているということ。

事あることに対して、燐音氏の名前が出てきて何かしらの話題にしていること。

だいたい、良い話ではないんですけどね。ほとんどがしょうもないネタです。

元々、殿下と閣下の仲は分かっていたこと。しかし、ここに蓮氏が加わってどうなることかと思っていたのだが。



「蓮ちゃん、可愛らしいアリスの衣装だからいっぱい写真を撮ろうね!ジュンくんが!」
「ひよりちゃんもいっしょにとろうね!」
「当たり前だね!それを燐音先輩に見せようね!」



…周りの人間を見事に自覚なく巻き込んで楽しんでいた。ジュンはもはやこれが当たり前になっているようだし、閣下も楽しそうに笑っているので、まあ良しとしましょうか。



「ままにぷれぜんと、どれがいいかな」
「ママは紅茶とか好きかな」
「美味しい紅茶はいいね!きっと喜んでもらえるよ」
「こーちゃにするっ!」
「蓮ちゃん、パパにも選んであげたらどうっすかね」
「ぱぱ、んぅ」
「燐音くんっぽいお土産、ここにはないよ」
「けど、燐音先輩、蓮ちゃんからのお土産ないと結構凹んでるみたいなんすよね」
「燐音先輩、蓮ちゃん絡みで一喜一憂する人だからね」



蓮氏なかなかに燐音氏には塩対応なんですね。と、いうよりは燐音氏が完全に溺愛してるのでしょう。まあ、その事は割と周知されてる事なので今更驚きはしません。蓮氏の母親っ子ぶりも当たり前の認識なようで、閣下も一緒になってお土産選びをしてましたしね。ジュンは燐音氏の立場になって同情してましたが。




「お土産も買えたしね!」
「楽しかったね!」
「最後にこれは僕から蓮ちゃんに質問だね」



そろそろお開きという空気にもなった頃。

殿下は蓮氏の目線に合わせて問いかける。蓮氏は突然のことに「んぅ?」と首を傾げて殿下を見つめ返す。




「蓮ちゃん、ハロウィンと言えばなんて言うかな?」
「とりっくおあとりーと!」
「ふふん!よく言えたね!これは僕からの甘ーいプレゼントだね!」
「ひよりちゃんかわいい!!」
「ふふん!僕が選んだから当たり前だね!」
「これは僕から」
「なぎくんありがとう!」






ひよりちゃんにとりっくおあとりーとっていったら、かわいいにゃんにゃんのおかしもらったよ!
そしたら、なぎくんもかわいいわんわんのおかしくれたの〜!わんわんもにゃんにゃんもかわいい!


とりっくおあとりーとっていったら、みーんなおかしくれるのすごーい!




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